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アモン視点
新しい主は小柄で大人しい感じの女性だという。
アモンは庭仕事をしながら、新しい主についてぼんやりと考えていた。
大人しい女性なら、執事とトラブルになっても喧嘩沙汰になることはないだろうから怪我の心配は要らないだろう。
ただ、一度でも嫌な思いをさせれば延々と恨まれたりしそうで面倒くさい。
嫌われない程度に適当にあしらおうと決め、花壇に移動した。
花壇には見覚えのない人物がしゃがみこんでいた。
恐らくこの人が主なのだろうと当たりをつけ、声をかけてみることにした。
「あれぇ、もしかして主様っすか?」
『!?ぅえ、あ、はぃ!?』
主は変な声を出しながら飛び上がるように立ち上がった。
立ってもフルーレより小さく本当に小柄なんだな、とアモンは少し驚いた。
「あはは、びっくりさせちゃったっすね。
俺は、アモン・リードっす。名札もちゃ〜んと付けてるっすよ」
少しふざけた様子で話しかけると、思った以上に丁寧な対応をされた。
『あ、ホントだ・・・アモン君・・・
あ、えっと、主になりました〇〇です。これからお世話になります』
なかなか主にこんな感じで接されることはないため、調子が狂ってしまう。
主はポケットからメモを出して、アモンのことを少しだけ書いていた。
何が書いてあるのか気になるところだが、名前を覚えられないからと名札を着けさせる主であるため、きっと名前だろうなと無理やり納得し、他の話題を振った。
庭は自分が手入れしていること、季節に合わせて花を植えていること、たまに花壇にパセリが植えられていること・・・
話しているうちに主の緊張が取れてきているのを感じ取り、アモンは主に質問を重ねた。
どんな花が好き?どの色が好き?今度部屋に飾ってほしい花はある?など今後のお世話で使えそうな情報を多めに引き出すことに成功した。
案外単純だった主を見送り、アモンは上機嫌で花の世話を再開した。
嫌な人だったらどうしようかと思っていたが、毒にも薬にもなりそうにないというか、人畜無害というか、そんな感じの人に見えた。
穏やかに過ごせるなら何よりだ、と頷き綺麗な花を咲かせるため何本かの蕾を間引いたのだった。
ボスキ視点
新しい主が来たと聞いた。
どうやら小柄な女らしい。
特に煩かったり性格に難ありな女ではないらしく、ボスキは安心してサボることができていた。
お気に入りの昼寝スポットで寝ていると、知らない人間の気配がして目が覚めた。
目を開けないまま気配を探ると悪意のない子供のようなものだったので、そのまま動かないことにした。
子どもはボスキが寝ているのに気づくと、少し迷ってから控えめに声をかけてきた。
『あ・・・あの〜・・・』
「・・・」
『大丈夫ですか〜?・・・生きてますか〜?』
「・・・」
いや、遠くないか?
ボスキはかなり遠くから声をかけてくる子どもに心の中でそうツッコんだ。
わざわざ屋敷に不法侵入しておきながら執事一人にビビっているなんて、おかしくはないだろうか。
子どもはまた少し考えて、ボスキに近づいてきた。
今度は近くにしゃがみ込んで肩を揺すられた。
『あの、大丈夫ですか、意識ありますか』
違う、コイツ俺を死体だと思ってやがる。
そう気付いたボスキは起き上がった。
『うわっ・・・』
「あ゛ぁ?」
間抜けな声を上げた子どもを軽く脅かしてやると、面白いほどびっくりして後退った。
『ひぃっ、は、はいっ・・・』
カタカタと震えながらジリジリと距離を取られ、ふとこれは子どもではなく、主なのではないかと言う考えが浮かび念の為確認した。
「・・・もしかして、主様か?」
『・・・え?』
「・・・違うか、じゃあその辺のガキか・・・とっとと帰れよ」
どうやら違ったようだ。
『ぁ、いや、その・・・』
「なんだよ」
『イエ、ナンデモナイデス・・・』
まだ何が言いたそうな子どもを追い払い、ボスキはまた木の下に寝転んだ。
そして、これが原因で主にしばらく怖がられ口も利いてもらえなくなる、とボスキは考えもしなかったのであった。
フェネス視点
いつも通り書庫で本を読んでいると控えめなドアの音とペタペタという足音が聞こえ、フェネスはもしかしたら主様がいらっしゃったのかな、と思った。
主はゆっくりと本棚を見て回り、読書スペースから椅子を持ち出し本棚の前に運んだ。
どうやら高いところの本を取りたかったらしい。
椅子に乗って本を取った主は隣の棚の本にも手を伸ばした。
流石にちょっと届いていなかったため取ってあげようと近づくと、主は本棚を掴み片足立ちになって無理にでも本を取ろうとし始めた。
プルプルと震えながら目当ての本の縁に指をかけ、少しずつ引き出していく。
フェネスはそんな主の様子をハラハラしながら見守っていた。
何かあったらすぐに助けなくてはいけない、と固唾を呑んで見ていたが、主は案外器用に本を取り出して満足げに振り返った。
瞬間、フェネスと目が合ってしまった。
フェネスは気まずさから本棚の影に入ってしまった。
失礼なことをしたとは分かっているが、多分話しかけて欲しくないパターンだと思ったので主のことは一旦無視することにした。
主がシナシナで書庫から出て行くと、フェネスも書庫から出てハウレスのもとに向かった。
「ハウレス?ちょっといいかな?」
「どうした?フェネス・・・」
「実はね、主様用の踏み台を作って欲しくて・・・」
フェネスは一部始終をハウレスに伝え、書庫用の踏み台を作ることをハウレスに約束させた。
これで安心して読書をしていただける、と良いことをした気分になったフェネスだったが、気まずさからしばらく避けられることになるとは思っていなかった。
ハウレス視点
修繕作業をしていると、フェネスが声をかけてきた。
先程書庫で高い棚の本を危ない方法で取ろうとしていたので踏み台を作って欲しい、と言われすぐに主の部屋に向かった。
ドアをノックするとすぐに返事があった。
『あ、はぁい』
「失礼いたします、ハウレスと申します。今お時間いただいても宜しいでしょうか?」
『あ、大丈夫です、どぞ・・・』
入室の許可をいただき、部屋に入って用件を伝えた。
「先ほどフェネスから書庫に主様用の踏み台を置いてほしい、と頼まれまして。
どのくらいの高さが必要か確認させていただいても宜しいでしょうか?」
ベッドの上で座っていたミニマムサイズな主は緊張した様子で頷いた。
『は、はい』
2人で書庫に移動し、一番高い本棚の前に箱を置いて乗ってもらう。
「これに乗ってみていただけますか」
『はぁい』
「一番上の段に届きますか?」
主は手を伸ばしてみたが、上から2段目の中程までしか届かなかった。
『んぐ・・・』
頑張って背伸びをしても最上段の仕切りに触れるか触れないか・・・。
「・・・もう結構です、下りてください」
『あ、はい』
「では、これくらいの高さで作りますね」
『お願いします』
「・・・あと、高いところの本を取るときなどは無理せず、執事に頼ってください。
フェネスが主様が椅子から落ちそうで怖かったと言っていましたよ?」
フェネスからの報告を元に注意すると、主はメモを取り出しハウレスを見上げて言った。
『フェネスさんって、メガネかけてる背の高い人・・・ですか?』
「そうですが・・・あれ、話していなかったのですか」
てっきりしばらく話していたものとばかり思っていたため、驚いた。
『うん、邪魔になるかと思って・・・』
「遠慮なく申し付けてください。
お怪我をなさったらどうするつもりだったのですか」
『・・・ごめんなさい・・・』
主はどうやら遠慮がちな性格らしい。
しょぼっとしながら謝る様子は子供のように素直で可愛らしいと思ってしまった。
その後、フェネスとは話しましたか、と事あるごとに声をかけることになるが、ちょっと恥ずかしいというか・・・と言われて後回しにされるのだった。
MAKO
コメント
1件
うわ、めっちゃ面白かった!アモンの軽いノリとボスキの塩対応、フェネスの気まずさからの行動力、ハウレスの真面目な気遣い——もう執事たちのキャラの濃さが最高すぎる。でも何より、どの視点でも主が「小柄でおとなしいけど頑張り屋さん」って一貫してて、そこに安心感があった。踏み台作る展開にじわっと来たし、フェネスに避けられてるの可哀想だけど笑った。主の「フェネスさんって…?」で聞き直すところ、絶妙な間が好き。