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居間の灯りがあたたかく広がっていた。
咲は浴衣を脱ぎながら、鏡越しに自分の頬がまだ赤いことに気づいて、慌てて手で覆った。
(……なんでこんなに、ドキドキしてるんだろう)
背後から聞こえる、亮と悠真の笑い声。
楽しそうに話す二人の声を聞いていると、胸の奥が少しだけ切なくなる。
「……お兄ちゃん、先にお風呂入っちゃっていい?」
いつも通りの声を出そうとしたけど、うまく隠せている自信はなかった。
亮が「おう」と返すと、悠真の視線が一瞬こちらに向いた。
その目がやさしく揺れているように見えて、咲は思わず逃げるように洗面所へ向かった。
夏祭りの夜はこうして終わった。
けれど、咲の胸に残った熱は、花火の残光みたいにしばらく消えそうになかった。