テラーノベル
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「依頼よ。私の兄の遺体を見つけて。」
髪のながい女が言った。
黒髪と真っ黒な瞳。シンプルな白いシャツに黒色のロングスカート。
そんな女の前には一人の男。
ここのカフェは俺の行きつけだ。
鼻を掠めるコーヒーの香りが強張る肩を優しく溶かす。
探偵業を営んでおり、目の前に座っている女は今回の依頼主だ。
どうやら兄の遺体を見つけてほしいそうだ。
「へぇ。遺体が歩きだしてどっかに行ったのではないか?それとも殺人事件だったり?」
「――分からないわ。」
「―へぇ。」
「殺害はされてないと思うの。だってご丁寧に遺書だってあったから。」
「ならなんだって言うんだい?」
「――分からないのよ。」
「まぁ。依頼はそれじゃないんだろう?遺体を見つけろだったか。」
「えぇ。―私の兄は自由な人だったから、遠くで死なれると分からないのよね。」
「――死んでるかなんて分からないのに。」
「――行方不明。でも遺書だってあった。だったらもう死んでるじゃない。」
「なら自殺かい?」
「――かもね。まぁそんなのどうでも良いの。とにかく遺体を見つけてほしい。」
「――分かった。その依頼受けるよ。」
「ありがとう」
そう言った女の目は微かに潤んでいた。
でも男も女も席を立とうとはしなかった。
先に口を開いたのは女だった。
「――私の兄ね、ずっと仲の良い友達がいたのよ。」
呟くように相槌を待つことなく語りつづける。
「私はあったことがないけど優しいみたい。
でも1度遠目で見たことがあった。兄より少し身長が低くて、そうねあなたと真反対な明るい色の服を着ていたわ。彼と話している兄はいつもよりも楽しそうだった。」
「――そうか。」
「ねぇ。あなた。」
「――なんだい?」
「―好きよ。」
俺は何も言えなかった。
彼女の澄んだ瞳は俺を捉えて離さなかった。
まるで何かを探るように。
その瞳がその姿が、親友に重なって見えた。
必死に懇願する姿は兄にそっくりなんだな。
俺の胸を透かすように親友の姿が目に浮かぶ。
「なぁ。頼むよ。――殺してくれよ。」
親友は言った。
俺の前で。
微かに瞳が潤む。
目を深く閉じ、開けた。
俺はゆっくりと彼女の頬に手を添えた。
冷たくなった頬を触ったあの日。
冷たい空気が髪を撫でるなか握った冷たいスコップ。
ごめん。と繰り返す俺は親友のありがとう。を期待した。
なぁ。お前が言ったんだろ。
殺してくれって。
彼女の瞳を通して親友をみた。
彼女は小さく口を開いた。
「ねぇ。あなたなんでしょ。」
俺は静かに憐れむように、彼女の思考を奪うように、微かなキスをした。
(なぁ。おまえの兄、俺がさ――)
口に出そうな言葉を必死に飲み込んだ。
ごめん。ごめんなぁ。
彼女の瞳は潤みながらもまっすぐ澄んでいて俺の瞳を捉え続けた。
コメント
1件
わあ…とーとさんの新作、めっちゃ重くて切ない…!😭💔 探偵ものかと思いきや、依頼主の兄=探偵の親友だったって伏線、エモすぎる。「♡♡♡てくれよ」って台詞が頭から離れないよ…。最後のキス、罪悪感と愛しさが混ざってて胸がぎゅーってなった。続きが気になりすぎる!!🌸