テラーノベル
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「ほれほれシン〜、お前の番だぞ〜?」
「わーってるって!急かすなよっ!!」
「あの、シンくん…そこはやめた方がいいと思うよ」
「あー!坂本くん僕のポッキー食べたでしょー!!」
「お前の名前はどこにも書かれてなかった…だからお前のポッキーじゃ無いだろ?」
「屁理屈〜っ!!」
JCCの学校の屋上
ここは立入禁止区域だが、ここには5人の人物がいた。
持ち込んだ古いソファーと陽を遮るためのボロボロのパラソル、日に焼けたローテーブルの上には、誰が持ち込んだのかジェンガが積み上げられており
何巡したのか、下の部分はずいぶん細くなり上の方が重くなっているせいかグラグラと揺れている
ジェンガをしているのは赤尾リオンと朝倉シン、シンを補佐するように有月憬が隣に控えており、緊張感のある勝負をしている
その少し離れた所には、ポッキーを食べた!食べていない。と南雲と坂本がバタバタとナイフで応戦していた。
──この五人は、JCC暗殺科の生徒であり同級生である
しかも暗殺科の上位成績者達でもあるため、よく五人でつるんでは、こうして屋上に上がり授業をサボっている
その中でも赤尾リオンと坂本太郎と南雲は【三悪衆】と呼ばれ、たびたび学園内で問題を起こし、射撃場で誰が一番スコアを出せるかと争っていた時刻に別棟目撃情報があったり、イタズラのしすぎで佐藤田に説教されていたり…
とにかく毎日何かしらの悪事は、この三人が絡んでいるとされている
暗殺科のトップ3に加え、一緒にいるのが有月憬と朝倉シンである
この二人も成績上位者である…なぜ三悪衆と絡む様になったかと言えば「三悪衆が居ないと指名されて面倒臭いんだ」と「授業がつまんねぇんだもん」と言う理由である
それでもこの五人が仲良くできているのは、同じ暗殺科で優秀であることと……赤尾、坂本、南雲、有月がエスパー能力を保持していると言う朝倉を【可愛がっている】からだろう
最初にシンに絡みに行ったのは赤尾だった。
読心術の持ち主だと知った日から学校に住み着いた野良猫を面倒見るか如く構い倒し、講師から巻き上げた金で買った菓子で餌付けをし続け
毎日声を掛けては、言葉と思考であべこべなことを考えていると「お前何なの!?いきなり菓子投げよこすわ、言ってることと考えてることあべこべで頭痛くなる!!」と怒り、三悪衆と絡む様になり
その後、暗殺の実習でいい奴そうだから!と、シンが有月を連れてきた。
「シンくんが面白いところに連れて行ってやる!って言ったから来たけど」
「あれ、有月じゃん!菓子食う?」
「有月?そんな奴いた?シンくん元の場所に戻してきてよ」
「気配消すのうまい奴だった気がする…シンが誰か連れてくるとは思わなかった」
「だってコイツ、ずっとつまらなそうだったんだもん!」
──こうして集まった五人だ
ジェンガの板を選んだシンが引き抜こうとしたした瞬間
「わぁ!」と南雲の声が聞こえ、赤尾・シン・有月の三人がそちらに視線を移すと…南雲がこちらに向かって飛んできていた。
「おっと!」
「おわっ!?」
「危ない!」
赤尾は一人がけの椅子から身体を反転させて避け、シンは有月に肩を掴まれソファーの後ろに転がる
―ガシャーン!―と音を立てて南雲がローテーブルの上に転がり、その向こうでは坂本が南雲を投げ飛ばしたままの体勢を取っていた。
「いったぁーい!!」
「いったぁーい!じゃねぇよバカ南雲!ジェンが崩れちゃったじゃねぇか!!」
「んじゃ、罰ゲームはシンな〜♪」
「シンくん、どんまい」
「うそだ!ノーカン!!こんなの勝負じゃねぇ!有月ももっと俺の味方しろよぉ!!」
「誰も当たってないか、良かった」
「よくないっ!!コイツ投げるならなんか言ってから投げろよ!坂本!!」
金色の髪をブンブンと横に振りながら駄々をこねるように言うシンは、赤尾に再戦を申し込むが「や〜だよ〜w」と舌を出して拒否され
シンは泣く泣く罰ゲームをすることとなった。
坂本と南雲はポッキーの言い争いをしていたので、ジェンガの罰ゲームの内容は知らないのだが
突然有月が高性能デジタルカメラを取り出したので、何事かと首を傾げる
「何してんの〜?」と南雲が問うと「シンの写真を撮る…こんな機会中々ないから」とややテンション高めに答えた。
それを聞いた赤尾も「違いねぇwアイツ変装下手だし自習もいつも逃げるもんな!」と手を叩いて爆笑している
そんなこんなで、数分後
屋上に積み上げられた廃材の影から、おずおずとこちらを伺うシンを見て赤尾は、シンの元へ向かう
「だっははははは!!やべぇ!アンタこれマジで似合ってるじゃんwww」と腹を抱えて笑い
「お前、サイズ…初めから俺にコレ着せるつもりだっただろっ!!」と吠えるシンの声が聞こえた。
「負ける気なかったしね〜、ほら!シン!!耳と尻尾も忘れてるぞ?」
「は?そんなもんどこにも…」
「はい」
「隠し持ってやがったな…!?」
そんな楽しげな声がやんやと聞こえてくる廃材の向こう、一体どんな状況なのか坂本と南雲は顔を見合わせ、有月はすでにカメラをスタン張っている
「ほれほれ〜」と赤尾に手を引かれてやってきたのは……フリルとリボンがふんだんにあしらわれたメイド服に身を包んだシンだった。
いわゆるアキバ系メイド服のため、スカートの丈も短く…何故そこにリボンが必要なんだ?その布の用途は?と問いたくなるようなデザインだが
可愛さを最大限求めた服だから!の一言で片付きそうな格好だ
シンが坂本と南雲と有月の前に現れ、スカートを抑えながら「んだよコレ、短過ぎんだよ…」と頬を染めている
屋上では、赤尾の笑い声と─カシャ!カシャ!─と先ほどからシャッターが切られているデジタルカメラの音しかしておらず
坂本と南雲があまりに静かだったのでシンは、皆の反応を探った。
赤尾は言わずもがな(やばっ!コレはいい掘り出しもんだわwww)と、まるで着せ替え人形とでも思っているのか次も何か別の服を着させようと画策している
有月は(…いい、コレクションが増えた。メモリーカード足りるかな)と静かだが何やらシンの写真を集めているようだ
南雲は(は?何コレ…シンくん可愛すぎるでしょ、僕だけにご奉仕してほしい)とガン見している
坂本は(あぁ、赤尾がこの間ニヤニヤしながら注文してたのはコレか…ネコ、可愛い)と少々達観しながら見ていた。
三者三様…いや、四者四様の反応を見たシンは、このメイド服を早く脱ぎたい!と赤尾に訴えかける様に見るが
当の赤尾はニマ〜…と顔を綻ばせてシンを見つめ返した。
そう、今回の罰ゲームはメイド服を着るだけではない…一応、とある作戦がある
「なぁ!コレ以外にやりようあったんじゃねぇの!?」
「じゃあ、坂本と南雲と有月とのキス写真?」
「嫌だっ!!!」
「嫌か…」
「そんなに全力拒否しなくってもいいじゃん!」
「そうか、ダメかぁ」
「俺とキスだぞ!?嫌だろ!!俺は嫌だっ!!!」
(((シン/シンくんとだったらできるんだけどな)))
赤尾に腕を掴まれ、ズルズルと屋上から出ていくシン
「ゴリラ女!!」と赤尾に向かって吠えた瞬間、ゲンコツが落ち「ぎゃんっ!」と鳴くと涙目になって頭を抑え項垂れる
そんな騒がしさに教員が気付かないはずもなく、注意をすべく5人に近付いた。
『こら〜、またお前らか三悪衆…有月まで…で?そのメイド服は誰だ?ん?顔見せろ』
本気で怒る気はあるのかわからない男性教員は、出席簿で肩を叩きながら声を掛ける
【三悪衆】で一括りにされた赤尾と坂本と南雲、そして、そんなのに絡んでいる有月を残念そうな顔で呼び…最後に顔を伏せているシンに声を掛ける
この三人によく絡んでいるのは有月とシンだと分かっている教員でさえ、シンがこんな格好をするはずがないと思い…顔を上げさせた。
「せ、せんせぇ…」
『はぅ…っ!?』
顔を上げたのは、涙目になりながら羞恥で顔を赤くさせたシン…背徳感を誘う様な色気のある上目遣いの表情と猫耳メイド服という事もあり
教員の下半身に衝撃が走った。
『お、おまっ…朝倉か!?』
「せんせー、赤尾に言ってやってよぉ!俺にこんなの似合わねぇってっ!!」
『あ、ぁ…いや…その、先生は──』
「せんせぇ…」
いつもの勝気な雰囲気から一変して、弱々しく庇護欲をそそるシンに流石の教員もタジタジになる
更に助けを求める様に擦り付いてくるのだ……教員の思考はもはや萌え萌えキュン♡していた。
三悪衆は、女である赤尾も含め背が高い…有月も平均以上の身長があるため、悲しいことに平均身長であるはずのシンが一番小さく見られる
周りはシンをパシリか何かと思っているかもしれないが…コレでもシンは暗殺科の上位に属しているのだ、弄られてはいるが、ただパシリというわけでは無い
しかし、今はある意味本当に『ペット』の様な扱いを受けているのだ、着せ替え人形の様に可愛らしいメイド服を着せられ泣いている
元々実年齢よりは若めな見た目をしているシンによく似合っている…その事で教員の欲に火が着いた。
『けしからんっ!お前たちけしからんぞ、朝倉をペットにするなど!!』と声を上げ、シンを抱き締めた教員の眉間にナイフの底面が─ゴッツ!─と当たったのは直ぐだった。
赤尾が投げたナイフは一発で脳震盪を起こし、後方へ倒れる教員
教員に擦り付いていたシンの手元には、教員の財布と校内の施錠用の鍵が握られていた。
抱きしめられた時にスったらしく、財布から金を抜き鍵を赤尾に投げ渡した。
「よくやったシン!」
「今回っきりだからな!次は赤尾がやれよ!?」
「私がやるよりアンタがやった方が確実だって、私らもうマークされてるし」
そんな話を得意顔でしている赤尾とシンの背後で、ロープとナイフと劇薬を構えた三人が教員に近付いている
「見たか?」
「うん、バッチリ見えてた〜」
「コイツ、どさくさに紛れて…」
(((シン/シンくんの尻を撫でてた)))
有月が劇薬で昏睡状態にさせ、南雲が見せしめにナイフで教員の頭髪を全て剃り、坂本がロープで吊し上げた。
すると、どこからか─カシャ─シャッター音が聞こえ、人垣から『やばっ』と声が上がると坂本、南雲、有月は音がした方へと走り
撮ったと思われる生徒が悲鳴を上げながら逃亡のために走り出した。
「やってる事エグ…」と引き気味のシンと、それを再び指差して爆笑する赤尾
それを傍目から見ていた他の生徒たちは、三人の悪魔に金色の悪魔と白い悪魔が加わったことに戦慄していた。
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