🧹 過去と菓子屋
まだ、コアと出会う前だったころのこと、、セレネは一人で散歩していました。気分転換とおやつを買いに。
今日行く店は50年前に開店した菓子屋の「ラ・ラ」 そこに最後に行ったのは二年前。久々に店の主人夫婦に会いに行く意味も含めて。
そしてほうきに乗って数十分。菓子屋ラ・ラに到着しました。頭の中には美味しいお菓子がちらついています。そのお菓子をちらつかせながら店の中に入りました。「こんにちは!グランさん、アマンダさん!」セレネはにっこにこで笑顔が止まりません。二年ぶりにあえたことがよほど嬉しかったようです。顔を火照られ、満面の笑みを浮かべます。と、ここでアマンダがセレネの周りをざっと見回して言いました。「セレネちゃん。パートナーは?」
セレネは「あの、あたし、まだパートナーいないんです。」と、素直に答えた。すると、アマンダはものすごく目を見張り、軽蔑してくるように見下ろした。「ええ?!セレネちゃん、まだパートナーいないの?!」アマンダの肩に乗っていたパートナーの尻尾の長いグレー猫、ガラが、「アマンダ。そんなこと言うもんじゃないよ」と小声で諌めましたが、セレネは、ざぐっと胸をえぐられた気持ちでした。なんとか必死に呼吸を整えているとガラが優雅な仕草で頭を垂れた。「すまない。セレネ。アマンダが失礼なことを言ってごめんの。」「い、いや。別に大丈夫ですよ。…だってパートナーがいないのは事実なんだから…」そう言って何も買わず、セレネは店をあとにした。
それから2年後、セレネは運命の相手、パートナーを見つけました。コアです。
嬉しくって嬉しくって、セレネは催眠術をコアにかけました。コアにストレスをかけないためです。「眠りの魔法書」という本を地下の書庫から引っ張り出してきて出てきた、「催眠術」を使って眠らせたコアをもう一度、一縷の望みをかけてラ・ラに行きました。
「アマンダさん、あたし、パートナー見つけました。」セレネは自分でも驚くぐらい弱い声で言いました。灰色の太った体を揺らし、アマンダが振り返りました。「やっと?二年もかかったのかい?」アマンダはまた見下してきました。それを見たガラは口を開きかけました。しかし、「え?この黒猫?こんなチビに魔女のパートナーが務まるわけないじゃない。はははっ。」「こらっ。アマンダ。二年前もいったでしょ?…傷つくよ?セレネ」ガラは慌てていさめました。しかし、アマンダは口を尖らせ反発します。「でも、ホントのことでしょ?ガラ」「そうだけど、そんな公に言わなくたっていいだろ?」
ガラとアマンダは言い争いを始めました。「っ‥コ、コアは、チビなんかじゃありません。コアは!だ‥、大事なパートナーです!世界でただ一匹の、あ、あたし……だけのパートナーです!」セレネは顔を真っ赤にしながら言いました。犬が鳴くような声でした。怖くてぎゅっとコアを抱きしめると、もぞっと寝ているコアが動きました。「ほれごらん。コアは立派な魔女のパートナーさ」ガラが勝ち誇ったようにいいました。「‥ガラ。あんたはあたしのパートナーだろ?あたしの言う事を聞きなさいよ」いらついた声でアマンダは言った。ガラはしかとアマンダを見つめていいました。「そうだよ。確かに私はアマンダのパートナー。でもね、猫は言いなりにはならない。何者にも縛られない。私がアマンダのそばにいるのは、パートナーになったのは、自分の心が言ったから。そうしたいって。でも、そんな小さい子を、自分がパートナーがいるからって馬鹿にするのは見過ごせない。パートナーにそうなってほしくないから」黄色の目をきらんと光らせると、セレネの方に振り返った。「ごめんね。セレネ。あたしから言うよ。おめでとう……きっとアマンダといても楽しくないだろうからお帰り。そのかわいいパートナーを連れてお帰り。」ガラはにっこりと微笑むとペロッとセレネのふくらはぎを舐めた。すると、セレネはほうきとコアを連れて家へ戻っていた。
あんなことをアマンダに言ったけど、セレネはなんとも言えない気持ちでいっぱいになりました。そして、アマンダの言う通りかもしれない。あたしは遅すぎるんだ。そういう思いが生まれたのです。
この話を聞いて同情してくれるかと思いきや、コアはフッと軽く笑いました。その目はらんらんと燃えていました。
「もしかしてセレネ。あんなやつのことの言うこと信じちゃったの?!」「えっ?」「だってそんなろくでなしの考えることに洗脳されちゃうの?コア、寂しいし悔しいよ?」キッと目を尖らせ、コアは言った。「そうだよね。誰になんと言われようとコアはあたしのパートナー。あたしはコアのパートナーなんだよね」そう言ってセレネは優しくコアを抱き寄せました。「そうだよ。セレネ。そのことを忘れないでね。」コアはきゅっきゅっと頭をセレネにこすりつけました。
注 メーカーで作成してるのでセレネが多少違うのはご了承ください







