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「コイツらの仲をとりもった関係でな。なにか問題があったら、両方から愚痴が飛んでくるんだ。それってめんどくさいだろう?」
「でも今の話って、まーくんが彼女に言わなきゃいいだけの話でしょ。おじさん友達なのに、殴ることないんじゃない?」
自分の躰を使って、宮本を誘う女に対抗してやろうと、橋本は朗らかな笑みを浮かべながら、胸を張って答える。
「俺はただの友達じゃない。友達の中でも、一番信用されてるんだ。そうだよな?」
背後にいる宮本に問いかけたのに、「はぁ、そっすね……」なんていう歯切れの悪い返事をした。
(ま~さ~き~、ここは元気よく肯定しないと、ロリ女にツッコミいれられるぞ! 空気を読んでくれ!)
「なんかおじさん、ひとりで空回りしてない? まーくんの今の口調、それほど大事に思ってなさそう」
女が手のひらをヒラヒラさせて指摘した。
ほら見ろ、言わんこっちゃないと、橋本が反撃の言葉を考えた瞬間、宮本から声がかけられる。
「陽さんは大切にする存在を超えた、友達以上の関係なんです。中途半端な気持ちじゃないですから」
橋本は白目をむき、唇を引きつらせた。カミングアウトするにも、タイミングが悪すぎて、フォローできないと咄嗟に思った。
「なにそれ……。友達以上の関係って、どういうこと?」
「雅輝落ち着け。おまえ、自分がなにを言っちまったか、理解しているのか?」
恐るおそる背後を振り返った橋本に、宮本は親指を立てながら堂々と答える。
「わかってますよ。隣に陽さんがいるから、俺は安心してインプを走らせることができる。セブンを乗っていたときの走りと、まったく変わったんです。考え方から何もかも俺を変えてくれた、かけがえのない存在だって」
「おじさん、まーくんよりも速く走れるの?」
「まさか! 足元にも及ばないって……」
慌てて正面を向いて答えた橋本だったが、宮本に告げられた内容に、表現しがたい喜びを感じてしまった。それが頬の赤みとなって表れてしまう。
どのタイミングで直球を投げつけられるか予測不能なため、心臓に悪いと思わずにはいられなかった。
「だったらこれから、ダウンヒルバトルしない?」
「悪いが遠慮させてもらう。俺たちはただここに遊びに来ただけだから。走りに来たんじゃない」
白銀の流星という二つ名を持つ宮本の体面を考えて、橋本から断った。
「走りに来たわけじゃないのに、どうして私の走りについてきたの? 相当頑張らないと、後ろにピッタリつくなんて無理だから」
「それは――」
後ろを振り返って橋本が言い淀むと、宮本が小首を傾げながら口を開く。
「なんていうか、貴女の運転に引き寄せられちゃった感じっす。うろ覚えの道を走るとき、目の前にある車のリズムに合わせて走ると、気持ち楽に走らせることができるんで」