誕生日前日
「よし!これで最後!」
がみともは最後の手紙を書い終わった後市長の所に向かった。
「市長!ちょっとお願いしたい事が…」
がみともはそう言うと市長に寿命の事を話した。
「そうか、それは誰にも伝えないのか?」
「伝えたら皆んな俺に構おうとするでしょ?でも俺の為に時間を使ってほしくないんだ。いつも通りロスサントスを楽しんでいてほしい。」
「そっか、わかった。じゃあこの手紙と兎のお面は8月18日が終わる直前に救急隊に渡せば良いんだな?」
「はい、自分勝手なお願いをしているのは分かっていますが、よろしくお願いします。」
そう言うとがみともは頭を下げた。
「大丈夫だ。住民のお願いを聞くのも市長の務めだ。最後の最後までこの街を楽しんでくれ」
「はい!ありがとうございました!」
市長との会話が終わるとがみともは兎の姿になり病院に向かった。
『多分今日が病院に行ける最後の日だから最後は人の姿で会いたかったけど今人の姿になると流石に救急隊にバレる。
申し訳ないけど兎の姿で会いに行こう。』
「おー久しぶりだな。あか!」
ましろはそう兎を呼ぶ。そうなのだいつからか兎の姿のがみともにも名前が付いた、初めはがみともに似てる事から【とも】と呼ばれていたがそう呼ばれるのが嫌ながみともは呼ばれる度にましろの腕の中で暴れた為その名前は却下された。
そして頭が赤い事から【あか】と呼ばれる事になった。
いつもみたいにましろに抱き上げられ久しぶりだからか沢山撫でられた。今日の救急隊は人数が多くほとんどの人が居た。話を聞いているとがみともの誕生日が明日の為その準備をしているみたいだった。
長い時間病院に居たがそろそろロスサントスを回ろうかと思いましろの腕の中で暴れ下ろしてもらった。
「あっ今日はもう帰るのかい?気をつけてな、またなー!」
ましろに続けて他の救急隊もバイバーイやらまたねーとかを言っていた。
『皆さん本当にありがとうございました。俺は救急隊に入れてとても良かったです。またいつか』
皆んなの言葉に返事をするかの様に「ぐぅ、ぐぅ」と鳴いた。小さい音の為皆んなには聞こえているかは分からないが、また遊ぼうね、楽しかったよ、と伝えた。
がみともはそのまま色んな場所に寄った。
その間に色んな人に会い頭を撫でてもらったり兎でも食べられる野菜だったりを貰ったりしながら1日を潰していった。
家に帰り兎の姿のままベットの上で休んでいると急に眠気がやってきた。
『もう俺がこの街に来て2年かー長かった様な短かった様な
でもすごく楽しくて、温かくてずっと居たかった場所、まだ皆んなと居たかったな、沢山お話しして、笑って、怒って、泣いて、また笑って幸せだった。次があるなら人間に生まれ変わりたいな、兎も良いけど話せないから…』
がみともはそのまま眠る様に亡くなった。
8月18日だった。
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