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金曜の夜。
部署合同の飲み会は、思ったよりも大人数になっていた。
個室の座敷には料理が並び、上司たちは既にビールを片手に盛り上がっている。
みこと、ひまなつ、こさめの三人は末席に座っていたが、周囲の空気に押されるように次々とジョッキを手渡されていった。
「みことくん、入社して頑張ってるよなぁ!ほら飲んで!」
「あ、ありがとうございます……っ」
みことの前のジョッキは、気づけば三杯目。
顔がじんわり熱くて、目の前が少しぼんやりする。
(……やばい、回ってきた……)
そこへ、上司の手が伸びた。
「みことくん、最近頑張ってるよな。偉いぞ」
ぽん、と肩を強く叩かれ、さらに腰に手を添えられる。
「う、ぁ……っ」
みことは弱い酒のせいで抵抗できず、困ったように俯いた。
その瞬間——
「すみません、このあたりで彼の分は僕がもらいます」
落ち着いた声。
みことが顔を上げると、すちが隣に座り、みことのジョッキを自然に奪い取っていた。
「す、すち先輩……」
「みことは弱いんです。後輩に無理をさせないでいただけると助かります」
言い切る声は柔らかいのに、どこか鋭かった。
すちはみことの腰に添えられていた上司の手をそっと外し、 自然な動作でみことの肩に自分の手を置く。
上司たちは苦笑しつつ引き下がり、すちは何事もなかったようにみことに水を渡した。
「……飲みすぎ。顔、真っ赤だよ」
その声が指先より優しくて、みことは胸の奥がじんとした。
「すち先輩……守ってくれたんですか……?」
「当たり前でしょ。俺の後輩なんだから」
言われた瞬間、心臓が跳ねた。
すちは“俺の”と言った。その言葉が甘くて苦しくて、酔いよりも強くみことの胸を締めつけた。
「君!飲め飲めー!」
「い、いやそんなに強く……ないっつってんだよ……!」
ひまなつの前には色とりどりのカクテルが並び、彼は既に目が潤んでいた。
(……むり、頭ふわふわする……)
ひまなつがぐらりと揺れた、そのとき。
強い腕が彼の背を支えた。
「はいストップ。後輩にこれ以上飲ませるな」
いるまがひまなつの肩を抱き、上司たちの前に割って入った。
「コイツこう見えて酒弱いんで。俺が面倒見ます」
「なんだよいるま、過保護だな〜」
「……誰が飲ませてんだよ」
低く落ちた声に、上司たちは少し引いた。
ひまなつはぼんやりと見上げる。
「い、いるま先輩……?」
「立てるか?」
「……ん、むり……」
ぐったり寄りかかるひまなつを見て、いるまは静かに息を吐いた。
「……無理すんなよ」
その声は優しくて、ひまなつの胸の奥にじんわり落ちていく。
酔っているせいか、ひまなつは素直に言葉を漏らしていた。
「……先輩が、いちばん……すき……」
いるまの手が一瞬止まった。
けれど、抱き寄せる力は前よりも確かに強かった。
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「こさめくん、元気だよねぇ〜ほら飲んで飲んで!」
「えっ……! ま、待って、ちょっと……!」
こさめは空気に押されやすく、勧められれば断れない。
気づけばコップが何杯も空になっていた。
そのうち、こさめはぽろりと涙をこぼした。
「ひ……ん、なんか……ひっく……お酒つめた……い……」
「え、泣いてる!?」
「やばい、どうしよう……」
周囲が慌てる中、
「……こさめ」
静かに、だが迷いのない声が落ちた。
らんが素早くこさめの隣に座り込み、そっと肩を抱いた。
「もう大丈夫。あと飲まなくていいから」
「ら、んせんぱい……」
こさめはらんの胸に顔を埋める。
らんはタオルでこさめの涙を丁寧に拭きながら、ふっと柔らかく笑った。
「断れないなら、俺が断る。……だから俺のそばにいなよ」
それは普段のらんからは想像できないくらい甘い声音で、 こさめはさらに真っ赤になって泣きながらしがみついた。
飲み会が終盤に差し掛かる頃、三組は自然と固まって座っていた。
みことの隣にはすち。
ひまなつはいるまの肩にもたれ、 こさめはらんに抱かれたまま落ち着いて眠ってしまった。
三人の先輩たちは、それぞれの後輩を守るようにそばに置き、追加の酒はすべて自分たちが受け取っていた。
その姿に、周囲の社員はひそひそと囁く。
「……あの三人の先輩、後輩に甘すぎない?」
「いや、あれは……もう……そういう感じなんじゃ……」
だが当の本人たちは気づいていない。
ただ、胸の奥だけが熱い。
触れたいと思ってしまう。
守りたいと思ってしまう。
酔って寄りかかってくる体温が、普段よりずっと近い。
誰もその理由を口にできないまま、飲み会はゆっくりと幕を閉じた。
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①後輩を自宅まで送り届ける
②後輩を自分の家に連れ帰る
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