前回の続きというか同じ世界線というか
ぺいんとside
時々嫌な夢を見る時がある。
楽しく笑ってたのに瞬きの瞬間にみんな血を流して横たわってる夢。裸足に伝わる生暖かい血がどこかリアルで吐き気を催す。
この夢を見た夜はもう眠れない。同じ夢の同じシーンがずっと流れ続けるから。
「8番」
「え、」
気付かなかった。
牢屋の前に立つ看守は少しピリピリしている。隠れた目元はいつもより隈が濃いように思う。
「看守…」
ひとりじゃない。安心する。
薄い壁から伝わる両隣の2人の気配から居るのはわかっているものの、でもやっぱり不安になっていた。
看守に向かって手を伸ばす。
誰かと触れ合いたい。体温に触れたい。本当にそこにいるという証明が欲しかった。
「眠れないのか」
そう言って手を握ってくれる。
手袋越しだけど暖かい。涙が出そうになる。
「こわい、夢を見ました」
「怖い夢?」
「最初は楽しいんです。いつもみたいに、みんなで笑ってて、でも、みんな、…」
情けなくも声が震えて先の言葉が出ない。目の奥が熱くて視界がじわりと歪む。
「こんな環境のせいかもしれないな」
握っていた手を離してしまう。
忙しい人だ。きっと戻らなきゃいけない。話を聞いてくれただけ良かったのかもしれない。
俯いて涙が落ちるのを我慢していたら隣からカチャリと音がする。驚いて音の方を見ると看守が中に入ってきていた。
「え、看守?」
「どうした。寝れないんだろう?」
「いやあの、そうなんですけど」
「…早くベッドに入れ」
これはアレなのか、警棒で叩かれるやつなのか。真夜中だし大きい声が出せないので大人しく指示に従う。
ベッドというには少しお粗末なような気もする薄いマットに薄い毛布。まあないよりはマシだけれども。
「あの、看守?」
「今日だけだからな」
そう言ってお腹の当たりをポンポンし始める。
「え、あの、」
「どうした」
「あー……いや、なんでもないです」
なんとも不思議なことに段々と眠くなってくる。このまま寝ればあの夢は見ないのではないかと考える。
「おやすみ」
額に柔らかい感触があったが気にする暇もなく眠りについた。
こんなのも考えてました(突然始まって突然終わります)
現実になったらと不安で仕方なくベッドに腰かけ泣いてしまう。
「どうした8番」
ハッとして扉の方をむく。
「なぜ泣いているんだ」
小さい足音で近くに来る。
目線が合うようにしゃがまれて涙を拭われる。
「……看守、」
「なんだ」
「看守は、居なくならないですよね。まだ、ここにいて、くれますよね、」
「………保証は」
「お願い、お願いです。居なくならないで、どこにも行かないで、置いて、いかないで」
少しおさまっていた涙がまた溢れて出てくる。
はぁ、とため息が聞こえる。
迷惑をかけてしまった。早く泣き止まないと、
「8番」
「?」
「好きなだけ泣くといい」
そう言って抱き締められる。
さっきとは比にならないくらい涙が出てきた。服を濡らしちゃうとか擦りすぎた目が痛いとか思考がまとまらない。
背中をさすられて、優しく叩かれて、髪を梳かれて、きっと子供相手にするようなこと。
「かんしゅ、」
「なんだ」
「リアム、看守」
「…」
「………ごめん、なさい、」
「気にするな」
暖かく大きい手がずっと撫でてくれる。
涙は止まったけど、離れたくない。わがままを言っちゃいけないと分かっていても縋ってしまう。
心地いい優しい人の手。
突然襲ってきた眠気に抗うことなく看守に体を預ける。
「また、やってくれますか」
「気が向いたらな」
コメント
2件
ガチ最高やん! 続きがみたい!(´✪ω✪`)
最 & 高