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午前0時29分。
深夜のメモリア・パーク。
赤く照らされた道を進むと、園の中央に現れたのは、巨大な鏡の迷路だった。
壁一面が無数の鏡に覆われ、光がゆらゆらと歪みながら反射する。
「ここが……次の“影探し”の舞台か」
秋冬がつぶやく。
その横で、七瀬大輝がぽつりと口を開く。
「ここ……なんか、イヤな感じがする。誰かに見られてるような……」
「誰か、じゃないよ」
と、紗季が小さな声で言った。
「**“自分自身に見られてる”**の」
皆が黙り込んだその時、迷路の入り口に文字が浮かび上がった。
第五の影探し:二ツ橋大輔
「本当の自分から逃げるな」
――“影の迷宮”に挑め。
「マジかよ、俺かよ……」
大輔は小さく舌打ちをして、迷路へ足を踏み入れた。
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中は、静寂と冷気に満ちていた。
一歩進むごとに、鏡に映る自分が微妙に違って見える。
怒った顔。泣いている顔。血まみれの顔。
「チッ……イライラすんな……」
ふいに、前方に“天音”が現れた。
だが、それは“いつもの天音”ではない。
白い肌、笑顔のまま凍った表情。
まるで蝋人形のようだった。
「大輔くん。私のこと、どう思ってた?」
問いかけと同時に、周囲の鏡が赤く染まり、音が響く。
【問い:天音に対して、二ツ橋大輔の“本音”は?】
A:守りたかった
B:特になかった
C:嫌いだった
「……くそが……」
大輔は唇を噛んだ。
あの日のことが、脳裏に蘇る。
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数ヶ月前の夕暮れ。
部活帰りの大輔と天音。
「大輔くんってさ、強いね」
「……強くなんかねぇよ」
「でも、頼れる感じするよ。誰かを守れるっていうか……」
その言葉に、大輔は返さなかった。
(俺は……あの時、守れなかった)
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迷路の中の選択肢を見つめ、大輔は「A」を選んだ。
すると、天音がうっすらと笑った。
「本当は、そう思ってたんだね」
光が走り、鏡が砕け――その中から、影の欠片が出現した。
「よし……!」
だがその瞬間、何かが背後から大輔の肩をつかむ。
赤い手。
「っ!!」
悲鳴とともに、大輔の姿は霧の中に消えた。
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迷路の外。
秋冬たちは突然の衝撃で立ち上がる。
「大輔が……消えた?」
「いや……“誰?”」
七瀬が顔をしかめる。
「さっきから誰の話してんだ? “大輔”? ……そんなやつ、俺知らねぇぞ」
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記憶が、また一つ消された。
今度は、存在そのものが消されかけている。
秋冬の胸に冷たい汗が流れる。
(これは、影探しなんかじゃない……
天音を“取り戻す”代わりに、誰かが“この世から消えていく”)
そして、迷路の奥で。
血まみれの赤い人が、静かに囁いた。
「影を集めろ。7つ集めれば、“一人だけ”帰れる」
「それ以外は、全員“影になる”」