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トモエはあまりに意外な話を聞かされて、数秒ぼうっとしてしまった。やがて頭を手で掻きながらヒミコに質問を続けた。
「じゃ、じゃあ、その白拍子という芸能集団って言うのかな? それが現代まで続いている?」
ヒミコは小さく首を横に振った。
「今でも京都には、白拍子の芸能を披露する人たちはいてはる。人数は数えるほどやろうけどな。ただ、その人たちは平安時代の白拍子の直接の継承者いうわけやない。当時の記録から白拍子の芸を再現してるだけや。芸人としての白拍子は、室町時代に入ってから衰退して、少なくとも歴史の表舞台からは消えてしもうた」
「どうしてなくなったんですか?」
「時代の流れやな。鎌倉時代になって政治の実権は武士が握るようになった。京都の朝廷や貴族も贅沢な暮らしはできんようになった。白拍子の出番も徐々になくなったちゅうとこやろ」
「じゃどうしてヒミコさんたち、蔭(おん)の白拍子は残っているんですか?」
「朝廷が実権をなくしたちゅうても、完全に無力になったわけやない。鎌倉幕府から室町幕府、それから戦国時代の乱世、江戸幕府へと時代が変わる動乱期には、朝廷とお公家さんたちがけっこう裏で暗躍しとったんでっせ。ハニートラップで秘密を盗み出して、命じられたら暗殺もやる裏の世界の女の需要だけは、引き続きあったわけや」
「あたし、そういう裏の仕事って忍者がやるものだとばかり思ってました」
「まあ、間違いやない。戦国時代になると、諜報活動は忍者に取って代わられた。けど、それは武家政権の話。京都の朝廷やお公家さんたちは、忍者を召し抱えるわけにはいかんし、直接荒事に手を染めるわけにもいかん。ハニートラップの専門家である蔭(おん)の白拍子は変わらず必要とされた」
「あ! だからヒミコさんたちの表の職業は芸能事務所なんですか?」
「そういう事や。でもって、この秋葉原の町には、インディーズアイドルとか地下アイドルとか言われとる、芸能人志望の若い女子(おなご)はんが大勢活動してますやろ? その中に紛れとれば目立たんですむ。木を隠すなら森の中、いうやつや」
「だから地下アイドル派遣事務所……」
ヒミコは天井を見つめて言った。
「この秋葉原の町で、インディーズアイドルやっとる人らとか、派手な格好でメイドカフェで働いてパフォーマンスしとる人らとか、あの若い女子(おなご)はんたちは、言うなれば現代の白拍子と言えるかもしれんな」
コメント
1件
第19話読み終えたよー!😭✨ 白拍子の歴史、めっちゃ深いな…。表舞台から消えても、裏で生き続けてる組織の設定がカッコよすぎる…!特に「木を隠すなら森の中」で地下アイドルに紛れてるって発想、天才かよ…!現代の白拍子っていう考え方にエモさ爆発した💕 トモエの驚きつつも納得してく様子が伝わってきて、世界観がどんどん広がってく感じがたまらんね!!