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……また、目が覚める
「…………………」
馬鹿だ
本当に大馬鹿だ
彼を守るなどと息巻いていたクセに、自分のことを蔑ろにしたせいで彼を置いていってしまった
…置いてかれる気持ちは、自分だって知っているのに
「ハンス……」
置いてかれた彼は、あの後どうなってしまったのだろうか
逃げることが出来た…?
いや、あの時のハンスが逃げるとも思えない
誰かに助けを呼んだ…?
いや、あの時のハンスが…
…なら……
「…ぅ……ぅう”…… 」
嗚咽が漏れる
涙が溢れる
足に力が入らなくなり、その場にしゃがみ込んでしまい…
「ごめん……ごめんなさい………」
その場で泣き出してしまう
…最初、彼が『O-04-72』に殺された時、きっとそれは夢だと思っていた
…だから、実感が無かったんだ
けど、それは全て現実で────
「ごめんなさい…………」
21日目
……何故私だけが記憶を引き継げられるのだろうか
周りの職員、セフィラ、そしてハンスにもない、私だけの何か
……旧L社の特異点
思い出したくも無いが、それに飲み込まれた時に…私が意識を失う直前に…
『───?! 何か…あたまに……はぃっ…て…』
私は頭を手を添える
あれは…旧L社の特異点は今、私の”中”に居るのだろうか
旧L社、そして現在のL社はどちらもエネルギー会社である
それならば、あの旧L社の特異点はアブノーマリティのようなエネルギーを生産するモノ…もしくはエネルギー体そのものと仮定する
そして…この現在のL社で起きているこの巻き戻し……
これがエネルギーであるケンファリンを生み出す為の一環だとするならば…私が影響を受けていないのは旧L社のエネルギーによる影響だろうか
…それならば、Aが影響の受けない私を入社させた理由は何なのだろうか………
今回もまた、メインルームで待ち続ける
…今回こそ
(……いつまで守り続ければいいの?
今は繰り返し始めから21日目、
今日を守り抜いたとしても勿論明日も明後日も続いてく……
…………私は、
「スミレ?」
急に両肩に手を置かれ、思考が途切れる
目の前には驚愕の表情をした彼
…そして、その瞳には涙
今までは必死でよく見たことは無かったが、その瞳には私との再開を信じられずとも安堵しているようだった
「…スミレなのか……?」
私がコクリと頷くと、彼はすぐさま私を抱き締めた
私は彼が満足するまで背中を撫で続けた
(まぁ…どうでもいっか
そんなこと。)
彼を守る事には何も変わらない
それならばいつまでも守り続けるだけだ
何も変わらない
…ただ、今はこの暖かさを噛み締めていたい
30日目
…殆ど何も起こらなかった
明らかに一、二回目より脱走も少なく、それに伴い殉職する職員もかなり少なくなっていた
ハンスも私…なんなら私以上に強くなっている
私は防具、武器E.G.O.共に『笑顔』、
ハンスは防具に『ラブ』、武器E.G.O.に『ダ・カーポ』を装備している
…正直ハンスには後ろから遠距離E.G.O.を使って欲しいのだけれど…
………それに、もっと何というか…人に見せられるような見た目の装備が良かった
ハンスがかなり強くなったことで、私は多少安心している
これまでもハンスと共に幾多ものアブノーマリティを鎮圧してきた
勿論油断したことも目を離したこともないが、それでもハンスは一人で生きていけるほど強力な職員となっていた
「次の作業は?」
「あぁ、次は…『F-01-37《雪の女王》』だと」
「今日入ってきた奴ね」
…それでも、絶対に油断はしない
私は彼の収容室の前で待っていた
…が、彼が収容室から出て来ないまま私に作業指示が入る
心臓が張り裂けそうな気持ちのまま、収容室へ入る
…そこには氷漬けにされているハンス
目の前のアブノーマリティはただ佇み、私の眼前にある氷の剣に視線を向けていた
…私は剣を引き抜き、突き出す
やっぱり、私が守ってあげなきゃ
そして───
49日目
私達はメインルームで待機していた
両頬にお揃いの氷塊が光る
珍しく今日は作業指示が入らず、正直暇な状態だった
ハンスが口を開く
「あの…スミレ」
「…?」
何故か言い淀むハンス
私は疑問を持ちつつも、ハンスの目を見て待ち続ける
「俺ら…今までで付き合い長いだろ?」
「うん。」
「それに…此処じゃいつ話せなくなるかわからないだろ?」
「…うん。」
「……あー……要するに……」
ハンスは一度大きく息を吸い、ゆっくりと吐く
やがて
「……俺と、ずっと一緒に居てくれないか? 」
長い、長い沈黙が過ぎる
そして私は
「…………………へ」
と、声が漏れる
全く想像出来なかった言葉に顔が熱くなる
心臓の鼓動が五月蠅い
ハンスの視線が真っ直ぐ私を突き刺し、私の 視線を何所に置けばいいのか分からない
「…あ…あぅ…え…と…」
頭の中がいっぱいになるような、真っ白になるような感覚で言葉が纏まらない
……一度、瞳を閉じて大きく深呼吸をする
ゆっくり瞼を上げ、また目が合う
……勇気を出し、答えを出す
「………よろしくお願いします…」
直後、耳が劈くような警報音が鳴り響く
私達は少し反応に遅れつつ、互いに背を合わせ、警戒する
初めての現象に驚愕しつつも、この空間を邪魔されたことに憤りを感じる
(……落ち着いて、今は守ることだけ考えて…)
<!光の種 シナリオエラー!>
(……光の種シナリオ…?)
<!光の種 シナリオ 再起動!>