rzli
『月がきれいね、なんて言えないくせに』
街の明かりが滲む夕暮れ、
2人は並んで歩いていた。
「……映画、思ったよりおもろかったなぁ」
らいとは両手をポケットに入れながら、へらっと笑う。
その横顔を見ながら、ロゼは穏やかに目を細めた。
「うん。らいとが笑ってたところ、全部覚えてる」
「またそんなこと言うっ、恥ずかしか!」
「本当のことを言ってるだけだよ」
やわらかい声。
まるで春の風みたいに穏やかで、聞いていると胸の奥がくすぐったくなる。
らいとは頬をかきながら、
「ロゼって、ずるい人やね」とぽつり。
「ずるい?」
「うん。なんか……そうやって優しいこと言うけん、俺、調子狂うと」
「それなら、もう少し狂わせちゃうかも」
「っ、なん言いよると〜……」
ロゼはくすっと微笑み、
自然にらいとの手を取った。
その仕草が、まるで絵本の王子様みたいで。
らいとは少し照れながらも、ぎゅっと指を握り返した。
夜の風が少し冷たくなったころ。
らいとが袖を引っ張る。
「……ちょっと寒いかも」
「じゃあ、俺の家寄っていく?」
「えっ……いいと?」
「もちろん。らいとが寒いなら、放っておけない」
その言葉が、らいとの胸をくすぐる。
顔を隠すように俯きながら、小さな声で「……行く」と答えた。
ロゼの部屋。
間接照明の柔らかな灯りが、ふたりを包む。
「……ロゼの部屋、落ち着くね」
「らいとが来てくれると、空気があたたかくなる」
「そげん、甘いことばっか言う人おらんよ〜」
「らいと限定だから」
らいとはソファの上で、猫のように丸くなってロゼの肩にもたれかかる。
ロゼはその髪に指を滑らせ、優しく撫でた。
「疲れてない?」
「ちょっと眠たかも」
「少し、こうしてようか」
ロゼはそっと腕を回し、らいとを胸に抱き寄せた。
心臓の鼓動が静かに重なっていく。
「……ロゼ」
「なに?」
「俺、こうやって抱かれとると、落ち着くっちゃんね」
「よかった。らいとが安心してくれるなら、それだけで嬉しい」
ロゼの声は、穏やかで低く、まるで子守唄のよう。
らいとはその声に溶けるように、指先でロゼのシャツをつまんだ。
「ロゼ」
「ん?」
「今日、ありがとね」
「こちらこそ。……らいとと過ごす時間が、俺の一番の幸せだよ」
らいとはそっと顔を上げる。
月明かりが窓から差し込み、二人の距離を淡く照らした。
見つめ合うだけで、言葉はいらなかった。
触れたら壊れそうなほど、静かな夜。
「……ロゼ」
「らいと」
名を呼ぶ声が重なる。
唇が触れそうになって、止まった。
その距離のまま、ロゼは微笑んで囁く。
「月がきれいだね、らいと」
「……うん。ロゼも、きれいかよ」
――夜が息をひそめる。
月灯りの下、ふたりの影がひとつに溶けていった。
いりす 様 からのリクエストでした‼️ありがとうございます🙇♀️
他にもリクエストが合ったら1人何個でも大丈夫なので下さい‼️🫶🏻🎀
コメント
3件
わああありがとうございます😭 めっちゃ好きすぎる!! 表現の仕方が本当にLoveです🫶💞 すごい儚くて綺麗で美しい 何個もいいっていう言葉に甘えさせて頂きます🙌🏻 学パロのしおらいが見てみたい、、です👀✨ お願いします🙇♀️🙏