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はぁっはぁっはぁああああぁっ!!!!!!! オーマイガーオーマイガーオーマイガー!!!! oh!!!スーパー最高いぇああああああああああ!!! こういうなんて言うんけ?雰囲気?もぉ好きすぎんねんけど!!! まじで天才やわありがとうございます!!、!!!!!!
⚠︎本番描写ありませんが雰囲気センシティブなので未成年の方は遠慮ください⚠︎
ご本人様のライバーとしての活動は題材にしないつもりだったのですが、昨日の衝撃が強すぎて勢いで書いてしまいました。しばらくしたら消すかもしれません。
誘い受け🤝の供給が公式から与えられるとは思わないじゃないですか??
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肺を煙でいっぱいに満たしながら見上げた空は、いっそ清々しいくらいの曇天だった。すごいや、夜中の1時だってのに星のひとつも見えやしない。こんな時間にようやく任務から帰ってきた僕にあんまりな仕打ちじゃないか。
「──さっきまであんなゼェゼェ言ってたのに煙草は吸えるんだな?」
後ろから意地悪そうな声が降ってきて、振り返るとニヤついた顔のリトくんが立っていた。風呂上がりの彼はタオルを首にかけており、セットされていない前髪からは雫が滴っている。
僕がこうして気を使って部屋の中に煙が入らないよう窓を閉めていたって、結局きみは降りて来ちゃうんだもんな。
「まぁ、これ自体が呼吸みたいなもんだしね」
「ヤニカス極まりすぎだろ。……あとお前も、いくら疲れたっつったってシャワーくらい浴びて来いよ」
「うん、ありがとう……これ吸ったら借りさせてもらおうかな」
また一口毒の煙を吸い込んでは、トン、と指でつついて灰を落とす。「そうしとけ」とどこか素っ気ない態度のリトくんの方に煙が流れないよう細心の注意を払いながら。
今日は帰宅できたのが予定より遥かに遅くなってしまったせいで終電を逃してしまい、急遽リトくんの家に泊めてもらうことになったのだった。ここに泊まるのは初めてじゃないけど、恋人の家というのはいつまで経っても慣れないものだ。
前述の理由により僕も彼も疲労困憊。特にずっと前線を張っていたリトくんは先程の態度からも察せられるように大変お疲れな様子だ。
──だから、僕なりの方法で彼を癒やして差し上げようと思う。
これが最善かどうかは分からないけど、僕も結構疲れてしまっていてもうあんまり頭が働いていないんだ。
「……ねぇリトくん。ちょっとそっち向いてさ、息止めててくんない?」
「え何急に? 何すんの……?」
「いや、そんな怖いこととかしないからさ。大丈夫大丈夫」
僕のあまりにも唐突で怪しい指示を訝しがりつつも、リトくんはベランダの柵の向こう側を向いて目と口を閉じてくれる。……別に目は閉じろって言ってないんだけどな。
まぁ今からすることを考えればそうしてくれた方が良かったかもしれない。リトくんが息を止めるため肺に新鮮な空気を取り込むのと同時に、僕も煙草を咥え直してできるだけ多くの煙を吸い込む。
そして──、
「……ふー……」
「……ッうぉっ!? は、え何!? ゲッホすげえ煙たい!!」
「あっちょっと、吸っちゃ駄目じゃん」
直で当たらないようわざわざ耳元に吹きかけてあげたのに。何の身構えもしないままに煙を吸ってしまったリトくんは哀れなほどに咽せながら怖い顔で僕を睨んでいる。いや、言いつけを破ったのはきみの方じゃない? 突拍子もないことをした自覚はあるので言葉にはしないけど。
「よっぽど理由か何かあるんだろうなあテツ……? つかそうじゃないと許さねえ」
「んはは、ごめんごめん。……リトくんはこれの意味、知らない?」
「……? 意味って──……あ、」
思い当たったらしく、リトくんの顔がみるみる赤くなっていく。多分僕も負けないくらい赤くなっているんだろうけど。
さて。最後のひと吸いも終わったことだし、と煙草の火を消して、ちょっと前から勝手に置かせてもらっている灰皿にねじ込んだ。
煙草の煙を吹きかける、という行為──多くの場合はただの嫌がらせなんだろうけど、特に映画などにおける創作の世界ではもっと別のロマンチックな意味を持つらしい。
それはつまり、『夜のお誘い』というもので。
知識として知ってはいたけど、もちろん人に向かって実践するのは初めてだ。色々な緊張でドクドク早くなる鼓動が聞こえてしまわぬよう言葉を続ける。
「……きみがこんな誘いにも乗れないくらい疲れてるって言うんなら、もちろん断ってくれても良いけど?」
「は、……んなわけねえだろ」
煙草を咥えようとしていた口元──というか顎をまるごと片手で掴まれて、顔の向きを変えさせられてしまった。至近距離で見上げることになったリトくんの顔は何ともまぁド雄って感じの色気がだだ漏れで、皺の寄った眉間とその下から覗く視線はいっそ凶暴だとさえ思えた。
フー……と吐かれた息はもはや獣のそれで、気を落ち着かせようとしているんだか本能を呼び醒まそうとしているんだか分からない。
「……お前こそ、分かってんだろうな。今の俺にこんなことして、どんな目に遭うか」
「あは……当たり前だろ。僕は最初っから、『そのつもり』で着いてきたんだから……」
わざと甘ったるく掠れた猫撫で声で囁いて、うなじからまだ水気の残る生え際に指を這わせる。そのじっとりとした熱さと湿度は夜風に晒された身体を火照らせるには十分だった。どちらからともなく唇を合わせ、吐息を噛み殺し合う。
──僕が知らないとでも思った?
溢れそうになった唾液を飲み込みながら、僕は内心ほくそ笑む。
戦闘が長引きすぎた時のリトくんはたまにスイッチの切り方を忘れてしまうことがある。要は戦闘によって過度な緊張状態になった神経が、昂ったまま治まらなくなってしまうのだ。元を正せば敵を総滅するための本能であるそれは彼の──嗜虐性が抑えられなくなる、ということを指していて。そんなものを受け入れればどんな目に遭うかなんて想像に難くない。
だからこそ、どうしても見てみたい。
きみの剥き出しの本能を。
「ぁっ……ン、んふ……、ッぅ゛!?♡」
「──フ、ッ……ん゛、ン……」
せっかちな熱い舌が歯列を割り入って来るのを快く迎え入れ、代わりにこちらの舌を差し出した。すると、無防備になった柔らかい舌の裏側にガリっと犬歯を突き立てられてしまい、反射的に身体が強張る。そんな素振りを見せたところで逃がしてもらえるはずもなくむしろより一層強く頭を固定されてしまった。揉みくちゃになった口内にじわっと生ぬるい鉄の味が広がって、いつもと全然違う猟奇的なキスにゾクゾクする。
ああ、やばいな──僕、今日こそ本当に食べられちゃうかも。
早くも砕けそうになった腰を強い力で抱き寄せられて、その手の大きさにキュンとする前に、お腹に押し当てられた固いものに意識がいってしまう。……これを今から僕がシャワー浴びてくるまで待ってなきゃいけないとなると、ちょっと可哀想だなと思わなくもないけど。
「ッは──、あ゛ー……クソ、ヤる時だけは絶対に優しくするつもりだったのに……」
「、っ……ははっ、僕相手に年上ムーブしようなんざ100年早いね。大人しくご褒美にありつけるのを待っときなよ」
「〜〜〜おっまえなぁ……!!」
ぐわっ、と威嚇してかかるリトくんだったが、ふと冷静を取り戻したようにいきなり真顔になって僕の目をじっと覗き込む。そうして何を思ったか顎を掴んだままだった手をぱっと離すと、腰を抱いていた手も外してしまった。
意図が読めず困惑する僕に、リトくんはとても冷静とは呼べない顔で囁きかける。
「……なあ。ほんとに、逃げんなら今のうちだけど」
「本気で言ってる? 敵を前にして逃亡なんてヒーローのすることじゃないだろ」
「そうだけど…………本当に、手加減できるか分かんないから」
消え入りような声でそう言いつつ手すりにかけていた僕の手首をするりと掴み上げると、グっと力を入れられた。それだけで貧弱な僕の骨はミシミシ悲鳴を上げているが、無論これが脅しだなんて重々承知だ。
きみな、こうやって怖がらせて距離を取ろうとするの本当に悪い癖だぞ。大柄な体格にあまりに見合わない臆病な恋人に呆れの感情が無くもないが、そこはまぁ惚れた弱味というやつで、そんなところも愛おしく思えてしまうのだから重症だ。
「──望むところだよ。恋人の欲求も発散させられないなんて、それこそ男が廃るってもんだろ? ……今日くらいぶちまけちゃえよ、ダーリン」
弱々しい視線を真っ直ぐに見つめ返して、手首を握る手にキスをしてやる。こういうクサい台詞を言う時はもじもじしてる方が恥ずかしいからね、思いっきり演技ぶった調子で言ってやるんだ。
リトくんは一瞬込み上げたらしい何かをどうにか飲み下して、深いため息を吐きながら片手で顔を覆った。
「お前、マジでほんと……最高の彼氏だよ。……ありがとうな」
「ははは、惚れてくれてもいいよ」
「もう惚れてんだよなあ」
「…………そう言われると照れるんだけど」
「なんでそこで照れるんだよ……」とむず痒そうな顔をするリトくんに、僕は返す言葉が見つからなかった。だって仕方ないじゃないか、僕はきみからそういうダイレクトな好意ってやつを向けられるのに、本当に弱いんだから。
ちょっと危険でアダルティな空気になったって、結局僕とリトくんではセクシーを目指すのは難しいらしい。でもそれが僕らの良いところでもあるよなぁなんて1人納得しつつ、シャワーを浴びるため、もとい色々と『準備』をするため部屋に戻ろうとすると、リトくんが「あ、あと──」と呼び止めてきた。
「報告書は俺がどうにかするから、お前も本部からの連絡とかあったら早めに返しとけよ」
「へ? なんで──」
「……多分、朝まで離してやれねえから」
たっぷりと笑みを含んだひっくい声をわざわざ僕の耳元に吹きかけ、一瞬だけとんでもなく色っぽい流し目を寄越してくる。急激に心拍数が上昇して動けなくなる僕を他所に、リトくんは曇天を眺め出してしまった。おい、こっち向けよ。いややっぱり向かなくていい。今ちょっと人に見せられない顔してるから。
全身の細胞が沸き立つような錯覚さえ感じる胸の高鳴りを抱えながら、僕は後悔と期待が入り混じった感情に苛まれることになった。
前言撤回だ、きみはちょっとセクシーが過ぎる。絶対に僕の前以外でそんな姿見せるなよ。
──なんて、それを言葉にする勇気すらない僕はよろけながらバスルームに向かうことしかできないんだけど。