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第十四話「いつも通り…だよね?」
次の日、朝。
リビングには、いつもと同じ光景があった。
テーブル。
朝ごはん。
そして——
「はい、できたよ」
山本美憂の声。
「……ありがと」
高橋佳は、椅子に座りながらそう返す。
⸻
(……普通、だよな)
見た感じは。
声も、表情も。
ちゃんと、いつも通り。
でも——
(……なんか違う気がする)
はっきりとは分からない。
でも、どこか引っかかる。
⸻
「……どうしたの?」
美憂が聞いてくる。
「いや、なんでもねぇ」
「そっか」
にこっと笑う。
その笑顔に——
(……気のせいか)
自分で納得しようとする。
⸻
箸を動かす。
味は、いつも通り美味い。
「今日さ、遅刻しないでね」
「お前が言うかそれ」
「今日はちゃんと起きたもん」
「はいはい」
軽口も、いつも通り。
⸻
(……やっぱ普通だな)
さっきの違和感は、気のせい。
そう思うことにする。
⸻
学校。
教室。
いつもの席。
いつもの空気。
⸻
「佳」
「ん?」
美憂が呼ぶ。
振り向くと——
「……なんでもない」
「は?」
「ちょっと呼んだだけ」
「意味わかんねぇな」
「いいの」
くすっと笑う。
⸻
(……なんだそれ)
一瞬だけ、引っかかる。
でも——
(まぁ、いつものか)
深く考えない。
⸻
授業中。
ふと視線を感じて横を見る。
美憂と目が合う。
すぐ逸らされる。
⸻
(……なんだよ)
少しだけ気になる。
でも。
(考えすぎだろ)
また流す。
⸻
休み時間。
女子と話していると、また視線。
でも——
(……まぁいいか)
特に何も言わない。
⸻
放課後。
「帰るか」
「うん」
並んで歩く。
少し静か。
でも——
こういう日もある。
⸻
「……佳」
「ん?」
「今日、調子どう?」
「普通」
「そっか」
それだけ。
⸻
(……なんだろな)
ちょっとだけ、違和感。
でも。
(別にいいか)
深く考えるほどでもない。
⸻
家。
靴を脱ぐ。
「……佳」
「ん?」
「無理してない?」
ふいに聞かれる。
⸻
一瞬、止まる。
⸻
「してねぇよ」
すぐに答える。
「……そっか」
それで終わり。
⸻
(……なんだよ急に)
少しだけ気になる。
でも。
(……まぁいいか)
それ以上は考えない。
⸻
リビング。
ソファに座る。
テレビの音。
隣には美憂。
距離は、いつもと同じ。
⸻
(……普通だな)
そう思う。
⸻
違和感は、確かにある。
でもそれは——
言葉にするほどじゃない。
考えるほどでもない。
そうやって、片付けてしまう。
⸻
(……気のせいだろ)
自分に言い聞かせる。
⸻
だから。
佳は気づかない。
気づこうとしない。
⸻
“いつも通り”を守るために。