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ユイの代わりに軍の指揮を執っていたサルビは、すでに己の死を覚悟していた。
各部隊を任せていた武将たちは、すでに半数以上が戦死。
一般兵士も六割近くが斃れ、無残な亡骸となって戦場のそこかしこに転がっている。
(ロクシャ……
剣の技はどれも粗削り……
ただ剣を振り上げ、突進してくるのみ……
だが――あの巨体……)
戦続きで疲労困憊の我らに、
もはや勝利は望めぬのか――。
前方から、ひときわ巨大な男が、馬を駆って迫ってくる。
サルビは、静かに天を仰いだ。
(殿……
どうか……残されたユイ様が、これからの人生を、少しでも健やかに歩めますように……
そして……殿……
我らも、今からそちらへ参ります)
「ロクシャの巨人よ――!」
サルビは剣を掲げ、叫んだ。
「剣技を磨き続けてきた俺にかかってこい!
体の大きさだけが武器の野蛮なる者どもめ――!!」
死を覚悟し、馬腹を蹴ろうとした、その瞬間――
後方から、激しい馬蹄の音が響いた。
サルビをはじめ、なお生き残っていたユイ軍の者たちが、一斉に振り返る。
――凛々しく、勇ましく。
その姿だけで、失われかけた士気が一気に燃え上がる。
「……殿……?」
「セ……セイカ様……?」
誰もが、信じられぬ光景を前に息を呑んだ。
死に際に見る幻か。
それとも、本当に――。
数騎で駆けてきた先頭の男は、
セイカの鎧と兜を身にまとい、
セイカの剣を高く、高く掲げていた。
「貴様ら――!」
その声が、戦場を裂く。
「なにをしておる!!
偉大なる大将軍セイカの名のもとに、敵を――皆殺しだ!!」
(あ……)
(あれは――)
「ユイ様だ!!」
叫びとともに、残存していた武将も兵士も、狂気じみた雄叫びを上げた。
「おおおお――!!」
ユイが戦場に姿を現してからは、すべてがあまりにも早かった。
「ユイ様――!!」
「殿――!!」
絶対に敗北すると信じ切っていた戦。
その勝利を前に、生き残った者たちは、倒れながらも、這いながらでも、必死にユイのもとへ向かった。
サルビも、堪えきれず涙を流す。
「ユイ様……
よくぞ……よくぞ助けに来てくださいました……
我らの、我らの主よ……!」
ユイが、ゆっくりと振り返る。
全身に返り血を浴び、剣を握ったまま、ただ立ち尽くしていた。
その姿に、サルビも、兵士たちも、言葉を失った。
――心が、凍りつく。
ユイの姿は――
もはや人ではなかった。
戦場に降り立った、
鬼そのものだった――。