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第6話
「揺れる心」
海斗「俺、ずーっとゆいなのこと、好きだったんだよ。」
その言葉に、ゆいなは大きく目を見開いた。
海斗「けど、ゆいなはお前のことが好きだった。」
思いがけない告白に、ゆいなの顔が一瞬固まる。
俺も思わず息を呑んだ。
海斗「お前、モテるんだもんな。俺、お前には叶わないと思って、諦めてた。」
その瞬間、頭の奥で何かが弾けたように、記憶がポンと戻った。
「は、?ゆいなはお前のことが好きだったんじゃないの、?」
俺は混乱しながら問いかけた。
ゆいなは顔を赤らめ、恥ずかしそうにうつむいた。
「実は……最初は祐介のことが好きだったんだけど、りあちゃんも祐介のことが好きで、祐介もりあちゃんのことが好きだった。だから私はすごく落ち込んでいた。そしたら、そこに海斗が私を慰めてくれて、そこから一目惚れ。ずっと好きだった。」
海斗は息を詰まらせた。
「……じゃあ、俺にチャンスがあったってことか?」
ゆいなは小さくうなずく。
「そう。あんたがいてくれたから、私……救われたんだよ。」
海斗は拳を握りしめ、俯いたまま小さく笑った。
「……バカだな、俺。」
その姿を見て、俺の胸は締めつけられた。
記憶が蘇るごとに、過去の感情も流れ込んでくる。
りあの笑顔、ゆいなの涙、海斗の優しさ。
全部が混ざり合い、心をかき乱す。
しばらくの沈黙の後、ゆいなが俺を見つめて口を開いた。
「ねぇ、祐介。……りあちゃんのこと、会ってみない?」
俺の心臓が強く跳ねた。
その名前を聞いただけで、胸が熱くなる。
海斗は俺に向かってわずかに笑みを浮かべる。
「そうだな。逃げるなよ、祐介。お前の答えが……たぶん、みんなを変えるから。」
俺は拳を握り、静かに答えた。
「……あぁ。会いたい。りあに。」
空が茜色から群青に染まるころ、俺たちはそれぞれの想いを胸に秘めたまま、次の再会を迎える準備をしていた。
▶︎第7話へ続く