テラーノベル
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「文化祭の出し物を決めるぞー!」
先生の声で、教室が一気に騒がしくなる。
「お化け屋敷!」
「喫茶店!」
「劇がいい!」
黒板がどんどん埋まっていく。
悠真は隣の冴を見る。
「石川は?」
「……本屋。」
「文化祭で本屋?」
「駄目?」
「いや、石川らしい。」
冴が少し笑った。
-–
話し合いの結果、クラスの出し物は喫茶店に決まった。
「じゃあ係を決めよう。」
黒板に仕事内容が書かれる。
飾り付け。
メニュー作り。
宣伝。
当日の接客。
「神崎と石川、飾り付け一緒でいいんじゃない?」
誰かが言った。
「いいじゃん!」
「二人とも器用だし。」
「俺は賛成!」
「……。」
冴と奏斗は顔を見合わせる。
「どうする?」
「……いいよ。」
「じゃあ決まり!」
-–
放課後。
二人で教室に残り、飾り付けの材料を広げる。
「これ、どこに貼る?」
「窓のところ。」
「了解。」
奏斗が脚立を持つ。
「俺やるよ。」
「危ない。」
「大丈夫。」
「……。」
冴が少し考える。
「じゃあ、支える。」
「それなら安心。」
二人で作業を続ける。
-–
しばらくして。
「……疲れた。」
奏斗が机に突っ伏す。
「まだ始まったばかり。」
「休憩!」
「五分だけ。」
「やった。」
冴が呆れたように笑う。
でも、その表情は楽しそうだった。
「文化祭って、こんなに準備するんだな。」
「初めてだから。」
「石川は?」
「俺も。」
「そっか。」
二人で窓の外を見る。
夕方の校庭。
少しずつ秋らしくなっていた。
-–
「神崎。」
「ん?」
「これ。」
冴が紙を差し出す。
「何?」
「メニューの案。」
「おお。」
そこには、きれいな字で料理名が並んでいた。
「すご。」
「……そう?」
「うん。俺にはこんなの無理。」
「神崎は絵。」
「任せて。」
奏斗がペンを取る。
「じゃあ、この部分に絵を描く。」
「うん。」
二人で一つの紙を囲む。
気づけば、すっかり日が暮れていた。
-–
「そろそろ帰ろう。」
「うん。」
片付けを始める。
冴が紙をまとめていると、一枚だけ床に落ちた。
奏斗が拾う。
「これ。」
「ありがとう。」
「……。」
奏斗はその紙を見る。
そこには、二人で考えたメニュー案。
「これ、結構いいな。」
「うん。」
「完成したら、写真撮ろうぜ。」
「……いいね。」
「思い出になるし。」
冴は少しだけ笑った。
「……また増えるね。」
「何が?」
「思い出。」
「……。」
奏斗も笑った。
「うん。」
-–
帰り道。
「今日、楽しかった。」
奏斗が言う。
「俺も。」
「明日も一緒にやろうな。」
「うん。」
少し歩いて。
冴がぽつりと言った。
「神崎。」
「ん?」
「文化祭が終わっても。」
「……。」
「また一緒に何かしたい。」
奏斗は少し驚いた。
でもすぐに笑う。
「もちろん。」
冴も笑った。
「……よかった。」
二人はそのまま並んで歩いていった。
文化祭まで、あと二週間。
そして二人の思い出は、また一つ増えようとしていた。
-–
第31話 おわり
次回・第32話「秘密の準備」
文化祭の準備が進む中、冴が奏斗にだけ相談する。
「実は、文化祭の日にやりたいことがある。」
それは、クラスのみんなには内緒の小さな計画。
ところが、その計画を偶然知ってしまった蓮が――?
コメント
1件
「同じ係」、すごくよかったです……!文化祭の準備を通じて、冴くんと奏斗くんが自然に距離を縮めていく感じが、読んでいてじんわり温かくなりました。特に「文化祭が終わっても、また一緒に何かしたい」と言った冴くんの言葉と、それに「もちろん」と笑った奏斗くんのやり取りが、この二人の関係を象徴しているみたいで胸にきました。ラストの「また増えるね」「思い出」という会話も、本当に素敵でした。次のエピソードも楽しみです🌷
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