卒業式が終わった
友人との別れも済ませ、学校を後にする
正門を潜り歩道を歩く
学校も見えなくなり住宅街を抜け、商店街手前のバス停で脚を止める
まもなく一台の車がバス停に停まった
俺は助手席の扉を開けて車に乗り込む
そこにはダークスーツに身を包んだ先生の姿
「式の時も思ったんだけど、そのスーツありえんくらいにカッコいいな」
「お前の就職の時に作ってやるよ」
「え?マジで!」
そんな話をしながら、先生は後ろの席に手を伸ばし花束を手に取った
バラの花束とこれは‥‥‥‥
「卒業おめでとう」
「ありがとう‥‥この凄い花は何?」
「これは極楽鳥花だ」
「変わってる花だね」
「今日にピッタリかと思って。コイツの花言葉が『輝かしい未来』だからな」
「確かに」
先生が車を走らせる
今日は何処に行くわけでもない
俺がドライブデートをせがんだだけ
他愛ない会話をしつつ先生を見つめる
「そんなに見るなよ。気が散るだろ」
「だって運転してるの新鮮だし」
「そんなのこれから見慣れるだろ?」
「‥‥これからの話し出来るって良いね」
「そうだな」
気づくと空がオレンジ色になって来ていた
そして目の前に海が広がる
「凄っ‥‥綺麗過ぎる」
「ここの景色好きなんだ」
オシャレな建物が並び、その前にある駐車場へと車を停める
「1人でここに来てたの?」
「たまにな」
「今度また2人で来よう」
「そうだな」
穏やかな海が徐々にオレンジに染まる
それを眺めていると先生が口を開いた
「降りて」
「え?‥‥寒いよ?」
「良いから来て」
「え?‥‥でも‥‥」
既に扉を開け車から降りた先生を見て、俺も慌てて車を降りる
先生は車に鍵をかけて歩き出す
「おい!どこに行くんだよ」
「ここ」
先生が指差す
そこは駐車場の真後ろに立つオシャレな建物
真っ白な真四角のこちら側がガラス張りの建物だけど‥‥
「ここ‥‥何?」
「レストラン」
「え?このまま入るの?」
俺は自分の制服を指差す
でも先生は気にする事なくまた歩き出した
「ちょっと先生!聞いてんの?」
「良いから早く来いよ」
またまた俺は慌てて先生の後を追い、レストランの中に入る
入り口に立つお店の人が俺達に向かいぺこりと挨拶をした
「小柳です」
「伺っております。どうぞ2階へ」
「ありがとうございます」
先生に続き2階へ上がると、そこはソファーが半円形に窓へ向き、その背もたれが壁の様に高く目隠しになっていた
隣同士席に着くと1人のウェイターがやって来る
「ご来店ありがとうございます、小柳様」
「フフッ、堅苦しいのやめて?」
「そうですか?せっかく小柳さんのお相手と初めて会うのに」
「これからコイツもここによく来ると思うから顔覚えてやってよ」
「勿論です」
「今日は悪いが酒は飲まないんだ。いつものコース出してもらえる?」
「かしこまりました。少しまとめて持って来ましょうか?その方がゆっくり話もできますし」
「そうしてもらえるとありがたい」
俺は2人の会話を聞きながら、話し相手の顔を見た
「この人はここのオーナーだ。ここの店は共同でやってて、コイツはソムリエをしてる。お前が酒飲めるようになったら選んでもらうと良い」
「初めまして。お噂は予々小柳さんから聞いております。当店ではソムリエを担当しております酒寄颯馬と申します。よろしくお願いします」
「あ、ローレンイロアスです。よろしくお願いします」
「コイツは俺の高校の後輩なんだ。高校卒業して留学してワインを学びに行ったんだよな」
「はい。その時出会った仲間とここでレストランバーを開いております。それでは料理お持ちしますね。もう手配しておりますので」
「あぁ、頼む」
一度下がり料理が運び込まれる
とても美味しそうな数々に目移りしてしまう
俺達は早速それを口に運んだ
「美味い‥‥どれも美味い」
「そうだろ?」
「ここって先生の知り合いだから制服のまま俺を連れて来たの?」
「いや、どこでも良かったけど、どうせなら景色も良くて美味しい方が良いだろ?それで俺の知り合いなら気兼ねなく過ごせるし。あとは最後に制服でお前とデートしたかったしな」
「‥‥色々考えてくれたんだ。ありがとう」
「良い思い出になりそうか?」
「当たり前だよ。こんな事してくれるの先生しかいない」
「明日からは先生って呼ぶなよ」
「それは無理かも」
高校生活最後の制服デート
あまりにも出来過ぎで身の丈には合わないけど
いつかこの場所で先生をエスコート出来るような人になりたい
その前に残された合格発表
その日は先生の家で確認することに決めていた
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コメント
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え、良すぎるが、、、、、! 酒寄でてきたのびっくり!! てか、こやさんロマンティックやねぇ!かっこいいわ✨