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第16話 優しさの檻
薄明かりの街。
ふぶきは、一人で旧市街の小道に立っていた。
らんま「ふぶき、1人で行く気か? そんなの危ないじゃないか……!」
ふぶき「……大丈夫ですわ。わたくしの心にしか触れられない影なら……わたくしが立ち向かわなければなりませんの」
廃れた洋館の前。そこに、“それ”はいた。
アノマリー《Noir Venom(ノワール・ヴェノム)》
黒く蠢くドレスのような影。無数の声が、ささやく。
Noir Venom「——優しさは甘え。誰にも届かない。誰も気づいてくれない」
影がふぶきの心に触れた瞬間——
彼女の脳裏に、幼き日の光景がよみがえる。
回想:白い部屋、鏡の前の少女
若いふぶき「ねえ、ママ。どうして私の話、誰も聞いてくれないの?」
母親「お嬢様は静かにしてなさい。感情を表に出すのは“育ち”が疑われるわよ」
若いふぶき「でも、泣いてる人がいたら助けたいの……」
母親「ふぶき、それは“あなたのすること”ではありません」
ふぶき(現在)「……ずっと、“優しくあってはいけない”って教えられてきましたの」
Noir Venom「だから、誰の助けも届かない。誰もあなたの“本当”を知らない。あなた自身すら——気づいてない」
その瞬間、ふぶきの体がぐらつく。
影が心に侵入し、優しさの核を喰らおうとする。
???「……ふぶき!!」
声が響く。
みこ・とき・海が駆けつけてきた。
みこ「ふぶき、1人で背負わないで! 私たちは仲間だよ!」
ふぶき「でも……こんな、偽りの優しさで……わたくし、本当に皆さまの役に立てているのかしら……?」
とき「偽りじゃない。自分の弱さを認めた上で、人に優しくできるあんたは……強いよ」
海「ふぶきの笑顔に救われたやつ、ここにいるんだぜ?」
みこ「それに——ふぶきの“優しさ”があるから、私はここに立っていられる」
その言葉に、ふぶきの目に涙が浮かぶ。
ふぶき「……わたくし、皆さまに……救われていたのですね」
らんま「なら、今こそ“心”で応えるんだ!」
ふぶきのステッキが輝く。
彼女の中の“やさしさ”が純粋な魔力に変わり、《Noir Venom》を貫く。
影は音もなく崩れ去り——
ふぶき「ありがとう……皆さま。わたくし、ようやく本当の意味で“仲間”になれた気がしますの」
みこ「ふぶき……ううん、もう“本当の仲間”だよ」
とき「ふふ……ま、悪くないわね」
海「次は俺が助ける番、かもな」
そしてその夜、誰にも知られずに1人、屋上に立つ少女がいた。
スマホに映る《Magica Order》の画面を見つめ、こうつぶやく。
カレン「ふぶきが耐えた……となると、次は“選ばれる者”が現れる頃ね」
カレン「運命はもう、止まらないわ——」