テラーノベル
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とある休日。
みことはソファに腰掛け、包み紙をくしゃりと握りながら、口の中で飴を転がしていた。
飴がころんと転がり、 舌に当たるたび、じわっと甘さが広がって、なんだか落ち着く味だった。
ぼんやりしていたら、すちの気配がすぐ近くに来ているのに気づく。
顔を上げようとした、その瞬間——
唇が、ふさがれた。
「……っ」
驚く暇もなく、すちの指が顎に触れて、逃げないように固定される。
重なった唇はやわらかくて、すぐに舌が遠慮なく入り込んできた。
口の中を探るみたいに、ゆっくり、丁寧に。
舌先が触れた瞬間、飴の甘さが一気に伝わって、胸の奥がきゅっとなる。
逃げようとしたけど、すちはそれを許してくれなかった。
舌が絡め取られて、飴を挟むみたいに、ゆっくり、ゆっくり動かされる。
すちの舌はあたたかくて、やさしいのに、逃がさない。
飴を一緒に味わうみたいに、甘さを分け合うたび、頭がぼうっとしてくる。
「……ん……」
声が漏れてしまっても、すちは離れない。
むしろ、嬉しそうにさらに深く舌を絡めてきて、飴が小さくなるまで、ずっと。
時間が溶けていくみたいだった。
飴なのか、キスなのか、どっちの甘さかわからなくなるくらい。
やがて、舌の上にあったはずの飴の感触が、ふっと消える。
そのタイミングで、すちは名残惜しそうに、ゆっくり唇を離した。
「……溶けちゃったね」
すぐ近くで微笑むすちに、胸がどきんと跳ねる。
口の中には、もう飴はないのに、甘さだけが残っていた。
「……っ…ずるい……」
そう言うと、すちはくすっと笑って、額を軽く合わせてくる。
「一緒に舐めたんだから、半分こでしょ」
そう言って、もう一度、今度は優しいキス。
飴よりも甘い余韻に、しばらく何も言えなくなってしまった。
唇が離れたはずなのに、まだ近い。
すちの吐息が頬にかかるだけで、胸の奥がじん、とあたたかくなる。
(……だめ、頭、回ってない……)
飴はもうないのに、口の中は甘いまま。
舌を動かすと、さっきまで絡められていた感触が残っていて、思い出すだけで力が抜けてしまう。
すちの指が、そっと背中に回る。
抱き寄せられるだけなのに、それだけで安心して、体が勝手に預けてしまった。
「……顔、ぼーっとしてる」
耳元で囁かれて、びくっと肩が跳ねる。
否定したいのに、言葉が出てこない。
「……だって……」
声が、情けないくらいにやわらかくなっていた。
すちはそれが可笑しいのか、くすっと小さく笑って、額に軽く口づけてくる。
その一つ一つが、優しくて、逃げ道がなくて。
きつく抱かれているわけじゃないのに、胸の奥まで満たされていく。
気づいたときには、視界が少し高くなっていた。
すちがソファに腰を下ろして、みことをそのまま膝の上に乗せている。
「……あ」
抗議しようとしたのに、腰に回された腕があたたかくて、力が入らない。
背中から胸にかけて、すちの体温がじんわり伝わってくる。
「いいでしょ。今、立てない顔してる」
耳元でくすっと笑われて、否定できなくなる。
実際、頭はまだふわふわで、足先まで力が抜けていた。
すちは何も言わず、ただゆっくりとみことの髪を撫でる。
指先が動くたび、さっきの甘さがよみがえって、喉の奥がきゅっと鳴る。
(……ずるい……落ち着く……)
身体を預けると、すちの胸がすぐそこにあって、呼吸のたびに微かに上下するのがわかる。
そのリズムに合わせるみたいに、みことの呼吸も自然とゆっくりになる。
「……重くない?」
小さく聞くと、すちは即答だった。
「全然。むしろ、ちょうどいい」
そのまま、みことの額に軽くキス。
音も立てない、やさしいやつ。
それだけで、胸の奥がとろっと溶ける。
腕を引き寄せられて、みことはすちの胸にすっぽり収まった。
「ここ、落ち着くでしょ」
「……うん……」
声が小さくなるのも、もうどうでもよかった。
すちの手が背中をさすって、時々、頭を撫でてくれる。
甘やかされている、って自覚するたび、恥ずかしいのに。
それ以上に、安心のほうが勝ってしまう。
(……このまま……動きたくない……)
膝の上で、胸に抱かれて、ゆっくり、ゆっくり。
飴よりも甘い時間が、静かに続いていく。
「……ほんと、力抜けてる」
耳元で低く囁かれて、ぞくっとする。
声が近すぎて、返事をする前に胸がいっぱいになる。
「今日のみことも、すごくかわいいね」
その言葉が、ゆっくり染み込んでくる。
否定したいのに、恥ずかしいのに、体は正直で、すちの胸にすりっと寄ってしまう。
(……だめ……嬉しい……)
すちはそれに気づいて、さらに腕を回してくる。
抱きしめる力はやさしくて、逃げなくていいって言われているみたいだった。
「ここにいていいよ。俺の膝、好きなだけ使って」
ぽん、と背中を撫でられる。
その一言で、最後の緊張がほどけた。
目を閉じると、すちの声だけが聞こえる。
低くて、あたたかくて、眠りに誘うみたいな声。
「大丈夫。ちゃんと支えてる」
髪に口づけられた気配がして、胸がきゅっとなる。
でももう、考える余裕がない。
(……すち……あったかい……)
意識が沈んでいく中で、最後に感じたのは、 背中を一定に撫で続けてくれる手と、変わらない鼓動だった。
暫く経ち、小さく身じろぎして、みことが目を開ける。
まだ寝ぼけた瞳が、ゆっくりすちを捉える。
「……すち……?」
声が掠れてるのも、距離感がわかってないのも、全部かわいい。
起き上がろうとする前に、額に手を添えて、そっと唇を重ねた。
深くもしない、触れるだけのキス。
それなのに、みことは一瞬で力が抜けて、息を小さく呑む。
「……はぁ……」
その反応に、思わず笑ってしまう。
「キスだけで、もう蕩けてるの?」
指で頬をなぞると、みことは恥ずかしそうに目を逸らすのに、逃げない。
そのまま、もう一度、今度は少しだけ長く口づけた。 離した瞬間、潤んだ目で見上げてくるのがずるい。
「……ほんと、かわいいね」
甘い顔のまま、耳元で低く囁く。
「これでこの反応ならさ……本番、どうなっちゃうんだろうね」
冗談めかして言っただけなのに、 みことは一気に顔を赤くして、俺の服をきゅっと掴んだ。
「……い、言わないで……」
「言ってないよ? 想像しただけ」
くすっと笑って、最後に軽く、もう一度キスを落とす。
みことはほっとしたように、それでもどこか名残惜しそうにすちの胸に額を預けてきた。
その反応全部が、愛しくてたまらなかった。
すちはみことを抱いたまま、ほんのわずかに腰を揺らした。
わざとらしくない、小さな動き。けれど、それだけで空気が変わる。
「んん…っ」
みことの視線が揺れて、喉が鳴る。
すちはそれを確かめるように微笑んだ。
「……想像、しちゃった?」
低く、甘い声。
みことの反応を楽しむ余裕を隠そうともしない。
「この先……俺のことしか考えられなくなるくらい、ちゃんと大事にするよ」
含みのある言葉に、みことの顔は一気に赤くなる。
逃げるどころか、すちの服をきゅっと掴み、胸にしがみついた。
「……うん……」
小さく、でも確かな肯定。
すちはそれを聞いて、満足そうに目を細める。
「いい子」
それ以上、すちは何もしなかった。
腕の中のみことを落ち着かせるように、ただ一定の力で抱いているだけだ。
けれど、みことの鼓動だけが、なかなか元に戻らない。
胸に顔を埋めたまま、呼吸を整えようとするのに、さっきの言葉と仕草が何度も頭の中で繰り返される。
腰のわずかな動き。
耳元に落とされた、あの含みのある声。
何もされていないはずなのに、身体が勝手に覚えてしまったみたいに、熱が引かない。
(……だめ……考えないって……)
そう思うほど、余計に意識してしまう。
すちの胸に頬が触れるたび、心臓が跳ねて、指先にまで落ち着かない感じが広がる。
すちはそれに気づいていないふりをしていた。
わざとらしくスマホを手に取り、いつも通りの穏やかな表情をしている。
「……落ち着いた?」
何気ない声。
からかいも、含みもない。
みことはびくっと肩を揺らし、慌てて小さく頷く。
けれど、すちの服を掴んだ指は、まだ離せていない。
「……ほんと?」
視線を落としたまま、すちはやさしく問いかける。
責めるわけでも、迫るわけでもない。
みことは答えられず、代わりにぎゅっとしがみついてしまった。
顔は真っ赤なままで、耳まで熱を帯びている。
すちはそれを見て、内心で小さく息をつく。
それ以上触れない代わりに、頭を一度だけ、軽く撫でた。
「……そっか」
それだけ言って、もう追及しない。
その余裕が、余計にみことの胸をざわつかせる。
しばらくして、ようやく腕を解かれ、距離ができても。
みことの心臓は、まだ速いままだった。
すちが立ち上がって、いつも通りの笑顔で振り返る。
「お茶、入れてくるね」
ただそれだけ。
何事もなかったように、日常へ戻っていく背中。
みことはその背中を見つめたまま、 しばらく動けずにいた。
何も起きていないのに。
何もされていないのに。
胸の奥だけが、甘い予感を抱えたまま、 いつまでも、いつまでも、落ち着かなかった。
コメント
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なぜR18がほぼ無いのにこんな♡♡♡ィ場面を書けるのですか...!?