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*pixivで活動しているぎんさんの好きなとこを好きなように書いたはいいが誰か続きを恵んでくれないか集の続きを考えてみました
口調など注意です
熱を含んだ火薬の匂い。視界に屡火の粉が入り込んでは消え、チリリと肌を焦がさんとする。息を吸う度に噎せ返りそうな酷い匂いがするが、自分もその一因なためどうすることも出来なかった。
「らだぉ、」
細い声が自分の名を呼ぶ。脇腹から多量に出血し地に伏せっている彼女は、自分の身を案じるべきなのにこちらにばかり気をかけてくれている。大丈夫だよ、と小さく笑い返したが、何故だか一層泣きそうな顔にさせてしまった。
「…で、そっちの要求は、俺一人の命だけでいいわけ、?」
コホ、と思わず噎せた。器官に入り込んだ灰カスは消える事はなく、咳の衝動でズクンと至る所が痛んだ。でも気絶するほどでもなければ即死するほどでもない。なんて言ったって俺は心無きだから、これくらいどうってことない。
「あぁそうだ、お前が居なければ全てが上手くいった!それなのにお前が生きているせいでこの街は終わる!」
自分も瀕死のくせに、俺が悪いという主張をこんな時にまでやめない。ここまできたらいっそもう俺が悪いのか、なんてね。そんなこと言ったら成瀬や猫マンゴーたちに怒られちゃいそうだ。
…犯人が指定した爆発時間まで、残り十分を切ったか。
未だ全ての爆弾は見つけられておらず、発見されたものも俺の生体反応が無くなるまで止まらない厄介なものだ。市民は避難させ終わっていても、たった十分足らずでこの場にいる全員が街から出られやしないだろう。この場にいる警察は俺以外ダウンしているし、外にいる他の人達もきっと逃げるという選択肢を取ってくれない。
「ハハ、ハハハ、爆弾解体なんて無駄だ、もう止まらない、全て終わりだ、ハハハ!!」
気でも狂ったように高笑いした後、犯人はそのまま糸が切れたようにガクリと気絶した。大方怪我と出血で限界が来たのだろう。このまま死ぬのも時間の問題か。胸糞悪い最後に、舌打ちと小さな罵倒が後ろから聞こえた。
「らだお、下手なこと考えんじゃねぇぞ、俺らはんなこと望んでねぇからな」
「そうだぞ!!ただのハッタリだ!!俺は信じてるからな、まだ間に合うって!!」
大事な仲間達の声が、背後から聞こえて。意外と俺って必要とされてるのかな、なんて場違いにも嬉しく思った。
けど、だからこそ。
体の至る所がズクズクと痛み、無常に流れていく血液がそろそろ自分も限界だと言うことを教える。でもダメだ、ここでダウンしてしまったら何も出来なくなる。
今にも倒れてしまいそうな程力が上手く入らなくて、よたよたと崩れかけの柱に背を預け、出来るだけ衝撃のないようズルズルと床に座った。多分もう立てない。深く息を吐いて、成瀬と猫マンゴーの方へ視線をやれば酷い歪んだ顔をしているものだから、思わず笑ってしまった。
「何笑ってんだてめぇは」
「えぇ、口悪…だって、酷い顔してるから。大丈夫だよ、大丈夫。俺を信じて」
「ならその銃を離せ!」
「もう弾切れだから打てないよ」
先程まで犯人に向けていた銃を、空に向かってカチカチと引き金を引いてみせる。ハッタリに使えるかと思っていたが、結局未使用で終わってしまった。
あからさまにほっとした二人に薄く笑ってから銃を床へ置くと、一息ついて、緩慢な動きで右耳へ手を伸ばした。普段は髪に隠されていて見えなかったが、かきあげれば銀色のピアスがひとつある。小さな丸型のよう、至って普通に見えるもの。
「…?ピアス、?」
「うん。実は俺隠れオシャしちゃってたんよね、普段は髪とヘルメットあるから誰にもバレないんだけど」
「…なんで、今それを?」
成瀬は勘がいい。今だってどんなにいつも通りに装おうとしても、何か嫌な予感を察知して鋭い眼光でじっと俺を見てくる。そんなに睨まないでよと抑揚なく笑い、少し震える手で取り外したピアスを血濡れの指で摘んだ。それは丸型というよりも、カプセルにそのままピアス加工を施した特注品と言える。これを頼んだ時の零雨さんの苦虫を噛み潰したような顔は凄かったなぁ。
「別に、二人のトラウマを作りたいわけでも悲しませたい訳でもないんだけどさ。この体制のままもう動けなさそうだから、物陰とか行けなくてごめんね」
「は、なんのはなし、」
「…なぁおい、そのピアスまさか、」
「?、なんだ、?ただのピアスじゃ、ないのか」
困惑する中で説明を求めるように猫マンゴーが俺と成瀬を交互に見る。俺は既に大半の感覚が無く覚束無い手元をなんとか使って、突起を押しそれを開けた。
「…それ、カプセルピアスだろ、中に薬を仕込める」
「…え」
「おー、なるせ当たり」
小さな銀の空洞に収まった、白くて硬い典型的な錠剤を取ってみる。けれどもすぐにじわ、と指先に着いていた血液が染みてきてしまい、折角真っ白で綺麗だったのになと少し残念に思った。
そんなのんびりとした考えをしていると、成瀬の言う通り薬が入っていると分かった二人は意外と冷静に俺へ問いかける。
「、それ、なんの、薬、」
「んー?これはねぇ、まぁ正式な名前は無いんだけど…そうだな、自決剤、かな?」
ヒュゥ、と息を飲む音がした。それが誰かからなんて分からなかったけど、そんなに心配することないよとなるべく朗らかに言った。
「なんでそんなの、」
「んーとね、俺は警察で、一般市民とかと比べると簡単に狙われたりしない立場だけどさ。もしね?誘拐とか拉致監禁されたとして、俺がいることで警察側に不利益を出したくないってなった時用。情報吐けーって拷問されたり、人質にされたりした時かな。今まで使うこと無かったから言ってなかったけど」
ついに役立つ時が来たかぁ、とどこか他人事のような心地で呟く。本当は手足を縛られた場合に備えて口の中に仕込みたかったけど、誤飲防止とそんな時が来て欲しくないからという零雨達からの強い要望でピアスとなった。なんて要らない小話を挟みつつ、これを作ったのが随分前なことに時の速さをしみじみと実感する。絶対に今じゃないけど。
「でもね、大丈夫安心して。これ、自決剤ではあるけどね、完全じゃないんだ。一回心肺停止した後、なんと蘇生し始めるんだって。すごすぎん?めちゃくちゃ技術と資金が必要だから大量生産は難しくて、既製品はこれだけだけどね。だから死なないよ、大丈夫」
死ぬけど、死なない。末代まで着いて回るくらいのしつこさで彼等に頼み込んだところ、彼等の持ち得る全ての技術と知識を使って作り上げてくれたありがたいお薬だ。夢のような薬にはもちろん相応の対価があるけれど…まぁ、ここで言っても止められるだけだから言わなくていい。
即効性ではあるけれど、爆弾爆破まで時間もない。だから早く行動するに越したことはないと、早速あーんと口を開け飲み込もうとした時。
「らだお!!」
…猫マンゴーの悲痛な声に、一度動きを止めた。
薬を持つ手は口元に上げたまま、少し唇を閉じて瞳だけ猫マンゴーへ向ける。猫マンゴーだけじゃない、成瀬だって酷く怯えたような怒ったような顔でこちらを見ていた。止めろとでも言うのか、自分達はそんなにボロボロでも、市民を守る義務と責任があるというのに。
「らだ、」
パクン、と今度は声を聞く間もなくそれを口放り込んだ。息を飲む音と成瀬の怒号が耳を劈く。でも、誰も俺を物理的に止められやしない。水も無しに固形の薬を飲むのは中々難しかったが、乾いた唾液を何とか口内で纏めて無理やり喉奥へ押し込んだ。喉に残るような感覚がしたが、何度も嚥下して胃へと落とす。
…うん、飲めた。
「このっ、馬鹿、大バカ野郎!!俺らはそれを望んでないって!!今すぐ吐き出せらだお!!」
「らだ、らだお、やだよぉしんじゃやだ、」
絶えず繰り返される怒りと悲しみが、あぁこんな俺でも心配してくれる人がいるんだな、と。有難いことだ。俺の代わりなんて幾らでもいるのに。幾らでもいるから、いいのに。
俺は結構、プラシーボ効果みたいなものが効きやすいと思う。だから薬を飲んだ時点で頭がぼんやりする気がするし、ただ出血多量によるものなのかもしれないし、元からこんなだったかもしれない。身体中が痛むのも、体の中心から熱が引いているのに何故か熱かったり、もうわかんないな。
「猫マンゴー、成瀬、」
穏やかな声だった。自分でも、こんな状況でよくのんびりとした面持ちでいられると感心する。名前を呼べばぴたりと抗議の声は止んで、ヘルメットの無いいつもより広い視界で二人を視野に収めた。あぁ、ちょっとぼやけてきたかも。
「さっき言ったでしょ、大丈夫だって。ね、そんなに心配しなくていいよ」
「っんな都合のいい薬なんざ、信じられるか!それに、たとえ蘇生するとしても!お前が、らだおが死ぬ事実は、なんにも変わんねぇだろうが、」
成瀬にしては覇気のない声。珍しいなと思う反面、そうさせているのが自分だということに罪悪感とほんのちょっとの優越感を抱く。確かに一度死にはするけれど。いつものダウンと同じだよ、ちょっと喋らないだけ。
心臓の音がゆっくりになってきた。
座り込んだコンクリートに赤黒い液体が染みて、体の力が抜けてくる。
「らだお、警察を、俺達を、お前が居なきゃ誰が支えんだよ、?らだおがいなきゃ、誰が空の門番に、後輩達の育成に、俺達の話し相手になってくれんだ、」
やだな、沢山いるよ。警察は昔よりもっと強くなって、人も増えて、ずっとずっとやりやすくなった。俺が教えられることももう少ない。それも、他の人から十分与えられるもの。知ってる人も、仲の良い人も、二人ならいっぱいいるでしょ。
重い眠気に襲われ始めて、瞬きも一回一回が長くなる。手足は熱いのに、奥底が冷たくて、そういえば受けた怪我も痛くないな。
「やだぁ、俺やだからな、らだおがいない警察なんて、世界なんて、おれぇ、いる意味ないからなぁ、」
こら、そんなこと言わないの。猫マンゴーは警察に大きく貢献してて、抜けたら困る大事な戦力なんだから。俺の自慢の後輩なんだから。ほら、泣いたら目が腫れちゃうよ。
ふぅ、ふぅ、と呼吸が浅くなって、思考が鈍る。さっきから目の前がホワイトアウトを繰り返して、体がとても寒い。でも、二人がいるから不思議とあたたかく感じるな、なんて。
「… 大丈夫、だいじょうぶだよ、ね、。俺が居なくても、警察は回るし、世界が終わったりしないんだよ、。たくさん優秀な人がいて、俺の穴も、小さいからすぐ埋まるし、」
声にすら力が籠らなくなってきた。普段から声色に抑揚や感情が感じられないと言われるが、今はそれに増している気がする。仕方ないだろう、こればかりはどうにも出来ない。
何か言いたげに口を開いた二人にゆったりと視線を合わせ、なるべく安心させるように笑いかけた。俺より血みどろなんだから、俺の心配よりも、自分のことを心配してよ。
「犯人も、ばかだねぇ、。おれひとりの命で、この街が救われるんなら、このくらい安すぎるのに、なぁ」
はは、と乾いた笑いすらまともに発されない。プツプツと聞こえる音が途切れてきて、まだ二人がなにか叫んでいるのに上手く聞き取れなかった。
大丈夫。大丈夫だよ。そんなに心配しなくても、皆優秀な警察だから。
そう伝えられたかは分からないけれど、もう思い出せるほどの理性は無くて、上手く頭が回らなくて、
ゆっくり、ゆっくりと、心臓の鼓動に合わせて、瞼を閉じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ピッ、と数字が止まった。
その瞬間にあれほど耳障りだったリミットカウント音も止み、爆弾解体を必死に行っていたキャップ、つぼ浦、ミンドリーの手が止まる。周りで最低限の距離を取りつつ見守っていた警察やギャング達が、カウント音が止まったことに解体が成功したのかと顔を見合せ、束の間の喜びを分かち合おうとした。
しかし、ダン!!と机に叩きつけられたペンチにビクリと震える。ミンドリーが思い切り振り下ろしたらしく、灰色の机は少し凹んでいた。しかしそんなことを気にすることも無く、ミンドリーは悔しげに、そして心底泣きそうになんで、と震えた声を漏らした。キャップとつぼ浦も普段と打って変わり静かに工具を置いて、無表情のまま爆弾だったものを見つめている。
「キャ、ップ?止まったんだよな、?それ、」
希望を見出すように恐る恐る尋ねたオルカに、ゆっくりと振り向いたキャップは拳を握り締め、緩慢に首を横へ振った。そうして、なんとか絞り出すように口を開き喉を震わせ。
「我々は、何も……なにも、出来なかった」
そこに大した感情は乗っていない。乗せられなかった、の方が正しい。
キャップの言葉と共に、ミンドリーがすすり泣く。つぼ浦がその傍でハンカチを手渡しているが、その後彼も上を向きギジリと音が鳴るほどその手に力を込めていた。
何も出来なかった。
つまりは、彼らの力で爆弾が止まった訳では無いということ。爆弾を仕掛けたギャングが言うには、仕掛けを止めるには青井らだおの生命活動が停止しなければならないと。それが本当だとすれば、彼らの力及ばず時限爆弾が止まったのは、彼が、
「そん、な、」
泣き叫ぶ者、絶望する者、何も出来なかった自身を攻める者、
1人の警官が亡くなりロスサントスには平和が訪れたが住民の心には治らない傷ができてしまった、そう空の悪魔として雲ひとつない青空を飛び黒市民を白市民と同等に扱いギャンにも警察にも市民にも、たくさんの人に愛されていた人が死んだのだその警察管の名は、
青井らだお 空の悪魔と呼ばれ空を自由に飛び滅多に見せない鬼のヘルメットの下には空のような青色の髪、少し幼さが残る顔
そんな彼は今病院のベットに1人
彼が最後に言った『一回心肺停止した後、なんと蘇生し始めるんだって』と言う言葉を信じて