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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「あのっ、ちょっといいですか?」


店が始まる前に、いつもやってる店内ミーティングで、思いきって手を上げて、椅子から立ち上がった。

俺の周りを囲むように座ってる、やる気なさげな先輩たちの視線をびしばしと浴びたせいで、意見しようとしていたやる気が、見事に削がれそうになる。それに負けないように両手の拳を握りしめ、腹から声を出した。


「俺みたいなのが意見するのは、すっげぇ生意気だと思うんですが、1ヶ月ちょい、ここで働いてみて、思うことがありまして……」


人が喋ってる最中なのに、スマホを弄るヤツや、面倒くさそうな顔して舌打ちをするヤツがいて、すっげぇムカついたのだが、気にしてる場合じゃない。


「もっと協力し合って接客したほうが、お店にとって、回転率が上がると思うんです」


新規のお客さんや、お金をあまり落してくれないお客さんに対し、結構待たせることをしている先輩方。羽振りのいいお客さんを他のヤツに取られないように、席を立とうとしないんだ。

本来なら大倉さんがそこんとこ、コントロールしなきゃならねぇのに、先輩方の顔色を窺うあまり、強く言えないらしい。


「何それ。自分が上手く接客できないからって俺らのこと、ひがんでいるんじゃないの?」

「うっ……そんなこと、ないです。だけど――」

「レインくん、分かったから。もう、いいよ」

「よくねぇだろっ、何で止めるんだ大倉さん」


確かに今まで働いてきて、接客したのは5人にも満たねぇ数だけど。俺は知ってんだ――


「アンタ売り上げのことで、オーナーにどやされているだろ。毎日、さ」

「それは、いつもの恒例行事みたいなものだし。君が気にする必要ないって」


カラカラ呑気な顔して笑っているクセに、影で悔しそうな顔をしてること、俺は知ってんだ。

閉店後、俺が後片付けしてる最中に、売り上げの計算をカウンターでしている姿を、チラチラ横目で見ていると。

すげぇ大きなため息をついて、カウンターに背を向けた瞬間、何ともいえない表情を浮かべてさ。そんなのを毎日見せられてる、俺の身にもなってほしいくらいだ。


「大倉さんに気にするなって言われても、辛そうな顔してるの知ってるせいで、放っておけるワケないだろう。こういう時だからこそ、みんなで協力してさ」

「下っ端のクセして、超生意気。誰がテメェの言うこと、聞けるかってんだ!」

「たしかにー! 店長だけじゃなく俺らにも命令するとか、信じられなーい」

「ということで、ミーティング終わりにしちゃってよね。さっさと営業しなきゃ。お客さんにこれから連絡するし」


まだ話が終わっていないのに、散り散りに席からいなくなってしまう先輩方に、ガックリと肩を落とすしかなかった。


「ありがと、レインくん。その気持ちだけ受け取っておくよ」

「……諦めんのか、大倉さん」

「レインくんに対する気持ちは、諦められないけどね」

「ちげーよ! 店のことを考えろって。アンタ店長だろ、オーナーに店を任されてるのに、何で何もしねぇんだ? ……です」


つい勢い余って、言葉遣いが荒くなったのに気がつき、最後の最後で修正。毎度、後味が悪い。


「そうなんだけどね……上手くコミュニケーションがとれなくて。今の若いコの扱いは、本当に難しいよ」

「……分かった。大倉さんが扱えるように、俺が何とかしてやる、です」

「おいおい、影で脅すなんてしないでくれよ。お店を去られても困るから」


苦笑いをする、大倉さんの肩を叩いてやった。


「ふん! 俺がナンバーワンになるって言ってんだ、そんな変なことしねぇよ」

「へっ!?」

「勘違いすんな、です。別に大倉さんのためじゃねぇから。店が潰れたら、困るのは俺なんだし」

「レインくん……」


ラブラブの眼差しで、俺の顔をじっと見つめてきたので逃げるべく、さっさと奥の部屋に引き篭もってやった。


「さて、と。ナンバーワンになるには、女の心を鷲掴みできるネタが必要だっていうのは、先輩方の接客を見て分かったけど、何ていうかどうもイマイチなんだよな」


ポケットに入れてたスマホで、いろいろ検索し、その内そこから閃いた。


「日サロのオネェ店長に、ちょっと話を聞いてみるか……」

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