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続きが無かったから泣いてしもうた続き待ってます!
ゲホッゲホゴホッ
奇病らしいものが俺に感染している。
…といっても、もう感染してるんだがな。
咳き込む時はとても体が重くて痛い、喉も潰れるようで苦痛が俺を襲ってくる。吐き気も凄くて体が崩れてしまい、咳をする時はどうしても座り込んで、時には倒れてしまうことがある。
苦痛が酷い時は涙がボロボロと次々と水溜まりが出来そうだなって思うくらい流れ落ちてくる
まあ、今では苦しいけど慣れたもんだ、でも一番苦しいことは物理的じゃなくて精神的にだ…
うっ…ゲホッ゛おえぇ…
咳が終わって瞼が開くと目の前に数本の花が落ちてる、その花は紫色のアネモネだった。初めの時はなんだこれ?と思い調べると、誕生花は2月15日で花言葉は「あなたを信じて待つ」だった
よく分からんな、と思ってた俺だけど流石に今こんな状態となると、この奇病について調べるしかなかったためこの奇病が花吐き病だと知ってからはもうこの花についてはよくわかった。
同じ誕生の日、そして花の色が一緒。いむだ。
俺は同じ仕事メンバーのいむに片想いをしていたということがわかった。
面白いことに俺はずっと無自覚だったけど!(笑)
確かにいむと居るとたまに心臓がうるさいことがあった
でもそれは風邪だなと思い込んでた、だって仕事が大変で風邪になることが多いから…
まあ、それなりに休日は仕事仲間のぽん太ともひなことも結構遊んでたけどな(笑)
そんなことを考えていればまた症状が出て、花を吐いた。
今までの俺は花なんて興味なかったのに、好きになれなかったのに…今だけは、今だけはこの花だけが好きだと思えている、それは片想い中のいむのお陰なんだと思う。
でも俺はこのまま窒息死した方がいいと思う。
仕事仲間で友達のいむに告白をして、もしいむが男に好かれてたなんてって思って傷付いたら?もし振られたらそれはそれで苦しいし。
仕事仲間のぽん太や仕事の手伝いをしてくれるなっつん、時々会ってる同じゲーム実況者のしんどうじさんやあおいちゃんにも迷惑をかけるかもしれないし、姉のひなこを悲しませてしまうかもしれない…わざわざ俺一人のために皆に迷惑をかけたりするのは申し訳ないし仕事にも影響を与えてしまうかもしれないが、俺は俺で弱音は吐かない。
いむに告白して振られて、結局いむにも傷つかれたら俺は精神が不安定になるかもしれない。あとは告白して、いむがなんらかの理由で仕事を辞めたりすることだって、可能性はある。
そうならないように、俺は奇病の事は黙ってこのまま死んでしまった方がより良いと思うんだ。
いむは俺の事なんか好きじゃない、同性愛の俺が異常なんだ、だからいむは違う。
そう思い込んで諦めていた、両片思いだったとしても、彼は俺を思っているのか。
あいつと俺は釣り合わない、だから好きになっちゃいけない、そんなエゴを俺は毎日沢山抱えていたんだ。
疲れた、どちらにしろ死なせてほしいな…辛い思いして病むならほんとに幸せを望んで楽になりたい。
奇病で苦しむくらいなら今死んでもいいんじゃないのか…?
部屋の隅で丸まっていながら迂愚で浅はかなことを頭の中で喋っていると
ピンポーン
呼び鈴が鳴った、早く出ないと
…あれ、体が動かない、なんで?いつも元気いっぱいはしゃいで動いてたじゃないか、どうしたんだよ、動けよ。
ピンポーンピンポーン
うるせぇ、つか誰だよ今深夜の2時だぞこんな遅い時間に来て、怪しい奴か?
ガチャ
友達と会う約束もしてないのに深夜、一人暮らしをしているぷちぷちの家に呼び鈴が鳴れば開けてもないのに鍵のかかったはずのドアは開いた音がした。
「…え、あ…な、なんで…」
トストスと誰かが廊下を歩く音がする、その音は通り過ぎてリビングの方へ行った。音が止みトン、と何かが机に置かれた音がして少し時間が経つとまた同じ音がこっちへと近ずいて、その度に音は大きくなる。
く、来んな…ダメ、体動かねぇ…動けよ!なんでこんな時に…怖い、誰だよ来んなよ殺すぞ…
「…く、な…」
恐怖に包まれたぷちぷちの声は徐々に小さくなっていて聞き取れない声量になってしまった。
丸まった体は1ミリだけ動くが立てそうにもないし手も上手く握れない。
ガチャ…
ついにぷちぷちの居る部屋の扉が開き誰かが入ってくる。
や、やだ…来んな動け動け動け!動けよ!早く動け!
スタスタと足音は瞼をぎゅっと閉じたぷちぷちの前まで来た。
死ぬんだ…あれ、死ねるんじゃん
こんな時まで愚劣な考えをする俺、早く死なせてと願う。でもそんな期待は踏みにじされる。
「ぷっちー?」
何故か好きな人の声がする、目を開けると目の前にはいむが居た。
何故いむがここにいるのか。多分、いむの肩からバッグがぶら下がっているからこの前貸した本を念の為に渡した合鍵で家に入ってそのまま返しに来たんだろう。
ぷちぷちの暗い部屋は電気も着いてないのに、何故か光が彼の目の前で輝いていた。
光に夢中になっていた俺はいむが俺の吐いた花を見て「この花…何?」と、触れようと手を伸ばしていた。ふと頭に浮かんだ。
「吐き出された花に接触すると感染する」という文字を。
パシンッ
咄嗟に動かない体の手でいむの進む手を止めようとすると、意外な早さでグンッと手が伸びてしまい、そのまま掴むことは出来ず、勢いのままいむの手を叩いてしまった。
「あ、ご…ごめん」
思いもしない展開と意思のなかった暴行、とにかくいむに謝らないとと思って謝罪を口にした。
でもいむに俺みたいな苦しい思いはしてほしいくない、だから「…でもこの花だけは触っちゃだめ、帰って」
本を返したいむが俺の方へ来た訳は知らないが、奇病に感染したことを知ったらどんな反応するか、分からないし最悪な結果になってしまうかもしれない。そうならないようにいむに出ていってと告げた。
目の前の彼は叩かれた手をもう片方の手で抑えて「ごめん」とだけ言って部屋から出て行った。顔が上手く見れなかったけど、悲しいオーラが感じた。本当に酷いことをしてしまった…
罪悪感と共に恐怖と絶望が俺を責めてくる、「情けねぇな…俺…(笑)」ズビッと鼻を啜る音をたてながらも、俺は笑顔を絶やさないでいた。
恋愛なんていい事ない、そう考えて、俺の恋心は鉄格子に囲まれた鍵付きの引き出しの中に封じ込めた。
この1つの感情で、誰かを傷つけないようにと願って。
俺も、このまま死ぬまでこの部屋に封じ込められたいな…
続きます。