テラーノベル
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8時25分、出社
「おはようございます。」
迷惑をかけないよう、できる限り真面目な素振りと接しやすい空気感を意識。
微笑みを崩さず、素を晒さぬように。
その挨拶に気づいた同僚も
「おはようございます、暗橋さん。 」
と返してくれた。
上司とは大違い。
「先輩もおはようございます。」
上司には特に態度に気遣ってる。
「あ?あぁ、いたの?」
「はい、さっき出社したところです。」
「じゃあ黙って早く今日やる仕事確認してこいよ、めんどくせぇなお前。かまってちゃんかよ。」
「挨拶は必要かなと思いまして。」
「それに感心する俺じゃねぇっての。当たり前だろそんなん。」
「申し訳御座いません。」
「チッ…無能が」
は?
少し偉いからって挨拶もなしかよ。天狗になりやがってあの野郎。
挨拶した時点でもう黙ってないのに関わらず挨拶は当たり前だぁ?黙って業務確認っつったくせに。
この理不尽矛盾製造機が。
と、内心愚痴を吐きながらも表には一切出すことはない。
出したところで怒られるだけ。
この世の頭はおかしい。
俺は普通だ。
アイツらのネジが緩んでいるだけだ
そうに違いない。
「暗橋せんぱーい!!!」
高くて大きい声がオフィスに響く
「茂木うるっせぇ!」
上司がキレた。そりゃそうだ。
「あ、すみませーん」
「それでそれで!暗橋せんぱいっ!」
少しは気にしろよ。
「茂木くん、どうかした?」
茂木は俺の後輩だ、明るいが時に空気が読めない。無自覚だから怒りにくくて少し苦手だ。
「今日帰り暇っすか?」
「いや、ちょっと…」
俺の唯一の休み時間を奪うつもりかこの子は…?
やめてくれ…ただでさえ休み無いのに…
「えー?なんすか?つれないっすねっ!」
唇を尖らせるな。一応成人済みでしょ君。
小学三年生が怒られて拗ねてる図にしか見えないんだが?
「先輩ノリ悪〜」
あぁ出たよ、陽キャ特有のノリを強要してくるやつ。反応に困るから嫌いなんだよなこれ。
「ははは…、ちょっと年取ったかな」
まだ24歳だわ。
「え、先輩いくつっすか?俺22っす!」
「24だよ。」
「ははっ!言うて変わんないっしょ!」
「僕の気にしすぎかな?」
「そっすよ、先輩冴えない顔してるけど老けてるわけでもブスって訳でも無いっすから大丈夫っしょ!年齢の割にただ流行りに疎いだけだと思いますー!」
褒めてるの?貶してるの?フォローってこんな雑だっけ?絶対褒めてないか。満面の笑みで言わないで欲しい、素でそう思ってんだろうなと思うと尚更傷つく。
「あはは…そうだね。」
動画サイトも何も見てないんだから無理もない。
「いつまでぺちゃくちゃしてんだ!!早く仕事しろ!」
上司の怒鳴り声が痛い。なんて耳に悪い声だ。
「すんません!!」
謝るのはいっちょ前だ。顔が笑ってるの、バレてるぞ。
「…っ申し訳御座いません!」
もう無理、子供に戻りたい。赤ちゃん返りしたい。駄々こねて許されたい。でも金は欲しい。
もう戻れない。
コメント
1件
うわー、めちゃくちゃリアルなブラック企業の空気感…。主人公の「表は仏、裏は悪魔」なモノローグが最高に生々しい。上司の矛盾だらけの態度と、陽キャ後輩の無自覚グイグイ攻撃に、こっちまで胃が痛くなった。でもこういう「普通でいたいのに世界が歪んでる」感、すごく共感できる。この先、彼がどうやってこの理不尽に立ち向かうのか、それとも飲み込まれていくのか、すごく気になる展開だ。次の話も楽しみにしてます!