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あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!ってことで、今年一発目は寧々ちゃんの独占欲をテーマに書いた小説です!!(3日ぐらいかけた!)

最後まで読んでくれるとありがたいです!

では行ってらっしゃい!!


放課後の旧校舎。窓から差し込む夕日は、血のような赤色で床を染めている。


女子トイレの鏡の前、八尋寧々は自分の指先を見つめていた。そこにはもう、人間の皮膚よりも硬く冷たい、青い鱗がびっしりと浮き出ている。

「……ねぇ、花子くん。またあの子の願い、叶えてあげたんだね」

少し寂しそうな寧々の声が、静かなトイレに響く。

背後でふわりと浮かんでいた花子は、いつもと違う彼女の様子に、少しだけ眉を下げて困ったように笑った。

「あぁ、あの子? 忘れ物探し。あんなの、怪異の俺にかかれば朝飯前だよ。八尋、そんなに怖い顔しないで。俺はほら、七不思議だからさ。頼まれたら、誰の願いだって聞いてあげなきゃいけないだろ?」

花子は寧々の肩にそっと手を置こうとした。その手はいつも通り、どこまでも優しく、壊れ物を扱うような手つきだった。

けれど、寧々はその手を、鱗に覆われた冷たい指先で強く掴み取った。

「……誰の願いでも、聞いちゃうんだ。私以外の、知らない女の子の願いも」

「八尋……?」

「嫌だよ。……花子くんが、私の知らないところで誰かのために笑うなんて、耐えられない」

寧々の指が花子の手首に食い込む。その瞬間、床から溢れ出した水が、意志を持つ鎖のように花子の足首を絡めとった。それは寧々の心に巣食った「人魚の呪い」が、彼女の激しい独占欲と混じり合い、制御不能な力となって溢れ出したものだった。

「……っ、八尋!? 落ち着いて。腕、鱗が……。そんなに強く握ったら、八尋の体が持たなくなっちゃうよ」

花子は自分の身を案じるどころか、どこまでも寧々の体だけを心配して、優しく声をかける。その「誰にでも向けられるはずの優しさ」が、今の寧々には耐えがたい猛毒だった。

「いいの。人間じゃなくなってもいい。……ねぇ、花子くん。人魚はね、一度心を決めたら、その愛は海よりも深くなるんだって。……深海まで、一緒に連れて行ってあげる」

寧々の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちる。それは水面に落ちた真珠のように輝き、床の水をさらに深く、暗く染め上げていく。

「やめろ、八尋! そんなことしたら、八尋はもう二度と……!」

「いいよ。……私、もう決めたの。花子くんを、この世界の誰にも渡さない。誰にも呼ばせない。花子くんの隣にいていいのは、私だけ。あなたの時間を、あなたの優しさを、全部私が独り占めするの」

寧々が花子の首に腕を回し、その冷たい胸に顔を埋める。

花子の体は幽霊特有の冷たさを持っているはずなのに、寧々を抱き返そうとする腕だけは、震えるほど熱を帯びているように感じられた。

「……八尋……。あはは、困ったな。俺を、こんな風に閉じ込めるつもり?」

花子は抗うのをやめ、諦めたように、そして慈しむように寧々の頭を撫でた。彼の声はどこまでも穏やかで、まるで読み聞かせをするような優しさに満ちている。

「でも、いいよ。八尋がどうしてもって言うなら。……俺はどこにも行かない。八尋が俺を必要としてくれるなら、この暗い水の底だって、俺にとっては最高の居場所だよ」

花子のその優しさが、寧々の罪悪感をチクリと刺す。けれど、それを上回る執着が、彼女を後戻りさせない。

トイレの壁が、天井が、現実の境界線と共に溶け出していく。

日常の風景は消え去り、そこには果てしなく続く、静かで美しい「青の世界」が広がった。

「見て、花子くん。綺麗でしょ? ここなら、誰も来ない。源先輩も、光くんも、知らない女の子も……。誰も、あなたを奪いに来ない」

寧々は歪んだ微笑みを浮かべ、花子の唇に指を当てた。

二人の体は、光の届かない海の底へと、ゆっくりと沈んでいく。

「……ずっと、一緒だよ。花子くん。……大好き」

少女の囁きは、泡となって闇に消えた。

地上の女子トイレからは、「トイレの花子さん」という噂も、それに関わった少女の記憶も、すべてが泡のように消えなくなった。

ただ、深く、暗い「箱庭の海」の中で、一人の少女と一人の怪異が、永遠に終わらない放課後を過ごし続けている。

寧々だけが幸せそうに目を閉じ、冷たくなった彼を、二度と離さないと言わんばかりに抱きしめ続けていた。





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