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sm 「…どうぞ」
背中でドアを支えながら部屋へ招き入れる。
律儀にお邪魔しますとお辞儀しながら入ってくる。
kr 「いや、マジで助かる。友達は誰も繋がらんし、スマホの充電は切れそうだし…財布も持ってなかったからどうしようかと思っててさ、」
sm 「…夜、雨降るって予報だったんで、まぁ。」
kr 「うわ、まじか。じゃあより感謝だわ。ほんとにありがとね!…えっと、、ごめん、名前聞いてもいい?」
部屋に入ると申し訳なさそうにそう聞かれる。
そういえば俺も表札に書いてある範囲しか知らないな。
sm 「須磨 ◯◯です。白尾大の1年です。」
kr 「ん!◯◯君ね。◯◯君も白尾か。俺もそこの2年。1個上だね。俺は桐谷 ◯◯。友達からはきりやんって呼ばれてるから気軽に呼んで!」
sm 「…きりやん..先輩。」
kr 「..w…あ、ねぇ◯◯君もあだ名で呼んでいい?」
sm 「…?あだ名なんか無いですよ。」
kr 「待って、じゃあ今考えるわ。ん〜、…スマイル..。うん、スマイルにしよう。」
sm 「…は?」
何だそのネーミングセンス皆無のあだ名は。
俺のどこを見てその言葉が浮かんだ?
先輩に向けるには些か適切では無い顔をしてしまう。
そんな俺を見ながら先輩はくつくつ笑いをこぼす。
kr 「須磨って苗字だし、俺、君に会ってから笑った顔見てないんだよね。だから見てみたいなって意味も込めて、ね。よろしくねスマイル。」
眼鏡越しに向けられる人の良さそうな柔らかい笑顔に、俺はそれ以上言及する余地を見失う。
違う人種の明るさから逃げるように顔を背ける。
sm 「…風呂、入りますか?」
話題を変えようと質問する。すると直ぐに、
kr 「いや、お風呂は外で入ってきたから大丈夫。お気遣いありがとう。」
sm 「そうですか。なら俺入ってきますけど…」
kr 「ん!いってらっしゃい。…あ、スマホの充電だけ借りてもいい?」
そういえば切れそうだと言っていたな。
機種を聞きそれに合うアダプタを渡せば、ありがとうと笑いかけられる。
この人の笑顔は危険だ、なんて思いながら風呂へと足を向ける。
自分で招き入れたとはいえ赤の他人であることは変わりない。急いで風呂から出てリビングへ向かう。
扉を開けるとソファーに座る先輩が目に入る。
その姿に俺は目を疑った。
sm 「なッ……⁉︎なんでそれ…⁉︎」
ん?と不思議そうな顔をしてこちらを向く先輩の手には、隠しておいたはずのBL本が開かれていた。
kr 「?…あぁ、これ?そこの机に置いてあったから何の漫画かなって思って読んじゃった。ごめん、まずかった…?」
sm 「読んじゃった、って…」
なんて事なさそうにそう答える先輩に戸惑ってしまう。
、、、BL本なんて気持ち悪いだろ、。
ましてや、男がなんて、、、‼︎
立ち尽くす俺を見て首を傾げていた先輩は、あ!と声を上げる。
kr 「言っとくけど、俺こういうのに偏見無いよ?何だったら俺自身ゲイだしね。…スマイルはある?こう言うことに、偏見。」
俺の本をヒラヒラとさせ、微笑みながら先輩は聞いてくる。
sm 「ぇ…?…ぃや、無いですけど…。」
そんなの、そういう作品を好んで享受してる時点で有るわけが無い。
kr 「そ、なら良かった。」
そう言って再びペラペラとページをめくり始める。
自分が心配していたことをいとも簡単に、するりと躱された。
何なんだ、この人は。
疑問を募らせながらも、水を飲もうとそのままの足で冷蔵庫の方へ向かう。
突然その背中に、
kr 「…スマイルはこういうの興味あるの?結構激しい内容が多いみたいだけど。」
sm 「んなッ…⁉︎何言って…‼︎」
突然そんなことを言われ反射的に振り返る。
チラリと驚く俺の顔を見ると先輩は立ち上がった。スタスタと部屋に置いてある棚の前に立つと取っ手へ手をかける。
まずい、そこは、、、!
sm 「ちょっ…‼︎」
棚に付けられた扉を開かれればそこには、コツコツと集めた俺のBL作品が、、、‼︎
kr 「だって、ここにあるやつ全部そうだよね?」
全部バレてる、、、??なんでだよ、、!
ぐるぐると焦りに目を回す。
kr 「…で、興味あるの??」
再びそう質問され、じっと眼鏡越しの瞳に見つめられると思わずたじろいでしまう。
、、、興味、無いわけじゃ無い。
けど、そんなこと言えるはずも無い。
言葉を詰まらせているのを察し、こちらに近づいてくる。後退りする俺の目の前に立ち止まりニヤリと笑えば、
kr 「…俺が教えてあげようか?」