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ジェイアスの魔力が護符を通して流れ、
核の波と共鳴した瞬間──
エリスの意識の底に、
彼の想いが届いた。
──エリス。
──戻ってこい。
──俺には……お前が必要なんだ。
暗闇の中で、
その声だけが鮮明だった。
エリスの指先が震える。
意識がゆっくり浮上し始める。
だがその時──
森の奥から、
金属の軋む音が響いた。
「……っ、来やがったか……!」
ジェイアスが顔を上げると、
護符の隙間を狙って、
技術団の兵が魔術銃を構えていた。
暴走魔力で結界が乱れた“今”しかないと判断したのだ。
「撃て!」
閃光が走る。
ジェイアスはエリスを庇うように抱き寄せ、
護符を重ねるが──
暴走魔力を抑えている今、
防御は完全ではない。
「くっ……!」
魔術弾が護符を貫き、
ジェイアスの肩を撃ち抜いた。
鮮血が散る。
その瞬間──
エリスの意識が、
完全に覚醒した。
「……ジェイ……アス……?」
朦朧としていた瞳が開き、
腕の中の彼の血を見た瞬間、
エリスの魔力が爆発した。
核が反応する。
鏡が震える。
空気が裂ける。
ジェイアスを守るためだけに、
エリスの魔力が“禁呪の回路”へと流れ込む。
「エリス、だめだ……!
それ以上は──!」
ジェイアスの叫びは届かない。
エリスの身体は、
核と鏡の波長に完全に同期し、
禁呪の術式が展開されていく。
彼女の意思ではない。
でも、彼女の“愛”が選んだ。
ジェイアスを守るために、
エリスは禁呪を使ってしまった。
森全体が白く閃き、
禁呪の光が世界を飲み込む。
禁呪の光が森を守り、技術団が撤退したあと
禁呪の光が森全体を包み込んだ。
暴走していた核は静まり、
森の結界は再び閉じ、
技術団の魔術機械はすべて停止した。
兵たちは恐怖に顔を歪め、
撤退の号令とともに森の外へ逃げていく。
静寂が戻った。
その中心で──
ジェイアスはエリスを抱きしめたまま、
震える声で呟いた。
「エリス……
戻ってきたのになんで……
なんで禁呪なんか……」
彼の声は怒りでも責めでもない。
ただ、
失いたくない人を失う恐怖だけが滲んでいた。
エリスは弱く微笑む。
もう身体は光に透け始めている。
「……核の波と一緒に……
ジェイアスの想いも届きました」
ジェイアスの腕が強く震える。
「エリス……やめろ……
そんな言い方……
まるで……」
エリスは首を振り、
彼の胸にそっと手を添えた。
「あなたが……
私を呼んでくれたから……
戻ってこられたんです」
光がエリスの身体を包み、
輪郭が揺らぎ始める。
「ジェイアス……
私も……あなたを……
愛しています」
その言葉は、
森の静寂よりも深く、
核の光よりも温かかった。
ジェイアスは彼女を抱き寄せ、
声にならない声で名を呼ぶ。
「エリス……
行かないでくれ……
頼む……」
エリスの身体は、
細かな光の欠片へとほどけていく。
「……ありがとう……
ジェイアス……」
最後の言葉とともに、
エリスは無数の光の欠片となり、
空へ舞い上がった。
森の上空で、
その欠片は星のように輝き、
やがて風に溶けて消えていった。
ジェイアスはその光を見上げたまま、
膝をつき、
胸に手を当てて呟く。
「……俺も……
お前を……愛している……」
森は静かに、
ふたりの最後の言葉を抱きしめていた。