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圭ちゃんは「…ほんと、ウブだな」と悪戯に笑って、俺の頭を雑に撫でた。
頭頂部に伝わるその掌の温度だけで、直前に交わした激しい熱情が蘇り、心臓が跳ね上がる。
「そ、そんなんじゃない…!逆に圭ちゃんが変なんじゃない…?男、抱いてなんも思わないとか…」
ちょっとぐらい、意識してくれてもいいのに。
という割り切れない切なさと
気持ち悪がられてなくて安心している自分がいた。
そんな矛盾した気持ちを抱えていたとき
「別になんも思ってねぇわけじゃねぇよ。ただ、好きな男抱いた実績は解除されたってだけだろ?」
「…っ!!ゲームみたいに言わないで…!」
追撃のような言葉に顔が爆発しそうになった。
そのとき、会話の終了を教えるように朝のホームルームを告げる予鈴が鳴り響いた。
慌てて自分の席に戻ると、ガラガラと教室の前扉が開いて担任が入ってきた。
「よし、全員席つけー。……連絡事項の前に、今日は急だが、うちのクラスに転校生が来てる」
担任のその一言に、ガヤガヤと騒がしかった教室が一瞬で静まり返り
次の瞬間には様々などよめきに変わった。
「転校生?!女子ですか?!男子ですか?!」
「転校生とかアニメみたいじゃん!!」
「え~、可愛い子だったらいいなぁ」
日常の延長線上に落ちてきた小さな波紋に、クラスの空気は一瞬で浮き足立つ。
転校生と聞くだけでテンションが上がってしまうのは俺にもよくわかる。
なんせ、そんな展開アニメでしか見たことがないんだから、浮かれない方が無理がある。
そんな俺たちを静まらせるように、担任がゴホンっと咳払いをする。
「そこの騒いでる男子、残念ながら転校生は男だぞ」
その言葉を聞いて残念がる男たちと裏腹に、女子は声を上げ「絶対イケメンじゃん!」と騒ぎ出す。
それに生じて、自分の前の席に気怠げに座る圭ちゃんの肩を軽く叩く。
指先から伝える振動に、ほんの少しだけ助けを求めるような気持ちを乗せて。
「圭ちゃん圭ちゃん、転校生とか激レアすぎるよね!」
「そうか?」
しかし、相変わらずと言うべきか、圭ちゃんはまるで興味がないというような反応だ。
振り返りもせず、ただ背中で無関心を決め込んでいる。
そうこうしているうちに、担任の声がけと共に扉がガラガラと開いた。
担任の隣に立つ彼は、高身長で足も長く、絵に描いたようなイケメンだった。
光を反射する髪、通り抜ける風のような洗練された佇まい。
そしてその顔は、どこか見覚えがあった。
喉の奥が一瞬で乾ききるような感覚が走る。
「じゃあ、簡単にでいいから自己紹介してくれるか?」
担任にチョークを手渡され、彼は黒板に振り返り名前を書き出した。
カツカツと響く硬い音が、俺の鼓膜を不吉に刺す。
「新藤樹です」
「ええ、彼はご両親の転勤で一度この街を離れていたんだが、今回の転勤でまた戻ってきたそうだ。もしかしたら、知ってるやつもいるかもしれないな」