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この男は、狡い。
そして、狡いとわかっているのに、抗いようもなく、綺麗で美しい。
抱かれるさ中に、幾度も現実に戻される度に、そう感じた……綺麗すぎる。
長い睫毛の奥で濡れたように揺らぐ眼差しは、くっきりと刻まれたような二重で、すーっと横に切れ込むように目尻の端が上がっていた。
それは、彫刻家が造り上げた美青年のごとくに、高く通る鼻筋も、薄く引かれた唇も、どこまでも完璧で、隙のない美しさだった。
落ちたくはない、虜になどなりたくはない。
そう頭では考えるのに、身体はその美しすぎる男を、求めて止まなかった。
……きっと、遊びにすぎない。
彼はただ反応を楽しんでいるだけで、本気になるつもりなんて微塵もない。
だから、私は、落ちてはいけない。
落ちてしまったら、この男の思うがままに、乱されるだけ……。
けれど、巧みな誘惑が、次々に私の思考を剥ぎ取って、裸身を翻弄していく。
いけないのに……虜になれば、もう私は、
目の前のこの男から、本当に、逃げられなくなってしまう……。
浮き出た鎖骨が甘噛みをされて、「んっ…」と、口がひらいた。
あいた唇に口づけが迫り、湿り気を纏った舌先がぬらりと入り込む。
その舌を、求めてしまう。自分ではどうすることもできないくらいに、もっとしてほしいと感じてしまう。
「して、ほしいですか? もっと……」
低く艶のある声に追い詰められるかのように、身体の芯がじわりと濡れそぼり、
もう何も考えられなくなる程に、ただその気にさせられる。
意識さえ手放しそうな感覚の中で、
「して…もっと……」
私の口からこぼれ出た言葉に、「ふっ…」と、彼が鼻の先で笑った……。