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そう考えながらも、どこかで”嫌われる理由”を探してしまっている自分がいる。 そうしないと、今のこの痛みがただの理不尽でしかなくなってしまうから。
理不尽、って怖い。
でも理不尽に耐えられない自分が、もっと怖い。
そのとき、教室の中でチャイムが鳴った。
ホームルームの時間が始まる合図。
先生が入ってきたけれど、誰も背中の羽を引っ張ったことには触れなかった。
誰も、上履きの画鋲のことを言わない。
机の落書きも、無視されて、教室の空気に埋もれていく。
僕はただ、そこに座っている。傷ついた羽を引きずりながら。
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放課後。
何かの音が遠くで響いているのに気づくと、気がつけば空は赤く染まっていた。いつの間にか、教室にはもう誰もいなくなっていた。静けさの中で、僕はただひとり、教室に残っている。
僕の羽が、風に揺れる。まだ痛みは残っているけれど、温かな風がその痛みを包み込んでくれているような気がした。
「…帰るか。」
ぼんやりと呟いて、立ち上がった。
下駄箱へ向かう途中、ふと廊下の端に何かが落ちているのが見えた。
小さな紙切れ。それは、古びたチケットのようだった。
『このチケットを使うと、過去の一週間をもう一度やり直すことができます。
ですが使うかどうかは、あなたの自由です。』
___ そんな文字が書かれていた。
不意に、胸がドキリとした。手に取った瞬間、空気が少し変わったような気がした。
そのチケットは、確かに”本物”だと、なぜか直感でわかった。
「…やり直す、の?」
心の中で、何かが揺れるのを感じた。
この一週間を、もう一度 __?
またあの教室に行って、また羽を引っ張られて、また無視されて、机に落書きされて。
それでも。
もし、もう一度やり直せるなら、ほんの少しだけ、何かを変えられるかもしれない。
誰かとちゃんと話すこと。
誰かに「助けて」って言ってみること。
あるいは、自分の羽を、「変じゃない」って思えるようになること。
怖い。でも __
少しだけ、ほんの少しだけ、光が見えた気がした。
僕は、チケットをポケットにしまった。
そして、そっと自分の羽を抱きしめる。
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