TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

ひとしずく

一覧ページ

「ひとしずく」のメインビジュアル

ひとしずく

26 - 第26話 細胞までが綺麗に

2025年06月25日

シェアするシェアする
報告する




「ミハル…?ほら、そろそろ起きて」


心地よい眠りから、意識を戻される。


「あ、寝ちゃってた…」


「先にシャワー浴びたら?そろそろ時間でしょ?」


「うん…」


時計を見る、3時半になろうとしていた。

ユニットバスのゴミ箱に丸められたティッシュとコンドームの袋があった。遊んでいるだけに用心もしているんだと思う。そこには安心した。


___ピルを飲んでるからいいんだけど


それを言ってしまうと、それが目的な女だと思われそうで言わなかった。生理痛がひどいので婦人科の先生の勧めで飲んでるんだけど。


簡単にシャワーを浴びて、翔馬と入れ替わる。持ってきたメイク道具でメイクを直していく。


「やっぱりさ、女ってそういう準備はしっかりしてるよね?」


「あ、そんなつもりじゃないんだけど、メイクって何もしなくても崩れてしまうから、だから、持ち歩いてて」


「いいよ、そんなこと。お陰でどんなに乱れても普通の顔に戻れるんだもんね」


「あ、うん」


___乱れても…か、乱れたよね、すごく


口紅を塗っていたら、ぎゅっと抱きしめられた。


「綺麗だったよ、ミハル。あんなミハルは他の男に見せちゃダメだ、俺だけのものにしたいよ」


「あ、そんな…」


後ろから耳たぶを甘噛みされた。おさまっていたカラダの熱が、またもわっと蘇り思わず身震いをしてしまう。


「感じたの?まだ、足りなかった?」


「ち、ちがう!」


改めて言われると、恥ずかしくてたまらない。


「恥ずかしがらないで。また、してあげるから。あんなミハルをまた見たいからね」


抱きしめられた腕を私も抱きしめ返し、振り返って口づけた。


「ミハル?」


「はい」


「俺のこと、好きになって」


「好き、好きです」


「愛して」


「あ…愛してます」


「いい子だね、ミハル。うれしいよ」


「…はい」


子供を誉めるように頭を撫でてくれた。


4時になった。

もっとこうしていたいと思いながら、急いで家に帰らないといけないと思う私がいる。

駅まで送ってもらった。


「ミハル、あとで鏡に映してよく自分を見て。とても綺麗になったよ。じゃ、またね」


「はい、また…」


“また”会いたいと強く思った。


電車に乗って、窓ガラスに映る自分の姿を見た。さっきまで、あの場所であんなことやこんなことをしていた女だと思うと、胸の辺りがざわざわする。してしまったという後悔はなかった。ただなんとなく、今朝までの自分とは違うと感じた。


家に帰り、朝のうちに下ごしらえをしていた晩ご飯を用意する。洗濯物を取り込み、掃除機をかけて家族の帰りを待つ。


「ただいま!お母さん、お土産は?」


「あ、美味しいケーキ屋さんが近くになかったからコンビニスイーツで許して!」


「ま、いいけど」


「ただいま、晩飯何?」


伊織も帰ってきた。


ぴこん🎶


『残業で遅くなる。晩ご飯は食べて帰るからいらない』


夫からのLINEにも、気が滅入ることもない。


お風呂に入って裸の自分の姿を見た。


___うん、綺麗になった気がする


翔馬が言ったのは、まんざらでもない気がした。細胞のひとつひとつまでがイキイキとしてるように見える。


___満たされるってこういうことかもしれないな


数時間前まで翔馬と繋がっていたソコを、そっと自分で触れた。










この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚