深夜のメモリア・パーク。
錆びた観覧車の影が揺れ、静寂を切り裂くように回転するコーヒーカップのライトが点灯した。
薄暗い光の中、宮瀬紗季が足を踏み入れる。
「なんで私……?」紗季は震える声で呟いた。
彼女の心は揺れていた。
天音に対する“嫉妬”が、今も胸の奥でくすぶっている。
“あの子ばかり、みんなの注目を集めて…”
コーヒーカップがゆっくり回り始める。
紗季の視界が揺れ、過去の一場面が現れた。
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数か月前の教室。
天音がクラスメイトと笑い合っている。
紗季はそれを遠くから見つめていた。
「あの笑顔、ずるい」
その時、紗季の隣に立つ“赤い人”の姿。
全身血に染まった少女が、紗季の耳元で囁いた。
「嫉妬は影を呼ぶ。影は記憶を食らう」
紗季は震えた。
「やめて…お願い…」
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現実に引き戻された紗季の前に、コーヒーカップの中心から“赤い人”が現れた。
全身真っ赤な血のような液体に覆われ、顔は恐ろしく歪んでいる。
「おまえの影、頂戴…」
紗季は叫びながら走り出す。
“赤い人”は追いかけてくる。
コーヒーカップは狂ったように回り、出口は見えない。
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紗季は必死に考えた。
“嫉妬”は私の影を弱くした。
でも、私にはまだ仲間がいる。
「みんな…助けて!」
彼女の叫びは闇に飲み込まれそうになった。
その時、秋冬の声が遠くから響く。
「紗季!負けるな!」
紗季は振り返り、全力で走った。
“赤い人”の手が届く直前、光が差し込み、“赤い人”は消えた。
紗季は倒れ込む。
だが、彼女の手には、黒い影の欠片が握られていた。
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「助かった……?」
秋冬が駆け寄る。
紗季は震えながら答えた。
「うん…でも、まだ終わってない。あの赤い人…また来るよ」
秋冬は力強くうなずいた。
「俺たちで、絶対に止める」
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だが、影探しは続く。
次に奪われるのは誰か。
それとも――
“本物の天音”は、いったいどこにいるのか。
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