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第78話 〚知らないままの笑顔〛(澪視点)
夏休みの空気は、少し甘い。
蝉の声。
じりじりとした日差し。
冷たい麦茶。
澪は、リビングの机で課題をしていた。
(……なんか、最近)
ペンを止めて、窓の外を見る。
心が、静かだった。
以前は、
いつ妄想(予知)が来るか、
誰かの視線があるんじゃないか、
ずっと構えていたのに。
今は違う。
えま、しおり、みさと。
玲央。
そして、海翔。
思い浮かべるだけで、胸が少し温かくなる。
「……大丈夫、だよね」
誰に言うでもなく、そう呟いた。
その瞬間、
胸の奥が、ほんの少しだけざわつく。
でも――
頭は痛くならない。
妄想(予知)も、来ない。
澪はその違和感に、気づかないふりをした。
知らないままでいられる時間が、
今は、何より大切だったから。