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しかし、こんなものは序章に過ぎなかった──
その日のインターホンは、破滅へと向かうカウントダウンの最初の鐘の音だったのだと
俺たちはまだ知る由もなかった。
◆◇◆◇
ある日の夜
今日も今日とて酒とタバコに明け抜けていた俺たち。
部屋の空気は紫煙で白く霞み、テーブルの上には乱雑に空き缶が転がっている。
「ぷは~~っ、やっぱり仕事終わりに飲む酒は最高だな。これさえあれば明日からの仕事も乗り切れるわ」
「そりゃよかった、俺のタバコ代が減ったら嫌だからねぇ」
「ヒモの分際で俺のこと金扱いすんなし」
そんなことを話している間に、テーブルの上に置いてあった缶ビールはいつの間にか空になっていた。
最後の一滴まで喉に流し込み、スチール缶をテーブルに置くと、カランと虚しい音が響く。
時計を見ると、そろそろ深夜2時を回ろうとしていた。
深夜特有のどんよりとした静寂が、部屋の隅からじわじわと広がってくる。
「もう空かよ…しゃーない。コンビニ行ってくるわ」
そう呟いて立ち上がると、颯太も同様だった。
重い腰を上げ、ポケットの小銭を確認する俺の隣で、あいつもまたけだるげに身を起こす。
「んじゃ俺も行くー、タバコもう切れそうだし」
「そうとなりゃ、さっさと行ってこようぜ」
◆◇◆◇
アパートを出ると、梅雨の匂いが鼻をついた。
ねっとりとした雨の予感が漂う夜気が、容赦なく全身を包み込む。
湿った空気が肌にまとわりつき、微かに生温い風が吹いている。
「うわっ、寒くね?」
俺が肩をすくめると、颯太が俺の腕を引き寄せた。
躊躇なく伸ばされたあいつの手が、俺の衣服越しに二の腕を強く引き寄せる。
「こうしたら少しは暖かいんじゃない?」
「それはそれでキモイ」
「えー、照れてるあきら可愛いー」
「照れてねぇよアホ」
しょうもないやり取りをしているうちに、コンビニに着いた。
いつもの見慣れた白い光が見えてくると、どこかホッとしたような気持ちになる。
店内に入ると、エアコンの冷気が肌を撫でる。
湿気を含んだ外気から一転して、人工的に冷やされた空間。
その爽快感に一瞬酔いしれた。
俺は買い物カゴを手にすると
特につまみやお菓子に目を奪われることなく
多種多様なビールが収納されている冷蔵の棚に手を伸ばした。
ガラス扉を開けると、冷気と共にアルコールの匂いが漂ってくるような気がした。
「これとこれと……あ、これ気になってたやつだ」
気が付けば、缶ビールが8本もカゴの中でキラキラと輝き転がっていた。
アルミのボディが店内の蛍光灯を反射して、妙に眩しく見える。
これが俺の唯一の楽しみなのだから仕方がないだろう。
日々のストレスや不安をすべて洗い流してくれる魔法の液体だ。
それからレジに向かい、颯太のタバコと一緒に会計を終えて店を出た。
にょーん
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猫塚ルイ

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