00:12:03
青い扉を開く。19.8m 前方に静止した人影を確認。
00:12:15
探索者Aが右腕を上げ、短いあいさつの動作を実施。
映像解析にて−0.08 秒の時差で、人影側の同一動作が先行して記録されていると判定。
00:12:17
探索者B発声。
音声波形比較により、人影側の口部動作が0.2 秒早く開始していると判定。
当該段階では「機材同期不良」と仮評価。
投稿者:■■■■
チャンネル:#general
■■番入口から行ける青いドアの先で見える人影にあいさつするのがこのごろの趣味
手を振ったら手を振り返してくるんだけど、なんとなく向こうが一瞬早い気がする
だれか似たような経験ない?
※投稿はモデレーションにより一時的に凍結。
凍結理由は本人に通知されていない。
探索者A(映像では歩行していることを確認)の位置記録:
12:12:14 → 102.551 / 88.210
12:12:15 → 102.551 / 88.210
12:12:16 → 102.551 / 88.210
同時刻の人影位置(AI画像解析):
すべて上記と同一座標
この段階では依然として測位誤差として扱われた。
元音声
A「おっ、おはよ」
B「あの影にあいさつしてるのってお前だったのか」
変換結果(自動補完ログ)
人影「おはよ」
A「おっ、おはよ」
B「あの影にあいさつしてるのってお前だったのか」
※人影の発話は波形上、Aの発話より 0.12 秒早く入力。
ERROR 451:因果整合性エラー
原因:未来のデータが過去の動作を規定していると判定。
時系列の前後関係が不成立。
ソフトウェア側が解析結果を排除。
解釈不能な因果逆転が数値として顕在化。
No.1449
人影:右腕上昇開始。
探索者A:静止。
No.1450
探索者A:右腕上昇開始。
人影:前フレーム姿勢のまま固定。
人影が「模倣」しているのではなく、
探索者側が後追いしている可能性が高まる。
結論:
観測対象の動作は探索者の模倣ではなく、
探索者の動作系列の原型(Prototype)として発生している。
探索者のあいさつ・手振り・体勢転換などは、
観測対象側の動作発生後に付随して現れる副次現象と推定。
探索者が「自分が先に動作した」と認識する根拠は、
主観的記憶以外に確認できない。
「あなたの言葉は、
あなたより先に発されている。
あなたが動作を意図する前に、
あなたはすでに応答している」
※ログは 60 秒後、自動消去。
Subject:NG-14 対応手順(暫定)
次回のフロア変動まで■■番入口を封鎖
探索者行動ログの再解析(主体性判定アルゴリズムの更新)
「動作上書き」リスクの評価を最優先
動作の発生源特定に向けた調査班の編成
動作の発生主体が探索者に存在しない可能性が重視されている。
内容:
無人倉庫中央。
影状の輪郭が歩いているような姿勢を取っている。
裏面文字(破損):
「先に動いたのは」
現象が別の場所で継続している可能性が示唆される。
D-503フロア変動後も、一部の記録には探索者より「わずかに早く」動作を開始する人影の記録が現れている。
現時点での暫定結論は以下の通り:
我々が「自ら開始した」と認識する行為は、
すでに別の発生源により先行している可能性がある。
Case NG-14 は 封鎖済・継続監視中。
追加記録が取得され次第、本書類は更新される。
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