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走り続けた
体が限界を訴え続けるが、彼の意思がそれを否定する
そのうち見覚えのある事務所まで付き、入る所で力尽きる
全身の痛みで目が覚める
そこは事務所内で、まるでここ数年が全て夢だったような錯覚に陥る
戦争に赴いたことも
全てを捨てて逃げ出した事も
スミレが…
「っスミレ!!!」
すぐさま彼女を探す
この記憶が夢であることを証明するために
「スミレ!!何処だ!!スミレ!!」
彼女に呼びかけるが、どこからも声は帰ってこない
「っ痛…」
探している最中、何かに手がぶつかり痛みを感じる
ただぶつかっただけにしては強い痛みに思わず拳を見ると…
「うわぁ!!」
その拳は血塗れで、何かを何度も殴ったかのように赤く腫れていた
『な…んだよ!!あれは!!
俺らはあんなもんのために殺しあ』
「違う!!!!!」
夢の中と同じ光景が蘇り、その記憶を否定する
そうして彼女を…スミレを探してる最中、小さな鏡が視界に入り
自らの姿が映し出される
「…っ」
返り血塗れだった
その血は彼女が自分を庇って裂かれた時の…
「…違う 」
そうだ
彼女は男に裂かれた後…
「違…」
『逃げて』
思い出した
彼女が自分を庇って真っ二つに裂かれた瞬間
彼女と目が合った瞬間
彼女の最後の言葉
その全ては夢などでは無く…
「スミレ」
嗚咽が漏れる
その嗚咽は次第に大きくなり、やがて絶叫となる
「スミレ…スミレ
俺が………スミレを……」
殺したんだ
スミレとハンスの所属する事務所は書類上、
『翼戦争の参加』の依頼進行中となっており、この事務所が未だ空き部屋となっていないのはそのためである
依頼主であるL社は倒産したため、その間を取り持ったツヴァイ協会から少額の報酬が支払われる
スミレは依頼進行中の死亡として扱われ、それ以上は何も無かった
次の日にはツヴァイ協会から依頼が入って来た
まるで何も無かったかのように
都市は何も変わらなかった
彼女など、まるで元から存在しなかったかのように
彼も日常に戻ってゆき、前までのように依頼をこなして生きていく
「……… 」
ツヴァイ協会からの依頼をこなし報酬を貰う
その金で飯を買う
事務所に帰り眠る
吐き気がする
依頼をこなす
飯を買う
眠る
頭から離れない
依頼をこなす
飯を買う
眠る
『あれ』が
依頼をこなす
飯を買う
眠る
飲み込まれる彼女が
依頼をこなす
眠る
あの時の光景が
依頼をこなす
眠る
依頼をこなす
眠る
依頼をこなす
依頼をこなす
依頼をこなす
依頼を失敗していまう
久しぶりに飯を食う
吐き出す
久しぶりに睡眠を取る
悪夢を見る
依頼を失敗してしまう
「………」
あの記憶がこびり付いて離れない
『逃げて』
あの言葉が頭から離れない
「……………?」
事務所内の机に手紙が置いてある
内容は
「……L社採用通知?」