師範に買い物を頼まれ町へと出ていた。二年会えなかった若君の姿が見えると人々は皆町へと姿を現した
「阿軒!」
「志強」
志強は僕の親友だ。幼い 頃から一生を共にしていた。志強は僕より一年早く修行へと出掛けていた
「俺は経ったの三ヶ月で新たな剣術を使えるようになった。阿軒は何が出来るようになった? 」
「僕は…一つだけ」
「二年も通っているのに一つだけ?お前の師匠と言う者はとんだ詐欺師だな!」
「そんな程度ならとっくに俺は違うとこへ通うよ!」
「そうだ」と言わんばかりに町の人は志強が言う事に深く頷きをしていた。「何の剣術だ?」と聞かれて普通は一番最初に習う筈の剣術を応えた。それがどんなに恥ずかしい事なのか僕には分からないから、たんたんと応えてしまった
「どんな師匠だ!俺に教えてみろよ」
僕は言葉を詰まらせた。
町からは笑う声や心配の声が聞こえてきた。師範を酷く馬鹿にされるのがとても嫌だった
「志強。」
「ん?」
「師範を悪く言うのは辞めろ。元はと言えば師範のアドバイスを生かせない僕が悪い。責めるなら僕にしろよ」
「…いや、阿軒、違うんだよ、俺はただ、」
「そんな気遣い、僕は嬉しくないよ。」
僕がそう言い微笑むと焦るように志強は 言葉を並べた。町の人々はそれを心配そうに見詰めていた
「俺の師匠の元に来れば阿軒は必ず強くなれる、きっと求める物をくれるよ」
「阿軒、強くなりたいんだろう…?毎日、言ってたじゃん」
「それに師匠は_」
志強の肩に手を置いて僕は突き付けるように言葉を言った
「僕は其を求めないし、きっと師範も其を求めない。」
「今は強くなるよりも師範に認めて貰いたいんだ」
「阿軒…… 」
「志強、君の師匠に認められても僕は一つも嬉しくない」
絶望するような顔をする志強を前に僕は、微笑んだ