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「京介ーー」
僕は京介の後ろ姿を見つけるとそのまま背中を叩いた。
「わっ、え、あぁぁ!」
「あ、、」
「はみ出た、、」
「ごめん!!」
僕は両手を合わせて謝った。
「いや、大丈夫」
京介はそう言っていたが、顔が全然大丈夫そうじゃない。
「スミマセン、、」
「ん。で、なんかあったのか?」
京介は手を動かしながら聞いてきた。
「特に何も」
ある事はあったがあれを言う訳にはいかない。
、、僕は何しに来たんだ、
本当に京介には特に用はない。叩いたのはなんとなくだ
「どう、終わりそ?」
僕は話を変えようと思い、そう言った。
「さっきの無かったら完成だったけど」
…失敗した。
「ごめん、」
「だからいいって。もうすぐ終わるからちょっと待ってて」
京介は軽く笑った。
その日は京介と一緒に帰った。2人で歩きながら文化祭の話をした。
皆いい店にしようと張り切っているらしい。僕が教室に居ない間何をしていたか聞かれたが、適当に誤魔化した。
「ゆき」
「なに?」
「、、いや、何でもない」
京介は何か言おうとしたみたいだが、また明日な、と言い去って行った。
京介は何を言おうとしたんだろう。さっきの嘘がバレた、とか?
もしかして、、いや、それはないか。
翌日も、同じく文化祭準備だった。みんな忙しそうにしている。今日こそ仕事を見つけようと思ったが、クラスの実行委員が優秀なのか空いてる仕事はなかった。
ーー去年はまだする事あったのにな、、板で作った壁に絵を描くとか。
「及川ってめちゃくちゃ不器用なんだな、、」
しかめっ面でそう言われるのは良くある事だ。
今日も言われたし。
「ゆきは何もしなくていい。というか、何もしないでくれ、」
京介にさっきそう言われた。それは流石にちょっと傷つく。
、、何で僕ってこんなに何も出来ないんだろう。お母さんはめちゃくちゃ器用なのに。
今更ながら無力感を感じた。
暇だ。僕は教室を出た。自動販売機で紙パックのりんごジュースを買い、その場で飲んだ。
「あ!ゆき先輩!!」
元気な声が聞こえたと思うと、元気そうな顔が見えた。名前、なんだっけ。
「休憩ですか?」
「んー、まあ。そうだ、何か奢るよ、この前の傘のお礼」
風邪ひいて傘返せなかったし。
「傘、?あー!そんな前の事覚えてたんすか!」
確かに、結構前かも。
「じゃあ、お言葉に甘えて!」
彼はニコニコしながら言った。愛想が良いってこんな感じなんだろうな。
「どれがい?」
「先輩と同じやつで」
僕は自動販売機にお金を入れ、りんごジュースのボタンを押した。何故かその様子をじっと見られていた。少し気まずさを感じながら僕はジュースを手渡した。
「あざす!」
そう言って嬉しそうに受け取った。
「えっとごめん、名前、、」
「え、忘れたんすか!?瀬尾!瀬尾湊っすよ!」
そうだ瀬尾だ。セオミナト、フルネームは初めて聞いた。
「瀬尾くんか!ごめん、」
「、全然良いっすよ!、そうだ、この前の返事聞かせて欲しいっす!!」
この前の返事、、あぁ、好きなタイプだっけ。
「ええっと、」
瀬尾はあの時と同じようにキラキラな目を向けて来た。
好き、か。考えていると、色んな顔が浮かぶ。
色々考え、僕は1つに絞り出した。
「一緒に居て楽しい人、かな」
結局はそうなのかもしれない。
「……」
瀬尾は何か考えている様子で黙り込んだ。なんだからしくない。
「、、やっぱり、」
瀬尾はボソッと声を漏らした。
「瀬尾くん?」
「あ、なんでもないっす!へぇそっか!!なんか意外っすね、、でも分かる気がするっす!」
なんか適当に取り繕った感があるが気にしないでおくか。
「そっか。瀬尾くんは?」
僕は軽く聞いてみた。
だけだったのに、瀬尾は顔から笑顔を消した。
「……?」
聞いちゃダメだったようだ。
「ごめ、やっぱ答えなくても」
「いや、良いっす。俺は、、優しくてかっこ良い人、ですかね」
瀬尾くんは真剣な顔をして僕を見ていた。優しくてかっこいいなんて、誰でもいいそうな感じだ。あれ、かっこいいって、ボーイッシュ女子とか?
「なんか意外だ、、そうなんだ」
僕は考えて笑ってしまった。
「なんか、勘違いしてるみたいっすけど、俺が好きなのは男です」
「え、男?」
「今の時代性別なんて関係ないじゃないですか」
、メグの姿が浮かんできた。
「そうだったんだ、それもそれで意外かも、、」
瀬尾くんはまた黙り込んでしまった。やっぱ聞き返さなきゃ良かったかもしれない。
「……先輩は京介先輩の事どう思ってるんですか?」
瀬尾が急に口を開いたと思ったらそんな事を聞いてきた。
なんでここで京介が出てくるんだろう。
「どう思ってるって、、友達だけど、?」
僕の本心を探るように瀬尾の目が僕の目を見つめていた。
「なら良かった。ゆき先輩に頼みがあるんすけど、、」
瀬尾くんは真剣な顔つきで話し始めた。
、、どうしたら良いんだろ。
「京介先輩と距離を置いてくれないっすか?」と言う瀬尾の言葉が頭から離れない。距離を置くって何だ。僕と京介ってそんなに近いように見えるのだろうか。、、瀬尾の頼みを聞いてしまったから距離を置くしかないか。というか何で瀬尾は僕にこんな事頼んだんだろ。
「及川」
そんな声が聞こえたが、僕は聞こえないふりをして歩いた。
「おい」
木村に手を掴まれた。
「行くぞ」
「えぇ……」
僕は半分木村に引っ張られつつ第2準備室連れていかれた。
ーーまた、そういう事するんだろうな、。
そう考えながらも、京介の事が頭をよぎった。