文久時代 (1863年) 8月
総司の咳は酷くなり、熱が出てはすぐ下がり、元気な時は子供達と遊んでいるか、稽古をしていた。
噂では、総司の教えを嫌っている人がいた。すごく厳しいらしい。でも総司に教えられた人達は上達するのが早かった。その中でも沖田先生などと呼ぶ人もいた。朝餉の片付けが終わり、山南さんと縁側でお茶を飲んでいた。すると山南さんが、
「京都での話でな。新撰組局長の芹沢鴨とゆう男がいて、女がいる、いい店を紹介する皆ついて来い。といっても、沖田君は応じなかったんだ。興味がないのかとも思ったのだが、後々聞いてみた。どうして沖田君は行かないのかを。想い人がいると。沖田君は言っていたよ。遥ちゃんの事じゃないかな。」
すると歳三が来て言った。
「しれば迷い、しらねば迷わぬ、恋の道」
と口ずさんだ。
山南さんが、今のうちだよ。と背中を押してくれた。
でも私には恋心が何かわからなかった。
「遥ちゃん、沖田君が怪我をしたら心配?」
「うん」
「さっきの話で女のところに行っていたら?何も思わない?」
「…」
「沖田君と一緒にいたいって思う?京都に行って一緒にいれなくて一回も考えなかった?」
「思うし、ずっと考えてた」
「人はそれを恋心と呼ぶ」
私は自分の気持ちに気づいたのかも知れない。
今総司がいなくなったら嫌だ。ずっと一緒にいたい。
山南さんに有難うと伝え。すぐ総司の部屋に行った。
扉を開ける前私は声をかける。
「総司。入ります」
返事がなかった。また子供達と遊んでいるのかと思い
襖を開けた。するとそこには、咳き込んだ後の総司の姿があった。私はすぐさま総司に駆け寄り、背中を撫でた。
「総司しっかりして!!ゆっくり息吸って!」
「は…るか…」
咳をしている時に口元を押さえていたのだろう、手のひらに血が付いていた。
「タオル持ってくるから、じっとしてて」
「遥、近藤さん達には言わないで」
とりあえずわかったと返事をした。急いで水とタオルを取って来た。総司は今落ち着いたようだった。