テラーノベル
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※重いかも?
ただそれだけだったのに
たった1つだけだったのに
“それ”は僕たちを壊すのに十分過ぎた。
【野崎要】
僕たちの家族は、何かが見える。
それは【怪異】というらしい。
【怪異】とは、忌嫌われて、恐れられる存在だ。
少しだけ怪異の血、あるいは遺伝子が入っている僕たちは怪異が見える。
それは僕達が半分人間で、半分怪異ということなのだろう。
それを知った大抵の人は、僕たちを恐れて虐めたり、批判したりする。
そんな中で仲良くしてくれている友達はいかに優しいのだろうか。
「えー?だって要は要で、僕は僕だもん」
「だ、だって要くんは”いいひと”ですから」
当たり前で平凡で通常な【地獄】
その歯車という日常が崩れたのは暑苦しいほど晴れていた、晴天の日だった。
家に入った瞬間「ただいま」も言う暇もなく、とんでもない悪臭がした。鉄の匂いだった。
嫌な、予感がした。
悪臭の元の部屋に来た。
姉の部屋だ。
「死んでいる?」と、嫌な予感がした。
3回ノックをして、ドアを開けた。
そこで姉さんは_____死んでいた。
姉、野崎朱鳥は死んでいた。
首を吊って、手には切り傷があった。
手から滴る血は朱くて、朱くて朱くて朱くて、
鉄の匂いがした。
机には、遺書なんてものはなく、汚いカバンと教科書とノートが丁寧に置かれていた。
姉はどこまでたっても良い人なのだろう。
教科書とノートを開けると、姉への虐めの言葉や批判が大量に書いてあった。
僕とは比べ物にはならないほどの、虐め。
そのはずなのに何も言わなかった姉は何を考えてそうしていたのだろうか。
そのはずなのに僕の話を聞いて「ごめんね」といっていた姉はどれだけ優しくて、良い人でお人好しだったのだろうか。
「ああ、もっと聞いておけば良かったな」
その言葉が不意に口から出た。
僕は姉が作るタルトが好きだった。
彼女が琥珀に教えたタルトが好きだった。
姉と兄が笑いながら話しているのを見ているのが好きだった。
みんなで食卓を囲むのが好きだった。
姉はどれだけのことを背負っていたのだろうか
彼女に、僕の声は届いていたのだろうか
なにも、姉に出来なかった
後 に帰ってきた兄は少しだけそれを分かっていたかのように「ごめん、朱鳥」とだけ言っていた。
流石の兄も、相当ショックだったのか自室によくいるようになったり、学校に行かなくなっていた。本人に「大丈夫?」と聞いても、
「あー…要?俺は大丈夫だから、要もなんかあったら教えてね 」
と、空元気のような状態だった。
単位は留年しないギリギリを攻めているらしい。
僕は友達の家に泊まるようになった。
友達は特に何も言わなかったが、なんとなく際していたのだろう。
兄が中学を卒業した。
兄の通っているところは中学でも単位制らしい。
………その学校に通っていない僕には関係がないことだが。
そこそこ学力がある兄は結構良い学校に行くことになった。家から結構遠いらしい。
【星羽亥高等学校】という学校だそう。
略して星高。
そんな事はさておき、最近兄が手に絆創膏や包帯を巻いていたりして手を隠すことが多くなっている。
友達の家に泊まりに行った帰り、少しだけ早く帰ることにした。
正直この【帰る】という動作が僕は非常に苦手であり帰ったら何かがあるかもしれないという恐怖心が大きいのだ。
家に帰ると、また鉄の匂いがした。
本当に怖くなって、ゾッとして、急いで兄の部屋に行った。兄はリスカをしていた。
僕と目が合った兄は顔面蒼白で、何も言わなかった。
やっぱり兄も、姉も、苦しいはずなのに何も言ってくれなかったんだ。
「駿、なに……してんの?」
そう僕が聞くと、
「出てって」
そう兄が言った
「部屋から出て」
そう言って僕を押し出してドアを閉めた。
僕の服には朱色の血がべっとりと付着していた。
______こわい
血が怖くて、恐怖症になってしまったのか、わからないけどとてもとても怖くなってしまった。
………
それきり兄と話すことはなくなった。
ある日兄が帰ってきてから黒髪の僕と同じぐらいの背をした人が来た。その人が何者かも分からなかった僕はこっそりその人を観察していたのだが、突然僕の方を見て
「…お前って駿の弟?ちょっと話したいんだけど、いい?…………あー、別に怖かったらそこから話してもいいよ、俺聴力結構良いからさ」
と言った。僕はその人に近づかずに
「誰…ですか?」
と小さな声で言うとその人はちょっと笑って
「話してくれてありがと。んで俺は夜菊彗って言って星高の2年。お前の兄が___ぁ、いやちょっと諸事情で暫くこの家に居るんだけど良い?」
……きっとリスカの事だろう。
それより、この人は僕達が怪異ということを知らないのだろうか。
「害を及ばさないなら良いですけど…僕達、怪異ですよ?怪異ごときに___」
僕がそう言ってる途中に
「…ぶっちゃけ俺あんたら?野崎家?のこと”怪異”じゃなくて俺とかと一緒で”魔法とか使える人間”って感じだからあんま気にしてないんだよなー」
軽くその人が言った言葉は、姉が第三者から欲しかった言葉なのかなと思った。
「ってことでさ、晩飯作ろうと思うんだけどアレルギーある?あと嫌いな食べ物とか」
そう話をしている時に兄が荷物を置いて戻ってきた。兄は僕を見てなにも言わなかった。
「…ま、そんなわけでよろしくな」
そこから兄が変わっていくのは、また別の話。
改めて、僕は野崎要。猫又の怪異で人間で一匹の生き物で、大切な人がいる、そんな少年。
【野崎要-過去編-END】
野崎要…生徒会本部!に登場する少年。
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