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「……なにしてるんだ?」
夏目が低い声で聞く。
「……っな、なんでもいいだろっ!お前に関係あるかよ!」
「…………馬鹿だね」
夏目はそう言って冬夜の腕を掴んだ。
「行くよ。」
「えっあ、は、はいっ」
そのまま夏目に引っ張られ、冬夜は教室を後にした。
「あ、あのっ!もう、大丈夫なんで……」
冬夜は夏目に言った。夏目は足を止め、振り向いて言った。
「……君はなんで抵抗しないの?」
「え……?」
「……まあいいや。今日はこのまま二人でサボろっか」
夏目は明るく笑ってそういった。
「え……あ、はい。」
冬夜は断ることも出来ず頷いた。
夏目に引っ張られるようにして階段を昇ると扉があった。
「着いたよ。」
夏目がそう言って扉を開けた。風が顔にあたり、青空が目の前に広がる。
「ここって……屋上?」
夏目は微笑んで頷いた。
「え、屋上って立ち入り禁止では……?」
「ちょっとしたコネだよ。屋上って風が気持ちいいから好きなんだよね〜」
「…………」
そのまま夏目は冬夜の手を引いてベンチに座らせた。少し間を置いてから夏目は聞いた。
「……冬夜は如何して抵抗しないの?」
少し間を開けてから冬夜が口を開く。
「……少しでも抵抗するともっと調子に乗ってさらに悪化するんで……」
「…………はぁ……」
夏目が大きなため息をつく。なにか気に触ったのかと思って冬夜は慌てて
「あ、否、ごめんなさい……」
と謝った。少しの沈黙があってから夏目が言った。
「……なんで君が謝るの?」
「……え……?あ、えっと……なにか気に触ったかなと思って……」
「……何も悪いこと、してないのに?」
「え、あ、え……?」
冬夜は初めて言われたことに驚き、慌ててしまう。暫くの間があってから夏目がふぅ、と息を吐いて言った。
「君が抵抗しないと更に調子に乗るよ。誰か相談できる人に相談して……」
「 無理です!」
冬夜は怯えた声で叫んだ。夏目は驚いた顔で
「なんで?」
と聞く。
「相談……したら……さらに悪化します……だから……」
震える声でそう答える冬夜を見て夏目は何かを察したような顔になって言った。
「……そっか。じゃあ……俺に相談してよ。」
「え……?」
突然のことに動揺する冬夜。構わず夏目は続ける。
「身内とか、相談出来る人がいないのなら俺が聞くよ。案外あんま親しくない人の方が話しやすかったりするしさ。」
突拍子もない、けれどどこか的を射たような発言に冬夜は頷いた。
「ありがとうございます。相談に乗ってくれるなら嬉しいです。」
冬夜はにこやかに笑う。何処か固い表情で。夏目は不思議に思いながらも、
「じゃあ……放課後とか?」
と冬夜に聞いた。
「……昼休みがいいです。あと、毎日は無理なので……水曜日でお願いします。」
「わかった。じゃあ……毎週水曜日に此処集合ね。」
「はい。あ、今日どうしましょう……?」
冬夜の質問に夏目はニヤリと笑って答えた。
「サボろっか。」
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