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翌日。教室。
匠海はいつも通り、笑顔で仕事をこなしていた。
だが京介にだけは、目を合わせようとしない。
「……っ」
京介は胸がぎゅっと締めつけられる。
(避けられてる……いや、俺が拒絶したんだから、当たり前か……)
噂好きのクラスメイトがまたひそひそ。
「ねぇ、最近藤牧くんと会長、一緒にいなくない?」
「ケンカでもしたのかな」
京介は机に突っ伏して、低くつぶやいた。
「……うっせーよ」
夜。部活帰り、校舎裏に腰を下ろす京介。
秋の風が冷たいのに、胸の奥は熱くて苦しい。
「……俺、何やってんだよ」
匠海の真剣な表情。
「俺は弟以上に見てる」――その言葉が、頭から離れない。
「……バカだろ、あいつ」
そう吐き捨てても、頬が熱くなる。
「……俺は、なんで泣きそうなんだよ……」
声が震えて、自分でも情けなくなる。
京介は唇を噛みしめ、ただ夜空を見上げた。
まだ自分の気持ちが分からないまま。
生徒会室。匠海は実行委員たちに的確に指示を飛ばしていた。
「ここの動線は狭すぎる。机の配置、もう一回見直してや」
「ポスターは京介に頼めるか? 字が綺麗やから助かるねん」
名前を呼ばれて、京介は一瞬ビクリと肩を揺らす。
(……久しぶりに、俺の名前呼んだ)
だけど匠海の表情は真剣そのもの。
「……はいよ」
京介はぶっきらぼうに返事をし、資料を受け取る。
その後も打ち合わせは順調に進むが――二人の間にはどこかぎこちない空気が流れていた。
準備が進むにつれ、匠海はクラスメイトや委員たちと笑顔で会話していた。
「会長ってホント頼りになるよね」
「さすがやわ、尾崎」
その姿を見ているうちに、京介の胸がざわついていく。
(……なんだよ。俺にはあんな顔、見せねぇくせに)
放課後、合唱部の仲間が声をかける。
「藤牧、顔赤いぞ? 疲れてんのか?」
「……別に」
京介はつい尖った声を出してしまう。