テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ここ
224
#ご本人様とは一切関係ありません
🎼🍵大好き※1ヶ月猫化中
164
#ご本人様とは一切関係ありません
ぬま子
6,856
塩﨑が体温計を寝室から取ってこようと立ち上がると吉田が曽野と手を繋いでいる反対の手を塩﨑に伸ばす。
「だいちっ、どこいくの…。やだ、行かないで」
「っ、!大丈夫、体温計取ってくるだけやで、ほんまにすぐ戻ってくるから。」
「………。」
不安そうに揺れる瞳が塩﨑を見つめる。頭を優しく撫でても不安がるその目は相変わらず涙でうるうると揺れていた。
名残惜しいが、手をゆっくり吉田の頭から離れさせると吉田は止めることはなく、じっと塩﨑を見つめるだけだった。
はやくもどってきてね。
そう言っているようだった。
言った通り、塩﨑は体温計をもってすぐに戻ってきた。その間吉田は今そばにいる曽野がどこかに行かないように手を両方繋いでぎゅっと強く握っていた。
「さ、じんちゃん体温測るからおてて離そーな?」
「………。嫌。」
「片っぽでええから、な?」
「…ん、、。」
「ふふ、ありがとじんちゃん。」
「はーいじゃあ測るで〜。」
しぶしぶ吉田が手を離すと、塩﨑が素早く吉田の脇に体温計を滑り込ませる。測定が終わるまで、部屋には吉田の荒い呼吸音だけが響いていた。
沈黙を切り裂くようにピピピピッと軽快な音が響くと塩﨑はゆっくり体温計を引き抜き液晶を確認する。
表示された数字は39.1℃。一度良くなったはずなのにまたぶり返してしまったらしい。
「けほっ、けほ」と乾いた咳を繰り返す吉田。
曽野が優しく頭を撫でてやると目をつぶり、小さい声で「…もっと」と手を動かし続けるように促す。言われた通りしばらく撫でていると静かな寝息が聞こえ始めた。
そっと手を離すと目をパチっと開け、曽野を無言で見つめる。
「……なんでやめるの」
「え、あ、いや、じんちゃん寝たから起こしちゃうかなと思って」
「いいから、続けて…」
吉田は、曽野がまたゆっくりと手を近付けるとすりっと頭を曽野の手に擦り付ける。
「ひょわっ。ヤッバイわこれ、だいちゃんどうしよ、心臓やばい」
「舜太ずる。……あ、俺熱さまシート持ってくる。」
「あ、おっけー、ありがとう。」
「しゅんた、手、動かして…?」
「あ、はーい。任せてじんちゃん。」
語尾をドロドロに甘くしながら曽野は手を動かし始める。ゆっくりゆっくりと手を動かすと触り心地の良い丁寧にケアされた髪の毛が指の間をするりと通る。
塩﨑が冷蔵庫から冷やされた熱さまシートをもってきた。透明なフィルムを剥がし、吉田の顔を覗き込む。
「じんとー?熱さまシート貼るから前髪あげるで?」
「…ん、お願い。」
塩﨑はおでこに手を滑らせると、いつもよりもだいぶ熱い体温に胸が痛くなる。前髪を優しくあげ、シートを貼ってやると冷たさに驚いた吉田は目をぎゅっとつぶって体を縮こませた。
「冷たいやんな、ごめんな仁人。」
「…ん、大丈夫、冷たくて気持ちいいから…。」
塩﨑は眉をひそめ、吉田を見つめる。吉田は虚ろな目をしながら見つめ返し、塩﨑に手を伸ばす。塩﨑は黙って手を差し出すとその手をきゅっと握ってそのまま離さなかった。
両手を曽野と塩﨑と繋げた吉田は満足気に少しふわっと顔の力を抜いたようにみえた。
2人の存在を確かめるように吉田はしばらくぎゅっぎゅっと何回か手に力を入れた。すると塩﨑が言う。
「仁人、ソファじゃ体痛くなるからベッド行こか。」
「…。歩けない…。」
「わかってるで、俺が運ぶから大丈夫!」
塩﨑はゆっくりと吉田の下に手を入れるとひょいっと軽々姫抱きにして持ち上げた。いつの間にこんなに力をつけたのか、と驚いてる吉田にニコっと笑顔を向けるとゆっくりと慎重に、なるべく揺らさないように歩き出す。
「だいちゃんイケメンすぎ!俺もいつかじんちゃん抱っこできるように筋トレする!」
「ははっ!舜太にはまだまだ早いで!」
ゆっくり歩いていると玄関の開く音が聞こえた。「ただいまー」と2人分の声が聞こえる。同時に家に到着したらしい佐野と山中が前から歩いてきた。
「あれ?じんちゃんどうしたの?」
「起きたら誰もおらんくて、寂しくてリビングまで来たんやけど熱高すぎて動けへんから今ベッドに運んでるとこ!」
「あぁ、寂しかったか、ごめんな仁人。」
佐野は外から帰ってきたばかりで少し冷えた手で塩﨑に姫抱きされている吉田を撫でた。
冷たさが心地よくて目を閉じる。4人の声が耳に優しく届く。それも心地いい。
「じゃ、俺ら寝室行ってるで、準備終わったら来てや。」
「おっけ〜。じんちゃんまた後で行くね。」
「…ん、待ってる。」
寝室に着き、曽野が電気をつける。ベッドに優しく下ろし、布団をかけてやるとまた吉田は2人に手を伸ばす。
吉田は甘えることにもう抵抗はなくなったのか素直だ。
熱のせい、体調が悪いから、しんどいから、色々な理由をつけて今だけは。
4人に目いっぱい甘やかして貰いたかった。
コメント
5件

続き出してくれるのが早くてほんとに嬉しいです
のりもちさん、第20話読みました。高熱でしんどい仁人が、4人に甘えるのを許した瞬間の描写が本当に優しくて、胸がじんわりしました。特に「甘えることにもう抵抗はなくなった」という一文に、これまでの仁人の変化がぎゅっと詰まっている感じがして好きです。曽野の「心臓やばい」って動揺するところも、人間味があって可愛いなと。温かい空気が画面越しに伝わってくる、素敵なエピソードでした。