テラーノベル
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こんばんは。
連休最終日が差し迫り、再開する仕事の日々に怯えている自堕落社会人、琥珀です。
次に投稿するリクエスト作品が思ったより時間かかりそうなので、お茶濁しにネップリの再録をいたします。
フォロワー600人達成記念に7月頃公開したネップリですね。
最近私のことを知ってくださった方や、ネップリができなかったという方は、この機にご覧いただけますと幸いです。頑張って書いたので。
ついでに、ネップリにする予定だった超短編集も載せております。こちらはX(Twitter)でのみ投稿したものですね。
こちらも良ければ読んでいただけると嬉しいです。
カプ表記をよく確認して、地雷を避けながら読んでください。
では、どうぞ。
ネップリ再録
【そのキスが意味するもの】
『友情』(オランダ×日本)
二人きりで交わす他愛もない会話。
隣で響く軽い笑い声。
何がそんなに面白いのかは分からないが、楽しそうならいいか、なんて思う。
くしゃりと緩む表情。細くなる目。
そういう顔をするのは、大抵気が緩んでいる時だ。
他が来られない場所で、俺だけがここにいた。
だから、分かってる。
誰にでもそんな顔を向けることも、
踏み込みすぎれば、簡単に閉ざされることも。
“友情”
この距離が、一番都合がいい。
触れても拒まない、逃げていかない。
………これでいい。
そうしておけば、失わずに済むから。
少し屈んで、その小さな額に触れる。
待つのは慣れてる。
その先で、最後に残るのが俺なら、それでいい。
『親愛』(イタリア×日本)
出会い頭にハグをして、頬にキス。
至っていつも通りのゼロ距離。
君も、照れながらも抱き返してくれるよね。
“これ”は挨拶みたいなものだって、君は思ってるんでしょ?
───それでいい。
周りはあんな顔して見てるくせに、何もできない。
可哀想に。
でも、仕方ないよ。これは“ただの挨拶”なんだから。
……やっぱり、いいや。
君の視界は僕だけがいい。
もぞりと動いた腕の中には、不思議そうに見上げる、夜空の瞳。
こてんと首を傾げる仕草が無性に愛おしくて──
僅かに赤い頬に手を添えて、親指で唇をなぞった。
今は親愛でもいい。
でも、誰にも奪われないでね。
あと数センチの桜色に触れるまで。
『敬愛』(イギリス×日本)
私と貴方と、談笑の絶えない和やかな茶会。
湯気の向こう側で、音もなく置かれたティーカップ。
無駄が無く、丁寧で、乱れもない。
そして、それが当然というように微笑む。
……幾度となく見てきたが、ここまでのものは珍しい。
私への気配りも至って自然。
──そういうところだ。
片付けまで付き合い、茶会の礼を述べる彼。
立ち上がり、手袋を外しつつ、その目の前へ歩を進める。
私を見上げる黒曜石の瞳は眩しいほどに輝かしく、恐ろしい程に純潔。
素手で掬い上げる純白の手は、シルクのように滑らかで、レースのように繊細。
その手の甲に一瞬、唇を触れさせた。
女王に捧げるような、敬愛のキス。
別れの礼としては相応しいだろう。
敬い愛する。
それに間違いはない。
ただ、愛の種類が貴方の想像と違うだけだ。
『確認』(カナダ×日本)
夜、地平線にうっすら見える明けの予兆。
僕はこの時間が苦手だ。
来ないで欲しいとも思う。
目線を下ろせば、空の東端を宿した彼が僕に包まれるよう眠っている。
夢を見ているのか、にへらと笑う寝顔を見て、腕に無意識に力がこもった。
今はこんなにも近くにいるのに、夜が明ければ君の背は小さく遠い。
交わしあった熱は、何も繋ぎ止めてはくれない。
──まるで最初から、何もなかったみたいに。
痕一つない肌が、心を掻き回す。
けれど、欲で絡めとればきっと、君は二度とここへ戻ってこない。
だから……せめて。
君がここにいたって、僕が覚えていられるように。
薄れたらまた、戻ってきてくれるように。
その真白の背に、そっと唇を落とした。
『欲望』(フランス×日本)
二つのマグカップが並ぶ給湯室。
湯が沸くまでの少しの時間。
手持ち無沙汰で、机に手をつく彼の白い指に触れる。
暇だしいいだろう?
なんて、今思えば適当な言い訳だ。
指を撫でるよう軽く絡めると、くすぐったそうに笑う。
嫌がる様子はない。
……なら、もう少し。
恋人のよう深く指を絡めたまま、くるりと反転させた手。
目の前には、テンポの早い脈が触れる手首。
磁石のように惹かれ合う顔と手は自然と距離を縮め──
一瞬、唇を落とした。
ふっと顔を上げて、パチリと合った目。
潤み揺れる黒の瞳には、あからさまな自身の熱視線。
意識させるようゆっくりと指を解いて、口付けた手首を撫でる。
……ここまでやれば理解ってくれるよね。
あのキスがどういう意味を持つのか。
気づいた時どんな顔をするのか──楽しみだ。
『所有』(ロシア×日本)
熱の残る静かな部屋。
薄ら目を開けば、腕に身を寄せ眠る幸せそうな寝顔。
起こさぬようそっと這わせた手で、滑らかな背を撫でてやった。
欠けを満たす、俺の唯一。
胸にすっぽり収まる心地良さはまるで、元々一つの生命体だったかのようだ。
──いや、そうだったのかもしれない。
俺にとってこの関係は、必然で、当然であるべきなのだから。
背から山を越え、辿り着く薄い胸。
ゆったりで穏やかな鼓動の真上。
小さな体に宿る強かさを肌で感じながら、静かに口付けた。
雪原のような白い左胸に咲く、小さな赤。
ここに俺がいるのだと、示す証。
花が雪に埋もれようと、深く張った根は残り続ける。
逃げの無いこの地で、共に生きよう。
いつか、心の臓に巻き付く楔が朽ち果てる時まで。
僕らの距離(ロシア×日本)
『43km』
まばらに席が空く会議場の円卓。
開始時刻を待っていると、大きな影がすっぽりと僕を覆う。
「ここ、いいか」
首が痛くなるほど見上げると、無表情のロシアさんと目が合った。
「あ…はい」
ガタリ、と重い音を立てて隣に彼が座ると、周囲の空気が一段低く沈み込む。
それから、会話は全くない。
大きな体を少し丸め淡々と資料に目を落とす彼。
真横にある圧倒的な存在感に緊張しながら、僕はバレないようにチラリと、綺麗な横顔を盗み見る。
僕から踏み込むなんて、きっと迷惑だよな……
日本から最も近い国。
水平線の先に見える距離。
だけど、その距離をやけに遠く感じていた。
『110cm』
お昼時、次々と昼休憩に繰り出して行く各国たち。
ざわめきが遠ざかる中で一人、自分のデスクに座ったままのロシアさん。
今が、最大のチャンスだ。
勇気をだして彼の元へと向かう。
「ろ、ロシアさん!」
予想外の大声に、彼は驚く風もなく、ただ淡々と、僕をじっと見つめる。
「そ、その…昼ごはん、ご一緒してもいいですか?」
…急に誘うなんて、気持ち悪かっただろうか。
冷静になって不安に襲われていると、ガタッと立ち上がる音が聞こえる。
「…いいぞ。なら、空いてる会議室でも行くか」
予想外の反応にポカンとする僕の袖を引っ張り、廊下に繰り出す彼。
空き部屋で広げたお弁当。
言葉数は少なく、交わすのは他愛もない話ばかり。
けれど…彼は終始無表情だったが、言葉は意外と柔らかい。
一歩前のめりな110cm。
彼という人間の温もりを少し知れた気がした。
『60→30cm』
あの日をきっかけに、僕たちは少しずつ親交を深めていった。
廊下ですれ違えば挨拶を交わし、休憩時間には自然と隣に並ぶ。
時が経ち、育まれた関係とともに近づいていく二人分の距離、60cm。
快適なパーソナルスペース。
今までは、それで十分満足していたはずだった。
なのに───
いつからだろう。
その距離が、やけに遠く、もどかしく感じられるようになったのは。
勇気を出してもう一歩、足を踏み出してみる。
衣類が擦れ、彼の体温と微かな冬の匂いがダイレクトに伝わってくる、距離30cm。
「どうした、日本」
「あ……いえ、何でもありません」
近づけたはずなのに、どうしてこんなに胸が痛いのだろう。
届きそうな近さにいるのに、まだ足りないと思ってしまうのは何故なのだろう。
『50cm』
モヤモヤとした気持ちを抱えながら、今日も一緒に昼ご飯を食べる。
隣の彼は早くも食べ終わり、僕を見つめていた。
その愛おしむような視線と重なった瞬間、ドクンと大きく跳ねた心臓。
――僕は、気づいてしまった。
ずっと胸の奥を揺らしていた、モヤの正体。
導き出された答えは……恋。
自覚した途端、体中の血が沸騰したように熱くなる。
恥ずかしさとパニックで破裂しそうになり、気持ちを整理したくて立ち上がった。
彼から離れようと、一歩踏み出した距離、50cm。
「どこ行くんだ」
でも、彼の長い腕がそれを許さなかった。
『25→3cm』
手首を強く引かれ、捕らわれて、腕の中。
僕の真上25cm、唇がニヤリと弧を描く。
降りてくる頭はすぐ目の前で止まった。
あとわずか3cm、踏み出せば触れれる距離。
緩く細まる紫の瞳の奥が、爛々と輝いている。
試されている、のかもしれない。
整った顔が目の前に迫る圧迫感と、唇から漏れる吐息。
恥ずかしさに顔が弾けそうなのに、目は離せない。
胸の鼓動は激しく鳴り響き、思考は白く染まっていく。
後戻りなんて、もうできない。
僕は意を決して、そっと目を閉じた。
『0→-10cm』
少しだけ背伸びして、触れた唇。
ゼロ距離の触れ合いの最中、雪国らしくない熱い体温が、するりと隙間をぬけて侵入してくる。
唇から口内へ、深々と踏み込まれたマイナス10cm。
戸惑う僕の舌に少し絡んで、サッと引いていく彼の大きな舌。
顔の距離が離されると、ロシアさんはもう一度、僕を強く抱きしめた。
「俺も愛してる、日本。もう離さない」
温かな冬の香りに包まれて、自然と抱き返す腕。
とっくに唇は離れたのに、温もりが引かない。
体の髄まで、彼に染められているようだった。
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鬼灯 哀雷⚔️🥀
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コメント
3件
読めてよかったです😭😭 カナ日とロシ日が沼すぎてやばい🫶🥺 てか距離縮まっていったりたまに戻っちゃったりする露と日がかわいすぎるw カナ日でしかも1番好きなメンヘラカナダだったので神でした❣️💕
琥珀さん、こんばんは〜。第37話、拝読しました。 まず「そのキスが意味するもの」、6種の愛情の形が一粒一粒宝石みたいで美しかったです。特に好きなのは「確認」のカナダ×日本。夜明けとともに遠くなる存在を背中に刻もうとする切なさ、心に残りました。 そして「僕らの距離」。数値で示される距離感が縮まるたびに胸が高鳴りました。ラストの0→-10cm、雪国の匂いと熱い体温、もう離さないという台詞まで、完璧な詩のようでした。 短編集でもしっかり世界観を作り込めるのは、琥珀さんの確かな筆力だなあと感じ入りました。連載の合間のひと休みに、こんな素敵なプレゼントをもらった気分です。ありがとうございました!