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特別編
バレンタインですね♡♡♡
叶『』葛葉【】
バレンタイン当日。
スタジオの控室は、甘ったるいチョコレートの匂いで満たされていた。
テーブルの上には、ファンから贈られた大量のチョコ。可愛い箱、高級そうな箱、手作り感満載の箱。
その中心で、ぶすっとした顔の葛葉が腕を組んで座っている。
【……めっちゃ多いな、流石にこんなに甘いの食えねぇっての】
『へぇ?でも嬉しそうじゃん』
にこにこと覗き込んでくるのは叶。
余裕たっぷりの笑みが、やけに腹立たしい。
【嬉しくねぇし】
『ふーん。でもさ、さっきスタッフさんに“これ葛葉さんに直接渡してもいいですか?”って聞かれてた子、すごい可愛かったよ?』
ぴくり、と葛葉の眉が動く。
【……は?】
『なんか手作りっぽいの持っててさ。顔真っ赤にしてた』
わざとらしく言うと、葛葉の視線が鋭くなる。
【お前……なんでそんな見てんだよ】
『だって気になるでしょ。僕の相方に告白しようとしてる子がいたら』
さらりと言われた一言に、葛葉の喉が詰まる。
【告白って……別に、受け取るだけだろ】
『受け取る“だけ”?』
叶が一歩近づく。ソファに座った葛葉の両腕を、背もたれに押さえつける形になる。
距離、近い。
『もしさ、その子が「好きです」って言ってきたら?どうするの?』
低く、甘い声。
【……知らねぇよ】
視線を逸らそうとした瞬間、顎をそっと掬われる。
『僕は嫌だな』
【は?】
『他の誰かに葛葉が好きって言われるの』
その声音は柔らかいのに、目だけが笑っていない。
『……僕以外に、あげる気あるの?』
心臓が跳ねる。
葛葉は一瞬黙り込んでから、小さく舌打ちした。
【ねぇよ】
『ん?聞こえなかった』
【ねぇって言ってんだろ。バーカ】
叶の目が細められる。
『それ、チョコも?』
【……お前のしか食わねぇよ】
ぽそりと零れた本音に、今度は叶が固まった。
『……なにそれ、ずるい』
一瞬の隙を突いて、葛葉が叶の胸ぐらを掴む。
【嫉妬してんのはそっちだろ。さっきから】
『してるよ』
即答だった。
『だって、今日はバレンタインでしょ?葛葉が誰のものか、ちゃんと確認しとかないと』
そのまま額を軽くぶつける距離。
【確認ってなんだよ】
『……僕のだよね?』
真っ直ぐすぎる瞳に、葛葉の顔がみるみる赤くなる。
【……っ、そうに決まってんだろ】
小さく呟いたあと、そっぽを向いて付け足す。
【お前以外に、やるわけねぇし】
その瞬間、叶がふっと笑った。
『じゃあ証明して』
【は!?】
『今日も、俺の隣にいて』
囁くように言われて、葛葉は観念したように肩を落とす。
【……最初からいるだろ】
『うん。でも、言ってほしかった』
そっと、指先が絡む。
大量のチョコよりも、甘い空気が二人を包む。
『ハッピーバレンタイン、葛葉』
【……ハッピーバレンタイン、叶】
そして葛葉は、小さな箱を一つだけ取り出した。
【これ……お前の】
『え、僕に?』
【手作り。文句あっか】
叶は目を丸くしてから、ゆっくりと微笑む。
『……一生大事にする』
【食えよ】
笑い合う二人の距離は、もう誰にも割り込めないほど近かった。
甘くて、少しだけ独占欲の混じった、二人だけのバレンタイン。
コメント
2件
ハッピーバレンタイン!最高です神ですね。
すごく最高!