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「もう…どこも痛くない?」


耳から首筋へと唇を這わせながら聞いてくる颯ちゃんの手は、部屋着の長袖Tシャツの中でお腹を撫でたあと、ブラの上から軽く胸を揉む。

今日の下着…日曜日と同じ白だと気づき、薄いピンクにすれば良かったか……と一瞬思った。


そこで目の前のスマホが鳴り二人でビクッ……とする。

鳴ったのは私のスマホでお父さんからだった。

すぐにTシャツから手を出し、応答をタップした颯ちゃんは


「あとで俺も」


と、私にこそっと告げてスピーカーにした。


「はい、お父さん?」

‘良子、元気だって?’

「うん、元気」

‘東京で頑張っているんだな。忠志には会ったか?’

「うん…」


そう言えば、お母さんにはその事を言う間もなかったな…聞かれもしなかったし。

お父さんには、チカさんと偶然出会った話からお兄ちゃんに会った話をした。


‘そうだったか。縁があったってことだな’

「そうだね…事後報告で……ごめん」

‘良子の気持ちを考えると…いくら考えても100%わかってやれないかもしれないが、謝ることではない。ゆっくり一歩ずつだろ?仕事や家事の日常生活をしながらゆっくり進んでいると感じているよ。そのゴールがここでなくてもいいから’

「…お父さん……」

‘人生の転機だったと思えば…自分に合ったところへ飛び出すチャンスだったと思えば……東京でしっかり働けて、生活できてることを喜ばないと’


お父さんは、とても穏やかに私を安心させるかのように言葉を選びながら言ってくれた。


「もしもし、俺…颯佑」

‘ああ、驚いたよ。東京まで行ってくれてるんだね’

「リョウに会いたいから」

‘ありがたいが…父親としては複雑ではあるな’

「大切にすると約束する」

‘知らない人に突然言われるよりも信頼できていいんだが…’

「娘を取られた気分?」

‘おいおい、颯佑くんに言われるのはおかしいだろ?’


二人は声を上げて笑っている。


‘颯佑くん’

「はい」

‘良子を頼む…今は…親の出番ではないようだから’

「任せて。リョウからも今まで通り連絡するだろうし、俺もリョウの様子をおっちゃんたちに伝えに行く」

‘頼むな’

「でさ、顔見て言おうと思ってたんだけど」

‘何?’

「まだ具体的に決まったわけじゃないけど、リョウと一緒に住みたいと思ってる。もちろん今後ずっと、じいちゃんになっても。許してくれる?」

‘親にプロポーズしているようだな…真っ直ぐで…真っ直ぐだから子どもの頃、友達とよくケンカしてた颯佑くんのままだな’

「ケンカは…してたけど、言わないでくれよ」

‘高校生の時のケンカは、こっちがヒヤヒヤしてたよ……間宮さんと一緒に’

「…ああ…悪い時があったことは否定できない」

‘…良子がいいようにしてやってくれるか?’

「約束する」

‘良子’

「はい」

‘颯佑くんにちゃんと言いたいことは言える?’

「言える。颯ちゃんは私の嫌なことはしないよ」

‘じゃあ大丈夫だな。忠志とも連絡取って、自分の居心地よい環境を自分で作り上げなさい。今の環境を整えてくれた三岡先生には感謝しつつ、今後は自分が選んでな’

「うん、わかった。何か決めたら連絡する…お父さんに電話するよ」

‘それで構わない。お母さんもちゃんとわかっているから’

「…ありがとうね、お父さん……」

良い子の良子さん

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