テラーノベル
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少し喧嘩した後、楽屋の空気が重いままだった。
仁人はソファの端に座って膝を抱え、視線を床に落としている。
勇斗は仁人の隣に腰を下ろして、
静かに手を伸ばした。
仁人の髪に触れようとした瞬間——
パシッ!
仁人が反射的に勇斗の手を強く叩き落とした。
音が楽屋に響いて、
二人の間に沈黙が落ちる。
仁人の手が震えていた。
自分でもびっくりしたみたいに、
叩いた自分の手のひらを見つめて、
すぐに顔を上げた。
仁人の目が大きく見開かれ、
唇が震える。
絶望したような、
自分を信じられないような顔で、
勇斗を見る。
仁人「……ごめん……」
声が掠れて、
ほとんど息に近い。
仁人「……ごめん……
俺……
今……
叩いちゃった……
ごめん……
勇斗……
ごめん……」
仁人の目から涙がぽろっと落ちて、
膝の上に染みを作る。
震える手で自分の手のひらを押さえて、
顔を伏せる。
仁人「……俺……
最低だ……
勇斗の手……
叩くなんて……
ごめん……
ほんとに……ごめん……」
勇斗は叩かれた手を軽く押さえながら、
仁人の顔をじっと見つめていた。
勇斗「……あーあ」
小さなため息混じりの声。
勇斗は少しだけ目を細めて、
仁人の顔を覗き込む。
勇斗「そんなことしちゃうんだ、仁人」
仁人の肩がビクッと震える。
勇斗「俺の手、叩くなんて……
初めてだな」
仁人「……ごめん……
俺……
嫌じゃなかったのに……
喧嘩したばっかりで……
頭に血が上って……
ごめん……
ほんとに……
許して……」
涙が止まらなくて、
仁人は膝に顔を埋めて、
肩を震わせる。
勇斗は仁人の隣に座り直して、
ゆっくり手を伸ばす。
今度は仁人の髪じゃなく、
肩にそっと置く。
勇斗「大丈夫だよ」
仁人「……許してくれる……?」
勇斗「許すも何も……
仁人が叩きたかったなら、
叩かれてもいいよ」
仁人「……そんなわけ……
ないだろ……
俺……
最低なのに……」
勇斗は仁人の肩を抱き寄せて、
頭を自分の肩に預けさせる。
勇斗「最低なのは俺の方だろ。
仁人を怒らせて、
そんな顔させるなんて」
仁人「……勇斗……」
仁人は勇斗の胸に顔を押し付けて、
小さく嗚咽を漏らす。
仁人「……ごめん……
ほんとに……ごめん……
俺……
勇斗のこと……
嫌いになんて……
なってない……
大好きだから……
だから……
叩いちゃって……
ごめん……」
勇斗は仁人の髪を優しく撫でて、
耳元で囁く。
勇斗「分かってる。
俺も仁人のこと大好きだから、
叩かれたくらいで嫌いにならないよ」
仁人「……うん……」
仁人は勇斗の胸に顔を埋めたまま、
涙を拭う。
仁人「……もう……
叩かない……
約束する……」
勇斗は仁人の額に軽くキスをして、
優しく微笑む。
勇斗「約束破ったら、
今度は俺がお仕置きするからな」
仁人「……バカ……」
仁人は顔を真っ赤にして、
勇斗の胸に拳を軽く押し当てる。
仁人「……でも……
お仕置きなら……
許す……」
勇斗は笑って、
仁人の手を握る。
勇斗「じゃあ、
喧嘩の続きはまた今度な」
仁人「……うん……
今は……
このままで……
いい……」
二人はそのまま、
楽屋のソファで抱き合っていた。
仁人の涙は止まって、
代わりに小さな笑みが浮かぶ。
仁人「……勇斗の手……
叩いて……
ごめんね……」
勇斗「いいよ。
仁人の手なら、
いつでも叩かれてもいい」
仁人「……バカ……」
でもその声は、
どこか甘えた響きが入っていた。
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