テラーノベル
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明日、世界は終わるらしい。
「…さぁ、どうなんだろうね」
そんな話題を持ちかけてきた若井に対して
少し曖昧にそう答えた。
「でもみんな信じてるよね、…ほら、街とかすげー賑わってる」
彼の言うように窓から街を見下ろすと、
いつもの何倍もの人々が街を行き来していた。
街の人たちはきっと、最後の日ぐらいは
ちょっと特別に過ごそう、
そんなふうに思っているのだろう。
だけど、俺たちはいつも通り仕事だし、
いつも通りの日々を送っていた。
「いつもは平日だから人もそこそこじゃん?
…本当に世界は終わるのかな?」
少し不安そうな寂しそうな目をする君に
俺は言った。
「終わんないよ」
だよね、と若井は笑ってから
席を立ってスタジオに戻ってしまった。
もしも本当に世界が終わるなら、
俺は何をしよう。
欲しかったものを全部買う?
やりたかったこと全部しちゃう?
「そんなものないや、笑」
欲しいもの、やりたいこと。
真剣に考えても出てこない。
お金は使うのに困る程に手元にある。
だから欲しいものだなんて
全部もってるのであろう。
でもね、俺にはどうしても買えない
“欲しいもの”がある。
それはお金じゃ買えなくて、
愛で買えるのかもしれない。
それは「欲しい」って言葉には
当てはまらない気がして、
「そばにいて欲しい」って言う方が
当てはまるのかもしれない。
家に帰ったのは大体23時くらいだったかな。
暗い部屋にただ1人の時間。
「…あと1時間」
あと1時間で世界は終わる。
特にしたいことなんて思いつかなかったけど、
なんだか後悔が残る気がした。
テーブルに置いたスマホを手に取り、
メッセージアプリを開く。
そして直ぐに彼とのトーグ画面を開き、
慣れたようにキーボードを打つ。
「…送っちゃえ」
送信ボタンを押すと、
トーク画面には1件のメールが映し出される。
『好きだよ』
世界が終わる1時間前にこんなこと言ったら
さすがにキモイかな?
でもいいや。どうせ今日で終わることだし。
数分後、いつの間にかそのメッセージには
既読が着いていた。
『ありがとう』
それからすぐについた返信。
いや、気持ちに答えて欲しいんだよ。
『いや、もっとなんかあるでしょ笑』
『好きって言われたら嬉しいじゃん』
他愛もない会話を続けるうちに、
いつの間にか話題は変わっていく。
『ねえ、もし俺が若井のことを恋愛的に好きって言ったらさ、若井はどうするの?』
既読はつくも、すぐに返信が来ない。
数分後、若井からようやく返信が来た。
『明日答えるね』
「…明日じゃわかんないじゃんかッ、笑」
曖昧にはぐらかされたその答えは
歯痒いほど気になりはしなかった。
だってきっと答えは聞けないからね。
「…明日が来てくれないかなぁ、」
世界が終わる1時間前に
こんなことを思うのはきっと俺だけだ。
明日が来ますように。
それだけ心の中で思いながら、
俺は目を瞑った。
少し駄作…
最近、大地震がくるみたいな
予言がありますよね。
それで思いついたお話でした。
本当に終わるのか分からないけど、
ちょっとだけ心配、みたいな。笑
思いを伝えるのは
少しだけロマンチックなお話。
ただただ片思い、それでもいいですよね😌
明日、若井さんはなんて答えるのでしょうか。
コメント
2件
うわぁぁぁまじで天才です!✨ 「明日答えるね」になんだかしんみりしました…