目が覚めると、最初に見たのは知らない和風建築の天井だった。
驚いた俺は勢い良く体を起こし、手をグーパーしながら夢じゃない事を実感しながら、丁寧に自分に掛けられている布団に手を置いてキュッと雪の様に真っ白な布団を握っていると、気が付くと布団には皺が着いていた。
辺りを見渡すと、目の前には綺麗に手入れされている庭園に、俺は無意識に近づいていた。ハッとすると、そこには艶やかな黒髪で優しく微笑む自分と同い年くらいの年齢をした少年が居た。
「だ、誰だ!」
俺は自分の人差し指を少年の目の前に突き出して、少し距離を離した。
「あっ、否・・・すみません。驚かせるつもりではなかったんですが・・。」
俺の反応に目を見開いて先程の笑みとは打って変わった困った様な表情で見つめて来る少年のまるで吸い込まれてしまいそうな黒い瞳に、俺は釘付けになっていた。
◇◆◇◆
「私は本田 菊と申します。」
と言って、彼は律儀にお辞儀をすると、彼の耳に掛かっていた髪の毛がサラリと落ち、彼が顔を上げると、落ちて来た髪を細い指で耳に掛けると、彼はまた聖母の様に優しく微笑んで、見た目に反するテノールの声で俺に問い掛けた。
「貴方の名前は何でしょうか?」
「お、俺は・・アーサー・カークランドだ。」
緊張している俺を見兼ねての行動なのか、彼は「とても素敵な名前ですね!」
と無邪気な笑みを浮かべながら言う彼・・否、菊に俺は今まで触れられた事の無い部分を優しく撫でられているかの様な感覚に、俺は少しドキッとした。
「そ、そうか?別に普通の名だぞ・・け、決して照れてる訳じゃないからな!」
そう言って菊の目の前に指を指し、早口で捲し立てるアーサーを「あら、そうでしょうか?」と言い、袖で口元を隠しながらふふっと柔らかい笑顔をして、菊はアーサーの翠の瞳をじっと見つめた。
◇◆◇◆
「・・おーい、何見てんだよ爺」
機嫌が悪そうに言うアーサーに、態とらしく大きな溜息を吐いて応えた椿は、組んでいた足をサッと下ろすと、立っているアーサーの顔をジッと見上げた。
「はぁ、何か御用でしょうか」
「用は特に無いが、ただお前が見た事のない笑みをしていたからな。お前があんな笑みをするだなんてどんな物かと思えば。」
そう言いながら菊達を目で追い掛け、2人が楽しそうに笑っているのを見たアーサーは、ふっと鼻で笑うと、椿に向かって、「仲良くなれて良かったな。」とそう呟き、返事も聞かずにアーサーはその場から離れた。
「何なんですかね、あの人・・・」
fin.
コメント
2件
めちゃくちゃ最高です…😭 ツンデレ英帝良すぎて…神作品ありがとうございます🫶💕